介護・地域医療 組織超え連携 合同で研修 人事交流も視野

2017.07.12

介護・地域医療 組織超え連携 合同で研修 人事交流も視野
2017.07.09 読売新聞



 ◇安心の設計

 ■新たに法人設立

 介護や地域医療の現場で、複数の事業者が組織の枠を超えて連携する動きが広がっている。異なる社会福祉法人の職員を集めた統一研修や、地域の事業者同士によるチームケアに役立てるための計画表づくりなどが進められている。(中村剛)

 京都市中心部の研修施設に5月31日、同市や京都府京丹後市、滋賀県東近江市にある社会福祉法人の職員20人以上が集まった。京都市の社会福祉法人「リガーレ暮らしの架け橋」が開く「統一研修」の受講者たちだ。

 この日の研修は数人のスタッフを束ねる現場リーダーが対象。チームケアのあるべき姿やリーダーとして求められる行動などの講話に耳を傾けたり、受講者同士で議論をしたりしていた。

 リガーレは、特別養護老人ホームなどを運営する中小規模の社会福祉法人同士が連携して介護事業を進めるために設立された。規模が小さいと人材確保や育成の負担が重く、施設が少ないとポストも限られ、職員を経験や能力に応じた職位に就けるのも難しい。

 複数の社会福祉法人の本部機能を担うリガーレでは、特養施設長の経験があるベテラン介護福祉士ら2人が指導役「スーパーバイザー(SV)」となって教育を担当。会員法人の職員を集めた統一研修を実施するなど人材育成を担う仕組みだ。費用は、各会員法人が負担する委託費で賄っている。

 SVの村田麻起子さんは「自分の力で問題を解決できる人材を育てることなどが研修の目的だ。違う法人の職員が定期的に集まって、将来の人事交流の基礎にする狙いもある」と説明した。

 ■地域も幅広く参加

 中核会員は京都、滋賀、青森3府県の7法人。研修は新卒や採用2年目、役職者向けなど、勤続年数や職位ごとに設定され、介護福祉士資格の取得に向けた研修もある。会員法人の六心会(滋賀県東近江市)の辻薫部長は「独自にここまでの内容の研修を作り上げるのは難しい。参加する職員は、悩みながら自分なりに目標とする職業像を作ってほしい」と期待する。

 研修に参加した平野七恵さん(26)は「他の施設の人と話すことで気付かなかった視点に立てた。同じ立場の人に相談できる横のつながりは大事」と話していた。

 リガーレの山田尋志理事長は「介護の質を高めて地域への貢献を進めるためには人材育成が不可欠だ。将来的にはグループ一括の職員採用や、法人の枠を超えた人事交流を実現させたい」と語った。

 ◆在宅ケアは全体像見やすく 計画表で互いに進行把握

 在宅ケアでは、様々な事業者がかかわるため全体像が見えづらく、事業者間の連携が課題だ。そこで、他の事業者との効率的な連携などを目指して工夫するグループも出ている。

 東京都世田谷区の「三軒茶屋リハビリテーションクリニック」の長谷川幹院長らが2015年から取り組むのは、大腿骨頸部(だいたいこつけいぶ)骨折を経験した高齢者を対象にした在宅ケア版の「クリニカルパス」(診療計画表)の作成と利用だ。

 診療計画表は利用者のリハビリや生活能力の回復に向けた工程表兼チェックシートのこと。目標達成のための標準的なプロセスをわかりやすく示し、利用者や家族が安心感を持てるようにするほか、ケアに関わる人同士が互いに他の人の取り組みを把握するなど、相互理解を進める工夫という。

 計画表は、医師やケアマネジャー、ヘルパー、理学療法士ら各職種ごとのシートに分かれる。それぞれ「退院前」「初回訪問」「訪問開始から3~4週目」「6~8週目」「8~12週目」と時期ごとに、「自主トレーニングの重要性を説明」「住宅改修を具体化」など、やるべき説明や準備などが列記される。利用者や家族向けのシートもある。

 参加機関は世田谷区内の15事業者に増えた。また、脳卒中の患者用のものを作成中で、パーキンソン病など別の病気の患者用も手がける考えという。長谷川院長は「一緒に作ったパスを使うことで、ケアに関するお互いの理解度が格段に上がった」と話している。