薬剤師の将来像■健康サポート薬局「国民・患者に役割の発信を」――認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML山口育子理事長 インタビュー

2017.04.24


薬剤師の将来像■健康サポート薬局「国民・患者に役割の発信を」――認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML山口育子理事長 インタビュー
2017.04.24 The Doctor 


 厚生労働省の「健康情報拠点薬局(仮称)のあり方に関する検討会」で「健康サポート薬局」制度の構築に向けた議論に参加した認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOMLの山口育子理事長が、薬剤師を取り巻く現状と課題について見解を述べた。2016年は「かかりつけ薬剤師・薬局」に対する調剤報酬上の評価が導入され、「健康サポート薬局」制度がスタートするなど、薬局薬剤師を巡る環境が大きく変化したが、山口氏は「患者が薬剤師の役割や意義を理解していない」と強調。特に「健康サポート薬局」制度に関する周知が不十分と指摘し、「どの様な役割を果たせるのか、情報発信が必要だ」と訴えた。一方、病院薬剤師に対しては病棟配置の進展により「患者から顔が見える存在になっている」と評価した上で、今後の課題に薬局薬剤師との情報共有をあげ、一例として検査値データの活用を示した。
――まずは薬局薬剤師や医薬分業政策を取り巻く現状と課題についてご見解をお示しください
 地域包括ケアシステムの一員として在宅医療に取り組んだり、病院薬剤師との連携や、薬学的管理によるプレアボイドを実践する薬局がある一方で、調剤ばかりを行う旧態依然の薬局と二極化してきているように感じている。しかし、ただ一生懸命に取り組んでいればいいということではなく、今は薬局薬剤師全体の意義が問われる瀬戸際に来ているという意識を持たなくてはならない。14年にOTC薬のインターネット販売が解禁されたが、ある意味で薬剤師による対面販売は不要と認められたに等しい。今のままでは医療用医薬品まで影響が及ぶかもしれないという危機感が必要ではないか。
 薬局薬剤師を取り巻く課題として、患者が薬剤師の必要性を感じていないという現状があると思う。その理由のひとつは、薬剤師が一体何をやっているのか、役割が理解されていないことだ。役割の見える化をいかにしていくかが大事になる。例えば処方せんの有効期限が4日間ということを知っている患者は多くないが、知っていれば薬局での待ち時間を減らす工夫をかなりできる。他にも政府は後発医薬品の使用促進に取り組んでいるが、後発品に変更する際に「後発医薬品分割調剤」、いわゆる「お試し調剤」を利用すれば、品質に不安を感じる患者も安心できる。一般の方にこの話をすると、「こんな便利な制度があるのか」と驚かれるが、本来は薬剤師が情報提供するべき内容ではないか。このような情報提供を通じて薬局薬剤師の必要性を患者に感じてもらわなければ、薬の相談相手にすらなれない。薬剤師の方などには、「患者が一度でも薬局薬剤師にがっかりする経験をすれば、二度と期待してくれない」とよく伝えている。地域全体で薬局の能力を高める必要があり、一生懸命に取り組んでいる薬局は、他の薬局を引っ張っていくリーダーシップを発揮しないと、「薬剤師は必要ない」という認識が定着してしまえば
、いくら頑張っていても無意味になってしまう。
――16年度の調剤報酬改定では「かかりつけ薬剤師・薬局」への評価が導入されました
 個人的には「かかりつけ薬剤師」よりも「かかりつけ薬局」を整備する方が重要だと思っている。ひとつの「かかりつけ薬局」を決めておき、そこに勤務する薬剤師が患者の情報を共有しておくことで、いつ来局しても同じ対応をしてもらえる方が、患者としても手間にならない。実際に、いつも相談する薬剤師がいても基準を満たしていないため、「かかりつけ薬剤師」として選ぶことができないケースがあるようだ。
 また「かかりつけ薬剤師指導料」の算定基準が非常に厳しいと思っている。特に医師や歯科医師には不要な同意書が、薬剤師だけには求められることは疑問があるし、「該当薬局に週32時間以上勤務」「該当薬局に6カ月以上勤務」といった要件も、実力があるが長く働けないような薬剤師だと算定できない。基準を満たせる薬剤師がどれだけいるのか分からない。
――また薬局薬剤師の業務を「対物」から「対人」へ転換する方向性が打ち出されています
