栗橋病院:加須市に急性期移転 久喜市側に不信と不安 住民生活に影響も /埼玉

2017.05.15

  
 

栗橋病院:加須市に急性期移転 久喜市側に不信と不安 住民生活に影響も /埼玉
2017.05.10 


 久喜市の済生会栗橋病院が、発症直後の患者を治療する急性期診療部門を加須市に移す基本方針が決まった。現在地での再整備を求めてきた久喜市側には不信と不安がくすぶっており、地域住民に安心してもらえる計画作りが問われそうだ。【木村健二、中山信】

 県済生会が8日の理事会で承認した施設整備の基本方針は、加須市に200床規模の急性期病院を建設し、現在の栗橋病院には急性期から回復期の患者をカバーする「地域包括ケアシステム」などの医療施設を構築するというもの。栗橋病院の病床数は329床で、栗橋に129床が残るが、具体的な将来像は地元と協議しながら詰めるとした。

 移転問題の発端になったのは、加須市と栗橋病院が昨年3月、一部機能の移転に向けて結んだ覚書だ。1989年に開院し、施設の老朽化が進んできた栗橋病院と、中核病院の誘致に積極的な加須市の考えが一致した。加須市は医療体制確保基金として30億円を確保し、東武伊勢崎線加須駅南側の移転用地約4ヘクタールを取得。基本方針は「加須市において既に用地確保と財政支援の準備が整っている」と評価した。

 これに対し、久喜市の田中暄二(けんじ)市長は「久喜市に全く話をしないで秘密裏に覚書を進めてきた。スタートからやり方が間違っていたのではないか」と不快感をあらわにする。

 栗橋病院は2011年に地域救急センターを設け、重篤な患者を受け入れる「3次救急医療」の提供を目指してきたが、経験豊富な医師の確保など必要な要件を満たしていない。急性期診療部門を加須市に集中しても、3次救急医療の実現は未知数だ。

 久喜、加須両市を含む周辺9市町は、同じ利根保健医療圏を形成。久喜市内の主な救急搬送先としては、市北東部の栗橋病院のほか、市中心部に新久喜総合病院もある。だが、加須市の移転用地は栗橋病院から西へ10キロ以上離れており、栗橋病院周辺の住民にとってはマイナス面の影響が生じるとみられる。市民団体「済生会栗橋病院の存置存続を求める市民会議」で事務局を担う梅沢佳一さん(63)は「救急患者を受け入れる身近な病院がなくなると、日常生活の安心感が違ってくる」と話す。

 加須市の大橋良一市長は8日に発表したコメントで、周辺地域を念頭に「建設される病院は、加須市民はもとより周辺市民にとっても有益なものとなることを願っている」と配慮を見せた。10日には市議会全員協議会があり、大橋市長が急性期病院の誘致など、医療体制の整備について報告する予定だ。

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 ◇済生会栗橋病院の一部機能移転を巡る主な経過◇

2016年 1月 8日 加須市が済生会栗橋病院に要望書を提出

      3月15日 加須市と済生会栗橋病院が覚書を締結

      6月15日 加須市議会が済生会栗橋病院の一部機能の移転実現に向けた決議案を可決

      6月20日 久喜市議会が済生会栗橋病院の高度急性期診療部門の加須市への移転計画の白紙撤回を求める決議案を可決

      6月30日 加須市議会が病院建設などに向けた医療体制確保基金条例案、25億円を積み立てる補正予算案を可決

      7月 1日 済生会栗橋病院が、久喜、加須両市の担当者らを交えた病院あり方検討委員会を設置

     12月12日 加須市議会が医療体制確保基金に5億円を積み増す補正予算案を可決。基金額は30億円に

2017年 3月16日 久喜市の田中暄二市長が済生会栗橋病院の長原光院長を訪ね、同市に急性期病床、加須市に地域包括ケア病床を整備する譲歩案を提示

      3月23日 病院あり方検討委が最終会合。加須市に200床規模の急性期病院を建設するなどの結論案が出されたが、久喜市側の反発でまとまらず

      5月 8日 県済生会理事会が、加須市に200床規模の急性期病院を建設するなどの基本方針案を承認

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 ■ことば

 ◇済生会栗橋病院

 久喜市小右衛門にある地域医療支援病院。旧栗橋町(現久喜市)から病院設置の要望を受け、1989年に開院。入院や手術の必要な患者を受け入れる2次救急医療を提供し、災害拠点病院などの指定を受ける。診療科数は25科、病床数は329床。2016年6月現在の常勤職員数は609人、うち医師58人、看護師352人。