■調整煩雑、ノウハウ不足...影響、熊本地震でも

2017.03.08

=災害時、病院の事業継続計画=「備えを」東北から警鐘
2017.03.07 佐賀新聞  


■調整煩雑、ノウハウ不足…影響、熊本地震でも


 大災害時に医療活動を続けるためのマニュアル作りが進まない。事業継続計画(BCP)と呼ばれるもので、病院では院内外の調整の煩雑さやノウハウ不足を理由に、災害対応の核になる災害拠点病院でさえ、整備は5割に満たない。「犠牲者を少しでも減らすよう、全ての医療機関で取り組んでほしい」と東日本大震災を経験した医師らは警鐘を鳴らす。

 「せめて衛星電話があればもっと早く対応できた」。震災時、宮城県石巻市で、民間の精神科病院で院長だった男性医師が悔やむ。海から約1キロの距離にある病院は津波で全壊、入院患者24人が犠牲になった。


◎公立と民間で差


 水道や電気が途絶え、避難した近隣住民と共に孤立した。発生5日目に市役所の非常用電話で残った患者約90人の転院先探しを県に依頼。避難所などを訪ね歩いて地元のバス会社社長を見つけ出し、患者の移動手段を確保した。系列病院からの食料を分けてしのぎ、最後の患者が運び出されたのは4月1日だった。

 一方、近隣の市立病院の患者は発生3日後までに全員がヘリコプターで内陸に搬送されていた。「公立と民間の差を痛感した」と元院長。その後、廃院となった。


◎事前対策あれば


 宮城県の主要病院で震災時に亡くなった被災者を分析した山内聡医師(大崎市民病院救命救急センター長)によると、建物の耐震化や、水や医薬品の備蓄が義務化されている災害拠点病院より、中小規模の病院で犠牲が目立った。死亡要因の約4割が断水や薬の不足など事前に対策を取り得るものだった。

 震災後に国は「医療機関は自ら被災することを想定し、BCP作成に努める」との通知を出し、手引きも示した。現場からは「院内や外部業者との調整が困難」「人手や予算面で余裕がない」といった声が上がる。昨年4月の熊本地震でも、約10病院が被災で診察継続を断念、患者の転院などを余儀なくされた。


◎三つを同時並行


 自治体主導で備えを進める例も出始めた。南海トラフ巨大地震で最大約4万2千人の死者を想定する高知県は東京海上日動火災保険と連携し、助言を受ける。

 「東日本大震災でより具体的な備えの必要性を痛感した」と高知県の担当者。3日間外部から支援が来ない想定で、病院や福祉施設といった地域の医療関係機関がどう協力するかを時系列にまとめる「タイムライン」作りにも取り組む。BCPの有無を融資の判断材料にする金融機関もある中、岐阜県はBCP研修・訓練センターを設置。コンサルティング会社に運営を委託し、病院も含めた県内企業の整備を推し進める。

 東北大災害科学国際研究所の佐々木宏之助教は「災害時、病院は元々の入院患者らのケアと新規のけが人への対応、病院復旧作業の三つを同時並行で進めざるを得ない。命を守り、地域医療を担い続けるため、ライフラインの確実な確保と外部支援の活用が重要な鍵になる」と強調した。