産科医自殺 労災と認定*東京の総合病院*残業月200時間超

2017.08.14

産科医自殺 労災と認定*東京の総合病院*残業月200時間超
2017.08.10 北海道新聞 


 東京都内の総合病院に勤めていた30代半ばだった産婦人科医の男性が自殺したのは、長時間労働で精神疾患を発症したのが原因として、品川労働基準監督署(東京)が労災認定していたことが9日、分かった。遺族代理人の川人博弁護士が記者会見して明らかにした。時間外労働は最長で月約208時間に上っていた。認定は7月31日付。

 川人弁護士によると、男性は2010年に医師免許を取得。13年4月から総合病院で研修医として勤務し、15年7月12日に都内で自殺した。

 遺族側が、総合病院の電子カルテへのアクセス記録などを基に勤務実態を調べたところ、自殺する前の半年間の時間外労働は月143~208時間で、直前1カ月は約173時間だった。

 残業代は一部しか支払われておらず、休日も半年間で5日間のみ。当直勤務は月に4回程度で、当直明けの日が日勤だった場合は、拘束時間が30時間を超えることもあったとしている。

 男性の両親は昨年5月に労災を申請。9日に会見した川人弁護士を通じ「息子は研修医として激務に向かい、責任を果たそうとして破綻をきたした。労働環境が整備されなければこのような不幸が繰り返される」とのコメントを出した。病院は取材に「現時点では答えられない」とした。

 医師の過労自殺を巡っては、16年1月に亡くなった新潟市民病院(新潟市)の女性研修医に対し、労基署が今年5月、長時間労働が原因として労災認定している。

*医師の働き方改革難航

 長時間労働が問題となっている医師の働き方改革を巡っては、厚生労働省が今月、医療関係者や法律の専門家らを交えた検討会を発足させ、議論を本格化させた。しかし、医師の少ない地域では診療に影響が出る恐れがあるとして、勤務制限に慎重な意見もあり、改革の道のりは遠そうだ。

 厚労省によると、1週間の労働時間が60時間を超える勤務医の割合は2012年時点で41・8%。職種別で最も高い。16年度には過労死や過労自殺(未遂含む)で4人が労災認定された。

 今回、労災認定が明らかになった男性は産婦人科の研修医。出産時の対応や当直勤務などで特に負荷が高いとされ、日本産婦人科医会の16年の調査によると、1カ月の当直回数は他の診療科より多い平均5・7回で、1カ月の病院滞在時間は推定約300時間に上った。

 日本医療労働組合連合会の担当者は「勤務が不規則な上、出産への期待から、何かあった場合には訴訟となるリスクも大きく、産婦人科医になることが敬遠される傾向にある」と指摘する。

 今月2日の検討会初会合では、病院経営者の一人が「制限されることに不満を持つ医師もいる。極端な制限は地域医療を崩壊させる」と主張し、早くも労働組合側と対立する場面があった。検討会は19年春をめどに報告をまとめる予定で、実効性のある勤務制限の在り方が示せるか問われている。