[解く追う]2大学 県内で看護学科新設 人材不足の解消へ一歩 偏在化への対応は続く

2017.04.03


2017.04.02
 
  [解く追う]2大学 県内で看護学科新設 人材不足の解消へ一歩 偏在化への対応は続く 

 


 聖カタリナ大(松山市)と、河原学園(同)が運営する人間環境大(愛知県岡崎市)が1日、松山市にそれぞれ看護学科を新設した。同時期に誕生した背景の一つに、団塊の世代が75歳以上となる「2025年問題」がある。国が25年をめどに実現を目指す「地域包括ケアシステム」など、看護師には多様化する介護現場への対応やより高度な知識が求められている。一方、看護師の不足や都市部への偏在は続いており、両大出身の看護師が地方で介護や医療に従事するかは見通せない。

 「看護師の活躍の場が地域の介護現場へも広がる中、看護基礎教育の4年化は必要だ」。県看護協会の大西満美子会長は強調する。看護学生が学ぶカリキュラムは増えており「3年制の専門学校では時間的に余裕がなくなっている」。

 県内の看護師養成機関は、愛媛大と県立医療技術大のほか、専門学校9校、高校3校がある。12年には松山赤十字病院が、3年制の松山赤十字看護専門学校の四年制大学への移行を模索し松山大に看護学部設置を要望、14年に断念した経緯がある。

 県内大学の看護学生は、聖カタリナ大と人間環境大の学科(各80人)新設で従来の1学年計135人から計295人に増える。大西会長は「地元定着にもつながる」と期待する。

▼地域包括ケア

 両大は教育の柱の一つに、高齢者が要介護となっても住み慣れた地域で生活を送れるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供する地域包括ケアシステムを担う人材の育成を掲げる。大西会長は、同システムでの看護師の役割を「患者の病状や生活状況を把握できるのは看護師であり、主治医やケアマネジャー、行政などとの連携の要になる」と説明する。

 聖カタリナ大では病院での実習に加え、ボランティアの健康相談や血圧測定などを通して高齢者と触れ合い、地域の実情を学ぶ。関谷由香里学科長は「聖カタリナ大の強みである福祉やスポーツ分野と連携し地域で活躍できる看護専門職を育成したい」と意気込む。

 人間環境大は、東中南予の病院や訪問看護ステーションなどで実習を行う予定で、松山看護学部の河野保子学部長は「地域包括ケアシステムを念頭に、地域ごとに違う医療事情を学ぶ」と話す。同システムでは、医師のいない現場で患者を診ることも想定されており、同大はより高度な専門知識を身に付けるため、将来的には松山に大学院を設置する方針だ。

 県内では慢性的な看護師不足が続いており、厚生労働省の「衛生行政報告例」などによると、14年度の県内の看護師は1万5366人で、保健師や助産師などを含めた看護職員は2万2133人。病院内保育といった子育て支援や再就業の取り組みなどで看護師は00年度より5千人増えたが、県医療対策課は「現場での人手不足感は解消されていない。2学科新設で看護師不足が解消できるかは分からない」とする。

▼獲得競争過熱

 06年度の診療報酬の改定で、看護師1人が患者7人を受け持つ「7対1」の病院が「10対1」より2割高い診療報酬が支払われるようになった影響で看護師の獲得競争が過熱、「大病院への人材集中を招いた」(同課)。県内に大学出身の看護師が増えても、都市部の大病院に集中すれば、両大学が掲げる地域医療の充実はおぼつかない。

 聖カタリナ大の関谷学科長は看護師の偏在について、県立病院の看護師を出向させるなど県が主体的に取り組む問題であり「大学としては実習などで学生の地域医療への関心を高めたい」と話す。人間環境大の河野学部長は「地域医療のやりがいを伝え、学生の意識を変えていくことが大切」と語る。

 大学で高度な知識と技術を身に付けた看護師をどう地域の介護・医療現場にいざなうか。大学の看護学科新設は、地域医療の充実に向けた第一歩にすぎない。(菅亮輔)