「地域枠」医師 3%根付かず 昨春卒業1060人調査 「専門性高められぬ」

2017.03.27

「地域枠」医師 3%根付かず 昨春卒業1060人調査 「専門性高められぬ」


 地域で働く医師を育成する大学医学部の「地域枠」を昨春卒業した1060人のうち、3%強に当たる35人が地域医療から離れていたことが文部科学省の初調査でわかった。「地方では専門性を高められない」「都市圏で暮らしたい」などが理由。地方の医師不足が深刻になる中、全国の71大学が地域枠を導入しており、厚生労働省の検討会が改善に向けた議論を進めている。

 地域枠は、卒業後の一定期間、大学の地元などで医療に従事することを条件に一般枠とは別に募集、選抜するのが一般的。「一定期間の地元勤務」などを条件に奨学金を返済免除とするケースも多い。一般枠で入学後、同様の奨学金を出す自治体もあり、文科省はこれらを含めて「地域枠」と総称している。今回の調査で判明した離脱者35人のうち30人は条件付き奨学金を受け取り、卒業時に返済するなどしていた。

 医師が都市部に偏り、地方で不足する地域偏在は深刻な問題になっており、地域枠を導入する大学は増えている。文科省によると、地域枠のある大学が増え始めた2008年度は33校だったが、16年度には71校に増加、医学部のある国公私立大計80校の9割近くを占めるようになった。合計募集人員も約4倍の1617人(1大学当たり4~90人)に拡大した。卒業生が増えてきたことから、同省は昨春の卒業生について、進路などを初めて調査した。

 高知大では、高知県外出身の2人が奨学金を返済したうえで、「都市圏で暮らしたい」と同県を離れた。同大の地域枠では、月額15万円(6年間で計1080万円)の奨学金を貸与し、指定の医療機関で通算9年間勤務すれば返済を免除している。同大の担当者は「地元に残って働けと強制はできない」と話す。

 卒業時以外に離脱するケースもある。例えば鹿児島大では昨年1年間に、地域医療に就いていた既卒者2人と、在学生1人が「地域医療では医師としてのキャリアを形成できない」などとして離脱している。

 厚労省の有識者会議では、地域枠卒業生の定着率向上に向けた具体策を検討課題としており、メンバーの一人は「奨学金で地元に引き留めるやり方には限界がある」と指摘する。

 全国地域医療教育協議会代表を務める長崎大の前田隆浩教授は「学生にどれだけ地域医療の魅力ややりがいを伝えられるかが重要」と話している。