ライバル2病院、生き残りへ連携

2017.03.22

 
ライバル2病院、生き残りへ連携

2017年3月16日
 岡山県北部に長らくライバル関係にあった病院が、一転して連携に踏み切ったケースがある。首都圏では今後、病床不足が予測される一方で、人口流出が続く地方は逆に、病床が余ることが懸念されている。すでに一部の病院では病床の稼働率が低下。病院を取り巻く経営環境が悪化するなか、生き残りを探る事例として注目されている。


金田病院は外科手術やリウマチ科などを担当する

 岡山県真庭市の落合地区。地区を流れる旭川を挟み、病床数が約170床とほぼ同規模の病院が2つ立ち並んでいる。

 2つの病院は、金田病院と落合病院だ。町内で事故があると両病院が救急車を派遣し、けが人を呼び込みあうほど患者の獲得を競い合ってきた。その激しい競合は地域の住民から「川中島の戦い」と呼ばれるほどだったという。

 そのライバル病院同士が今は、協調関係にある。

 岡山県北部は人口減が続く。地方病院を取り巻く経営環境は、急速に悪化している。約15年前、危機感を抱いた真庭市内の3病院の院長が集まり、定期的な会合がスタートした。

 医師不足が連携に拍車をかけた。担当医が退職したため、金田病院は透析患者の受け入れ中止を決断。残された患者約10人を、ライバルの落合病院に紹介することになった。一方、落合病院も外科手術から撤退。金田病院に任せることを決めた。

 09年には隣接する津山市の病院が民事再生法を申請。11年には協調に向けて定期的な会合を続けてきた、真庭市の河本病院まで破産する。

 「競争を続ければスタッフが疲弊し、住民にも迷惑がかかる」。金田病院の金田道弘理事長は次第にそう考えるようになっていった。


落合病院は人工透析や小児科、産婦人科を担う

 そこで10年から45回にわたって、金田病院と落合病院の間で連携推進協議会を開催。「川中島の飲み会」と名付けた交流会を通じ、両病院間の親交を深めてきた。

 診察領域ごとのすみ分けはさらに広がる。今では患者に配る診察表の片面には金田病院の外来診療スケジュールを、もう片面には落合病院のスケジュールを記載するほどだ。金田病院にとって落合病院は、患者の紹介先、紹介元ともに第1位だ。ライバルは友好病院に変わった。

 両病院が次のステップと見据えるのは今年4月から始まる「地域医療連携推進法人」への取り組みだ。地域医療連携推進法人が実現すれば、法人に参加する病院は経営を効率化できる。

 例えば人件費負担が大きい非常勤医師を共同で手配すれば、人材の効率配置につながる。また各病院が手がける訪問看護・介護でも、より効率的なスタッフの派遣が可能になる。病床削減もより柔軟に対応できるようになる。

 同様の取り組みは岡山大学や、岡山県玉野市の市立病院などでも検討されている。

 ただそれぞれの事情の違いなどから構想は立ち上がるものの、なかなか前に進まない。「30年後には両病院が1つになっているだろう」との予測のもと、私立病院同士が連携を深めるケースは全国でも異例だ。

 医師や看護師不足、患者の減少などは、日本各地で今後、直面する課題だ。「こうした課題に我々は既に直面している。自ら先進的な取り組みを進め、地域医療を守るためのスキームを残したい」。それが金田理事長の思いだ。

(岡山支局 三木田悠)

[日経産業新聞 3月16日付]