トップに直撃 紛糾した新専門医制度の行方 日本専門医機構 

2017.06.07


【第1特集 医者&医学部 バブル人気の実情】--Part2 医者の仕事のリアル--INTERVIEW トップに直撃 紛糾した新専門医制度の行方 日本専門医機構 理事長 吉村博邦
2017.06.10 週刊東洋経済

【第1特集 医者&医学部 バブル人気の実情】

Part2 医者の仕事のリアル

INTERVIEW トップに直撃 紛糾した新専門医制度の行方 日本専門医機構 理事長 吉村博邦

新たな専門医資格の認定制度をめぐっては、医師の地域偏在を招くとの反発が生じた。

 地域医療に悪影響を与える──。地方の中小病院や自治体などの反発で、今春の導入予定が1年後ろ倒しとなったのが、初期研修後に取得する専門医資格の新制度だ。この「新専門医制度」は制度設計を見直し、2018年春に導入される予定。あらためてなぜ新制度が必要か。何がどう見直されたのか。同制度を担う日本専門医機構(以下、機構)のトップに聞いた。

──あらためて新専門医制度はなぜ必要なのか。

 今の医師養成課程では初期研修は義務づけられている一方、その後の専門研修(後期研修)は各診療科などの学会が任意で設け、専門医資格を与えている。

 その結果、多様な専門医資格ができ、国民や患者から見てわかりにくくなっている。また資格の質にバラツキも生じている。海外には専門医の統一基準があり、日本でも若手医師を統一基準の研修で育てたいというのが基本だ。

 新制度の特徴の一つは「研修プログラム制」。これは各学会が導入している、資格取得に何年かけてもいい「カリキュラム制」研修とは異なり、年次ごとに定められたプログラムに沿って行う。内科、外科といった診療科に総合診療領域を加えた基本領域の専門医資格をそこで取ってもらう。

 また「研修施設群」をつくることも特徴だ。従来の後期研修のように一つの病院だけで行うのではなく、地域の大学や基幹病院、市中病院が連携して、研修医をローテーションさせる仕組みだ。

──批判が集まり、導入が1年延期となった。

 第3者機関ということで、各学会から独立した組織になろうとしたことで、学会から不信感を抱かれたことが一因に挙げられる。

 来年度施行の新制度では、まず機構と学会の役割を見直した。1年前は機構がすべての認定を担おうとしたが、そうではなく、認定までの1次審査は機構の基準に沿って学会が行い、2次審査は機構が担う。そもそも機構がすべての審査をすることは、金銭面も含めて負担が大きすぎる。学会と連携して行うのが本来の姿だ。

 研修施設には大学病院など、都市部の大きな施設しか要件を満たせず、地方の中小病院から若手医師が離れるとの反発もあった。そのため、できるだけ大学以外の研修施設も認定することにしている。各都道府県協議会と事前に話し合う機会を設けるなど、地域偏在に配慮した制度にしている。

──とはいえ新制度は大学病院が研修施設の中心となる。昨今若手医師が離れ、弱体化が進む大学医局の復権が目的との声もある。

 確かに新制度導入で、大学病院に一時的に研修医が集まるかもしれない。しかし研修を終えれば、再び市中病院に出ればよい。短期的な偏在でなく、長い目で優秀な医師を育てる視点が重要だ。

 新制度は、育児中の女性医師や地域医療に資することが明らかな医師などプログラム制に参加しにくい医師に、例外でカリキュラム制を認めるなど柔軟に設計した。

 今後、最終的な「整備指針」が了承されれば、9月までに具体的な新専門医の研修プログラムを定め、来年4月には施行する予定。必ず医師育成に役立つはずだ。

(聞き手・本誌:許斐健太)

日本専門医機構 理事長 吉村博邦

よしむら・ひろくに●1961年、東大医学部卒。呼吸器外科が専門。北里大医学部長、同大名誉教授などを経て現職。