出産受け入れ再開 3年半ぶり、赤ちゃん誕生 院内に活気、さらに数人が予定 /和歌山

2017.06.09




出産受け入れ再開 3年半ぶり、赤ちゃん誕生 院内に活気、さらに数人が予定 /和歌山

2017年5月28日
 医師不足で出産受け入れを停止していた有田市立病院(同市宮崎町)が、今月から受け入れを再開し、3年半ぶりに赤ちゃんが誕生した。24日に無事退院した。久々の吉報に医師らは「病院全体が明るく活気を取り戻した」と喜んでいる。

 同市山地の会社員、中本祥吾さん(29)と妻さやかさん(31)の長女アリスちゃん。今月19日、予定日より約3週間早く体重2842グラムで生まれた。

 市内唯一の出産可能な病院として年間約150件を担ってきたが、退職や異動で常勤の産婦人科医が不在となり、2013年10月から出産の受け入れを停止。有田地方で出産ができる産科は、有田川町の医療機関1軒だけとなっていた。

 さやかさんは車で約1時間かけて和歌山市内の医療機関に通い、妊婦検診を受けてきた。「急な陣痛に間に合うか心配だった」と振り返る。

 市は再開を望む住民の声を受け、全国の自治体病院が加盟する「全国自治体病院協議会」(東京)に働きかけるなどし、今年4月から滋賀県高島市の市民病院から黒瀬高明医師(64)が「地元の熱意に応えたい」と赴任した。さやかさんは「自宅から近いので負担も少ない。再開はありがたかった」と話す。

 赤ちゃん誕生はリハビリ中の患者が新生児室に何度も顔を見せるなど院内の明るい話題となり、さらに数人が出産を控えている。市立病院はより安全な体制を整えるため、公募などで複数医師の確保を目指す。黒瀬医師は「地元の病院で産みたいという希望をかなえたい」と話している。

医師不足、対応待ったなし 10万人当たりの産婦人科医、平均7.6人 県は6.9人

 地方は産婦人科医の慢性的な不足に悩んでいる。日本産科婦人科学会などの調査(14年3月)によると、人口10万人当たりの産婦人科医師数(全国平均7・6人)は東京などが10人を超える一方、茨城4・8人▽広島6・2人▽和歌山6・9人--など27道県で平均を下回る。若手医師の少なさなども踏まえ、同学会は和歌山や広島、香川など9県は「早急な対策が必要」と指摘した。

 また、医師らでつくる日本産婦人科医会の調査(16年1月)でも出産施設で働く産婦人科医数が7年ぶりに前年を下回ったことが判明。和歌山や愛媛など15県で新規就業よりも退職の数が上回った。

 04年度導入の研修制度で新人医師が研修先を自由に選べるようになり、地方の敬遠に拍車が掛かっているとみられる。調査に携わった中井章人・日本医科大教授は「このままでは地域から出産施設がなくなる恐れがある」と産婦人科医の増員を訴えている。