<表層深層>地域医療構想 岐路の病院、反発や様子見 国は硬軟使い分け誘導

2017.03.10

<表層深層>地域医療構想 岐路の病院、反発や様子見 国は硬軟使い分け誘導
2017.03.09



 都道府県ごとの「地域医療構想」がほぼ出そろった。病床削減など経営見直しを迫られる各地の病院からは反発や懸念の声が上がる一方、国の出方を様子見するムードも。厚生労働省は資金と制度の両面でアメとムチを使い分け、超高齢社会に合わせて医療提供体制の再編を図る考えだ。

 

 「30%削減なんて非現実的だ」。下呂温泉や高山など観光地で有名な岐阜県北部の飛騨地域。山間部にある飛騨市民病院の黒木嘉人院長(58)は語気を強めた。

 同地域は県の構想で現在の約1400病床を400床以上減らす必要があると推計された。削減率は県内最高の30%だ。

 病床の平均利用率が低いためだが「冬はお年寄りのインフルエンザや肺炎、雪による転倒で入院が増えて満床になる。表面的な数字で論じないでほしい」と黒木院長。

 構想策定のための会議に住民の立場で参加した阿部栄治さん(58)は「住民にとっては『病院を出された後、どうしたらいいのか』というのが一番の心配。退院後の生活を支える仕組みをつくってほしい」と話す。

 大幅な削減を迫られるのは高度医療を担う「急性期」の病床。飛騨地域に限らず、全国の多くの地域も同様だ。しかし医療界では「急性期こそ花形」という意識が根強い。高山赤十字病院の棚橋忍院長(69)は「急性期を減らせば若手が来なくなり、地方の医師不足に拍車が掛かる。構想には医師確保の視点が欠けている」と指摘する。

 反発を和らげるため、岐阜県は構想で「医療機関の自主的な取り組みが基本」と記載。他の都道府県も「(病床数の推計は)あくまで参考材料の一つ」(福島県)、「病床削減ありきではない」(大分県)といった文言を盛り込んだ。

 

 【厚労省、仕掛けを用意】

 厚労省は同様の考え方を示しつつ、さまざまな仕掛けも用意した。

 資金面では、急性期からリハビリ対応の回復期に転換する場合に、費用を補助する基金を都道府県に創設。来年4月には、医療機関の収入源で生命線といえる診療報酬の改定がある。厚労省の審議会では今年1月下旬、担当課長が改定の方向性に関し「地域医療構想に寄り添う」と発言。病院団体幹部は「報酬改定で大きく誘導するのだろう。どのタイミングでどう動くか、病院はみな様子見している」と話す。

 ただ、厚労省は議論を急がせたい考えだ。個々の病院の病床削減や機能転換について、具体策を来年3月までに決めるよう都道府県に求める。

 都道府県知事の命令や勧告権限という「ムチ」も新たにつくった。例えば、稼働していない病床がある場合、知事は公的病院には削減を命令、民間病院にも削減を要請でき、従わない病院には名称公表などのペナルティーを科すことができる。

 もっとも、こうした強硬手段は地元医師会との衝突につながりかねず、大半の都道府県は消極的だ。それを見越し、厚労省幹部は1月に全国の担当者を集めた会議で、状況に応じ知事権限を行使するよう要請。プレッシャーをちらつかせた。

 

 【目的混在、現場は困惑】

 医療政策に詳しい東京財団の三原岳研究員(44)は「『合意に基づく在るべき医療提供体制の構築』と『病床削減』という異なる目的が混在しているため、現場は困惑している。強引に進めるより、住民を含めた関係者の納得を得ながらの方が最終的には成果が出るだろう」と話している。【共同通信 秋田魁新報】