 もともと薬剤師の業務は「対人」だったと思うが、今まであまりにも薬局の中に閉じこもっていた。今後は地域包括ケアシステムの一員として、薬局も地域に根差し役割を果たさなければならない。チーム医療の進展や、入院から外来へ医療がシフトしていく中で、薬物治療に関する注意点や工夫などをしっかりと伝えるためのコミュニケーションが求められる。これまで「対物業務」が基本だと思っていたこと自体が問題であり、まさしく本来の姿に立ち返ることになるのだろう。
 もちろん患者だけでなく他職種とのコミュニケーションも重要だ。例えば処方せんに病名や検査値データなどの情報が記載されていないことで、十分な服薬指導を行うことができないと、もっと声をあげるべきではないか。薬剤師法の改正により、薬学的知見に基づく服薬指導が義務となった以上、情報がもらえるのを待っているのではなく、自ら働きかけていく姿勢が大切だ。
――昨年10月からスタートした「健康サポート薬局」についてもお聞かせください
 私は「健康サポート薬局」について議論した厚労省の「健康情報拠点薬局(仮称)のあり方に関する検討会」に参加していた。当初の「健康サポート薬局」は「かかりつけ薬局」機能のプラスアルファとして、医療用医薬品だけでなくOTC薬や健康食品も含めた相談応需などの機能も持つという考え方だったが、私は地域のリーダー的な存在となり、ほかの薬局に対して情報提供・サポートできる役割にこだわった。「健康サポート薬局」の看板を持つ薬局だけが、きちんと取り組んで満足しても意味がないからだ。
 課題は制度の周知が不十分なことだろう。薬局には「基準薬局」など、他にも様々な名称を掲げているところもあるし、そもそも「健康サポート薬局」がどのような機能を持つのか理解されないと、国民のためにならない。「健康サポート薬局」としてどの様な役割を果たせるのか、国民や患者への情報発信が必要だ。
 期待するポイントとしては、やはり薬について気軽に相談できることだ。今の薬局は処方せんがないと入れないイメージがあるが、入院から外来へ移ったことで、孤独を感じながら治療を受けている患者は多い。例えば抗がん剤治療を受けていて疑問に感じることがあっても、薬局に相談していいと思っている患者は少ないだろう。また目薬や塗り薬でも、正しい使い方を分かっていない患者もいるが、そういったことに薬剤師がアドバイスして、患者が「助かった」と実感する機会が増えれば、さらに期待は高まると考えている。
――病院薬剤師についてはどのように評価されていますか
 同じ薬剤師でありながら、病院と薬局で患者の目には違う職種のように映ってきているかもしれない。例えばがん病棟で医師の回診に病院薬剤師が同行し、抗がん剤のレジメンについてアドバイスするといったことが目の前で展開されている。病棟配置も進み始めており、緩和ケアチームや栄養サポートチームは薬剤師の参加が診療報酬上の算定要件になっている。薬剤師としてどのような情報提供をするのか、患者にとって顔が見える存在になったと感じているだろう。
 これからは病院薬剤師と薬局薬剤師との間での情報共有について、連携して考えて頂きたい。ある病院の薬剤部は検査値を処方せんに表示する必要性を感じ、医療用医薬品を分類して、品目ごとに表示すべき検査項目を検討されている。その内容を地域の薬局に説明することで患者への情報提供や、疑義照会に活かしているようだ。薬剤師同士ならどのような情報が重要か分かるのではないか。地域医療の中で病院薬剤師と薬局薬剤師が最も連携しやすいはずだ。
――それでは最後に、薬剤師に対する今後の期待についてお聞かせください
 「かかりつけ薬剤師指導料」や「健康サポート薬局」などが登場したことで、薬剤師には今まで通りではダメだという思いで活動して頂きたい。特にコミュニケーション能力を高め、今までできていなかった患者への情報発信などに取り組もうと本気で考える薬局薬剤師が増えてほしい。そのためにはまず、業務の見える化が重要になるだろう。この薬局の薬剤師は患者に対してどの様な役割を果たし、サービスを提供してくれるのか、サービス内容を案内するようなチラシを薬と一緒に渡すことも手段のひとつかもしれない。
 また6年制の薬学教育を受けた薬剤師には、これまでにない新たな薬剤師の価値を見せてほしい。修業年限が2年間延びて、従来と何も変わらないのでは全く意味がない。従来の薬剤師が「自分たちも頑張ろう」と思い、奮起するような相乗効果も期待したい。


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