論説/地域医療構想/実情見据え体制づくりを

2017.05.16

論説/地域医療構想/実情見据え体制づくりを
2017.05.13 長崎新聞



 超高齢社会の日本で「あるべき医療提供体制」とは、どのようなものなのか。

 政府は、団塊の世代が全て75歳以上となる2025年に医療需要のピークを迎えるとして、地域の医療体制を見直すよう都道府県に要請している。手術や救急など高度医療に偏った入院治療(病床)の機能を再編するとともに、慢性疾患を抱える高齢患者は自宅や施設で療養する方が望ましいとして在宅医療を推進するというのが基本方針だ。

 これを受けて県がまとめた「県地域医療構想」によると、25年の県内全体の医療需要(1日当たりの患者数)は3万5902人と、13年に比べ15%近く増えると推計。在宅医療の需要が33%増えるとして、必要な病床数は15年度に比べ21%少ない1万6849床になるという。

 ただ、この病床数は、医療の利用度が低い入院患者を在宅医療に振り向けるなどして導き出しており、患者側のニーズと合致しているとは限らない。医療需要も本県では35年がピークとなる見込みで、より長期的な視点に立った対応が必要だ。県は地域の実情をしっかり見据えた上で、医療機関などと丁寧に合意形成を図りながら具体的な体制づくりを進めてほしい。

 県の地域医療構想は医療法に基づき昨年11月に策定。病床機能を▽救急救命や集中治療に対応する「高度急性期」▽次いで緊急性の高い「急性期」▽リハビリや在宅復帰に向けた「回復期」▽長期療養向けの「慢性期」-の四つに分類。県内を8区域に分け、25年に必要となる病床数などを算定した。

 その結果、15年度に比べ急性期の病床数は県全体で半減、回復期は倍増させる必要があるという。慢性期も3割以上減らし、在宅医療への移行が求められるとしている。

 病床数が過剰な場合、必要のない入院や治療が増えて医療費が膨らみやすくなるといわれる。政府が見直しを進める狙いも、年間41兆円を超える医療費の抑制にある。

 しかし、病床数の削減に対する患者の不安は大きい。在宅医療の「受け皿」が十分にない中で病床削減を急げば、患者が行き場を失い「医療難民」となる可能性もある。

 医療機関はそれぞれの経営方針の下で施設整備、人材の雇用をしてきており、病床の転換はそう簡単ではないだろう。何より病床削減の前提となる在宅医療を拡充するには、かかりつけ医や訪問診療に対応する診療所、訪問看護ステーションなどの整備を急がなければならないし、介護・福祉との連携も求められる。

 県は医療機関に対して医療機能の転換を要請・指示する権限を持つが、地域の自主的な判断で再編が進むように、各区域で十分議論していくよう求めたい。(小出久)