県内の産婦人科医減少深刻 分娩施設 11市町ゼロに 育成と病診連携強化を

2017.03.14

[解く追う]県内の産婦人科医減少深刻 分娩施設 11市町ゼロに 育成と病診連携強化を
2017.03.12  



 県内の周産期医療の現場がマンパワー不足に直面している。日本産婦人科医会の調査によると、愛媛は2016年までの10年間で新たな専攻医より退職者数が多い「産婦人科医減少」自治体の一つ。分娩(ぶんべん)施設の減少、偏在も進む中、関係者らは医師確保の重要性や病院と診療所の連携体制の強化を訴える。

 「閉院を聞いた時はショックだった。地域にお産できる施設があるかないかでは安心感が違う」―。15年夏、松前町内で唯一だった産婦人科診療所が閉院した。近隣市町からも多くの妊婦が利用する施設として知られ、子ども3人を出産した町内の母親(38)は「本当に残念。地元だから親の手も借りやすく、育児をしながらの出産も心強かったのに」と振り返る。

▼松山圏域でさえ

 松山圏域では前後して複数の閉院が続き、周辺の病院や診療所に一時影響が広がった。「医療機関の多い中予でも1カ所閉じればしわ寄せがくる。さらに資源の乏しい地域は今後どうなるか」と不安を口にする関係者ら。県健康増進課によると、16年末時点で県内で分娩を取り扱う施設は34カ所(病院・診療所32カ所、助産院2カ所)と06年より14カ所減少。松前や伊予、西予など計11市町がゼロで、場所によっては遠距離通院を余儀なくされる状態だ。

 少子化が進む中、医師や新規開業は都市部に集中し、地方ほど偏在の影響を受ける。母子保健に関わる自治体担当者らも「子育て環境を整え人口回復を目指すためにも産婦人科の意義は大きい」と切実に語る。

 根底には、高齢などを理由に分娩休止・閉院を決める医師や退職者の数に対し、新たな医師が増えていない現状がある。

 出産を扱う産科・産婦人科は他の診療科と比べて当直や呼び出しが多く、訴訟リスクの懸念も敬遠の一因とされる。

 10年以降は新人医師の臨床研修で産婦人科が必修から外れた影響が大きく、愛媛大医学部附属病院の杉山隆教授(産婦人科学)は「研修で現場に来なければ専攻の選択肢にすら入らない。母子の二つの命を同時に扱う周産期医療のやりがいや意義を感じてほしい」と医学生に呼び掛け、地道な育成に励む。

 若年層ほど女性医師の割合が増えており、出産や育児で病院を辞めたり、フルタイムで働けなくなったりするケースも少なくない。

▼増える高リスク

 喫緊の課題は、ハイリスクな分娩を扱う高次施設の人手不足だ。

 県内では研修制度の変更や中心的指導者の一時不在などもあり、例年4人前後いた新規の医師が12~14年はゼロだった。不足の波は全域に及び、各医療圏の地域周産期母子医療センターを担う県立今治、新居浜の両病院は一時期、常勤医が2人に減少。15年に着任した杉山教授は「地域医療を守るには最低4人は必要」と県外からも医師を確保し、1月までに1人ずつ追加派遣したが、「育ったはずの医師がいない穴は後々響く。影響を抑えるために若手の育成が最重要」と力を込める。

 周産期医療の「最後のとりで」として緊急搬送や紹介妊婦を受け入れる県立中央病院・総合周産期母子医療センターも医師が減少、越智博センター長は「少子化で全体の分娩数は減ってもハイリスクの割合は増えている」と負担増を語る。特に伊予郡・伊予市から南予方面にかけては施設が少ないため、ローリスク患者も同センターへ流れやすい。「診療機関がうまく機能分化していかないと医療体制は維持できない」と、受け皿となる1・5次的施設の充実を訴える。

 「医師を増やすには勤務環境の改善や女性医師のキャリア支援、病診連携の再構築など総合的に環境を整えていくしかない」と関係者ら。杉山教授は妊婦健診を地域の診療所、分娩を中核病院が担う「セミオープンシステム」の普及を提案するなど、マンパワー不足の解消を模索する。

 少子化や女性の社会進出が進む中、産婦人科医の果たす役割は大きくなっている。限られた資源で地域の周産期医療を守りながら、医師を増やす環境をどう整えるか。医療機関や行政が連携した多角的な取り組みが不可欠だ。(伊藤絵美)

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【分娩を取り扱っている県内病院・診療所(2016年12月末現在)】

市町名  病院数(病院名)                診療所数

四国中央  1(四国中央)                   0

新居浜   3(★県立新居浜、十全総合、愛媛労災)       2

西条    1(西条中央)                   1

今治    2(★県立今治、きら)               3

松山    3(▲県立中央、★松山赤十字、NTT西日本)    7

東温    1(★愛媛大附属)                 1

大洲    0                         2

八幡浜   0                         1

宇和島   1(★市立宇和島)                 3

計    12                        20

▲総合周産期母子医療センター ★地域周産期母子医療センター

(県健康増進課のデータに基づき作成)

愛媛新聞社