[解説スペシャル]専門医 質向上へ統一基準 研修・認定に第三者機関の目

2017.07.26

[解説スペシャル]専門医 質向上へ統一基準 研修・認定に第三者機関の目
2017.07.25 読売新聞



 ◇編集委員 田村良彦

 学会が独自に行ってきた専門医の認定を一元化する「新専門医制度」について、医師会や病院団体、学会などで作る日本専門医機構は7月中にも各学会による研修プログラムの取りまとめを終え、2018年度からの導入を目指したい考えだ。基準がまちまちで分かりにくいとされてきた専門医制度は、どう変わるのだろうか。

 ■機構の承認必要

 欧米の専門医は国や第三者機関が主体となって認定している。これに対し、日本の専門医は、内科や外科などの学会が独自に制度を作り、認定を行っている。このため基準が不統一で、質にもバラツキがあるとの問題点が指摘されてきた。

 新専門医制度では、領域ごとの研修基準を担当学会が策定し、質の担保ができているかなどを機構が審査、承認する。各研修病院が行うプログラムはこの基準に合致していることが必要で、これらも機構の承認を受けなければならない。

 専門医試験の合格判定も、1次審査は学会が、2次審査を機構が行い、最終的に認定する。これによって従来の「学会認定の専門医」ではなく、「第三者機関である機構認定の専門医」とみなす仕組みだ。

 ■2階建て方式

 新専門医制度は、基本的な診療領域を1階部分とし、より専門的な領域(サブスペシャルティー領域)が上にのる2階建てとした。サブスペシャルティーの専門医の資格を取るには、基本領域の専門医の資格をまず取得することが前提となる。

 基本領域は、内科や外科、小児科、産婦人科など19種類。新しい分野である「総合診療」は、機構が基準の策定にあたった。

 サブスペシャルティー領域はこれまでに、消化器、循環器など内科系13種類と外科系6種類のプログラムが認定された。今後、様々な診療科や病気の専門医が追加認定されていくとみられる。

 ■地域医療巡り延期

 新専門医制度は、当初17年度からのスタートを予定していた。だが、大学病院中心の研修システムによって、市中の中小病院から大学病院に医師が集中し、地域の医師不足を助長するのではないかとの懸念の声が高まり、土壇場になって延期された。

 機構は約1年をかけ、地域医療への懸念を払拭(ふっしょく)しようと見直しを進めてきた。大学病院以外の中核病院も研修の中心とすることや、地域の調整の場となる都道府県協議会の役割を明確にしたことなどだ。

 機構の理事でもある辺見公雄・全国自治体病院協議会会長は、「地方の懸念は強く、見直しには本来2、3年必要だと思う。ただ、日本の専門医が世界標準になるための改革も進めなければならず、始めながら修正を重ねていくしかないのではないか」と話す。

 ■10月にも募集開始

 機構によると、7月中には各学会による研修プログラムの1次審査を終え、研修病院の所在地の各都道府県協議会での審議を経て、研修プログラムの確定へと進みたい考えだ。18年度導入に向けて、10月には専門医取得を目指す医師の募集を開始したいとしている。

 一方、新専門医制度の導入には反対する声も依然根強い。21日に厚生労働省で記者会見した有志の医師の会の代表は、「新制度で質は担保されない」などとして、反対の意思を表明した。患者にとって真に役立つ専門医の育成が実現できるのか、機構は自らを厳しく検証し続ける必要がある。

 ◆専攻3~5年で受験可能

 国家試験に合格した新人医師は原則、法律で2年間の初期臨床研修が義務づけられている。内科や外科、救急などを数か月単位で回り、幅広く患者を診る力を身に付けるのが目的だ。

 初期研修を終えると、自らが専門に選んだ診療科へと進むのが一般的だ。専門医の取得は義務ではないが、3年から5年程度かけて診療経験を積むことで、受験資格を得るという流れだ。

 この期間の医師は、「後期研修医」と呼ばれることもある。新制度では「専攻医」と名付けられた。

 専門医取得後も、数年ごとに更新試験を受ける。ちなみに、専門医を持っていても、保険診療で診察料が高くなるなどの金銭面でのメリットはない。

 ◆学会が資格 50年で100種超 規制緩和で掲示OKに

 日本の専門医は、1962年に日本麻酔科学会が「指導医」の資格を設けたのが始まりとされる。様々な学会による専門医が生まれ、機構が把握するだけでも100種類を超える。

 基準の統一を求める動きは早くからあったが、専門医認定は学会にとって会員拡大の手段や貴重な収入源の側面もあり、容易には進まなかった。

 専門医が「公的な」存在へ変わるきっかけとなったのは、02年の規制緩和だ。法人化などの外形的な基準を満たせば、医師が取得している専門医を医療機関のホームページなどに掲示できるようになった。

 情報公開が進むにつれ、質の担保を求める声も高まった。厚生労働省の有識者検討会は13年、第三者機関による認定の統一化を求める報告書を発表。14年、現在の機構設立へと至った。



 図=新専門医制度の仕組み
◇専門医制度をめぐる主な経緯
1962
年 日本麻酔科学会の指導医制度が発足
81 主要学会による学会認定医制協議会が第1回総会
86 協議会と日本医師会、日本医学会による第1回三者懇談会
2002 法人化などの条件を満たした専門医の掲示が可能に
04 医師免許取得後の2年間の初期臨床研修が法律で義務化
13 厚生労働省「専門医の在り方に関する検討会」が報告書
14 現在の一般社団法人日本専門医機構が設立される
16 新専門医制度の17年度開始の延期が決まる
(日本専門医機構の資料などを基に作成)
読売新聞社