=表層深層= 働き方改革法案 対立必至 予断許さず 非正規待遇改善期待も 

2017.09.11

=表層深層= 働き方改革法案 対立必至 予断許さず 非正規待遇改善期待も 
2017.09.09 佐賀新聞 


 政府の働き方改革関連法案の要綱が8日明らかになった。長時間労働を強いられている人や非正規労働者からの期待が集まるが、医師らを残業規制の適用猶予とすることや、一部専門職を労働時間規制から除外する「高度プロフェッショナル制度」には野党や労働組合が反発している。秋の臨時国会の「最重要法案」となり、与野党の対立は必至。成立に持ち込めるか予断を許さない。1面参照

 あるガソリンスタンドで10年近くパートとして働く年配の女性は、職場経験が長く、新たに配属された若手社員に仕事を教えることもある。それでも女性の時給は千円に満たず、仕事を教えた正社員との給与格差は2~3倍-。

〈 ■格 差〉

 組合員に非正規労働者が多い労組「派遣ユニオン」(東京)に寄せられた相談の一例だ。賃金や福利厚生などの待遇で正社員と差がつけられている非正規は多く、法案は不合理な格差が生まれないよう、仕事が同じ内容の場合に均等待遇の確保を義務付ける。

 ユニオンの関根秀一郎書記長は、法案が格差是正を目指していることを歓迎。一方で「正社員と仕事上の責任の重さが違うなどとして是正に応じない会社は多い」と指摘、「同一労働同一賃金」の実現は容易ではないとの見方を示した。

 安倍晋三首相が「歴史的な大改革」と強調する残業時間の上限規制は、連合も導入に熱心だ。ただ、医師と建設業、運送業などの自動車運転従事者は労働基準法が改正された後、5年間は適用猶予となる。いずれも過労死が相次ぐ職種だけに反発する声が根強い。

〈 ■崩 壊〉

 医師については、厚生労働省が残業規制のあり方を議論するため検討会を設置した。だが、8月に開かれた会合ではメンバーの医療関係者から「地域医療の崩壊につながる」「医師の仕事には自己研さんの側面もあり制限されることに不満な人もいる」と規制導入に反対する声が上がった。

 1999年に小児科医の夫を過労自殺で亡くした「東京過労死を考える家族の会」の中原のり子代表は「命と健康を守る医師が、仲間の死を無視して医療の向上にだけ目を向けるのはおかしい」と強調。規制を早く適用するよう求めた。

 要綱が提示された8日の労働政策審議会分科会では、労働側委員を務める連合傘下の産業別労組、情報労連の柴田謙司書記長が「労働時間が増える可能性がある。働き方改革の本旨に逆行する」と批判。連合は高プロと裁量制拡大に反対を貫く構えだ。

〈 ■長期化〉

 民進党の山井和則国対委員長代行は「無理やり法案を一緒にするなんてことは絶対に許されない」と連合と歩調を合わせ、同党の別の国会議員は「10月の衆院3補選の争点になる」と“予告”した。野党側は本会議や委員会の審議で安倍晋三首相の出席を求める考え。追及を続ける加計学園問題なども絡め、与野党の駆け引きが予想される。

 政府は9月下旬召集見通しの臨時国会に合わせて法案を閣議決定する方向だが、高プロなどを巡る対立に加えて内容が多岐にわたるため、審議の長期化は避けられない。厚労省幹部は「今国会の目玉だから、審議には衆参それぞれで少なくとも数十時間はかかるだろう」と話した。



=ズーム= 働き方改革


 働き方改革 安倍晋三首相が「最大のチャレンジ」と掲げた雇用・労働政策の見直しの総称。政府が3月にまとめた実行計画では、残業時間の上限規制や同一労働同一賃金の導入のほか、パワハラ対策や女性活躍の推進、病気の治療と仕事の両立、高齢者の就業促進など幅広い施策が並んだ。政府は改革の方針をまとめた理念法として「労働施策総合推進法」を制定するほか、労働基準法や労働安全衛生法などの関連法を改正し、計画の具体化を進める。