人生救った乗馬療法 難病の車いす男性、つえで歩行可能に

2017.02.20

人生救った乗馬療法 難病の車いす男性、つえで歩行可能に

医師驚き、心も明るく

矢崎隆さん(右)の指導の下、乗馬でリハビリする本谷充さん=福井県坂井市丸岡町八ケ郷で
 金沢大病院(金沢市)で特定疾患(難病)の「多発性硬化症」と診断され、車いす生活を長年送っていた福井県坂井市の飲食店経営、本谷(もとや)充さん(56)が、リハビリとして乗馬に挑戦したところ、1年余りで馬を乗りこなせるまでに回復した。主治医も「説明がつかない」と驚きの表情だ。本谷さんはリハビリに向けた“馬の効用”を訴えている。(本田優子)

 本谷さんは1990年ごろから、足がしびれるなど原因不明の病に侵され、徐々に歩行困難になった。通院しても回復の兆しがなく、7年後、金沢大病院で多発性硬化症と診断された。

 病は進行し、日常生活では車いすを手放せなくなっていた。ところが2010年夏、同県丸岡高校野球部時代の後輩で、乗馬の「遊馬倶楽部(ゆうばクラブ)」を経営する矢崎隆さん(55)との再会が運命を変えた。

 ホースセラピー(乗馬療法)を学び、乗馬によるリハビリにも取り組んでいた矢崎さんが「馬に乗ってみたら」と勧誘。主治医は「今の状態では危険だから」と反対したが、馬が好きだったこともあってチャレンジを決意した。

 当初は馬に乗ることだけでも大変だったが、体調の変化は数カ月で表れた。できなかった寝返りが自然に打てるようになり、つえを頼りに立ち上がることもできるようになった。

 その後も週1回約1時間のリハビリを続け、今では、1人で騎乗し市街地まで遠出ができるまでに回復。田んぼ道では手綱を巧みに操り、時速40キロ程度で疾走するまでに乗馬技術も上達した。

 それとともに、不自由だった足が上がるようになり、つえでの歩行も可能に。主治医も驚きながら、快方に向かう病状を喜んでいるという。

 リハビリを見守ってきた矢崎さんは「乗馬は全身運動なので、弱っていた筋肉が自然に鍛えられたのでは」と推測。馬に癒やされ、気持ちも明るくなった本谷さんは「半分あきらめていた人生を馬に助けてもらった。今度はお返しをする番。1人でも多くの人がリハビリとしての乗馬に関心を持ったり、体験できたりする手伝いをしていきたい」と話している。

 多発性硬化症 中枢神経系の疾患。原因は不明だが自己免疫説が有力で、白血球やリンパ球が、神経の糸を覆う髄鞘(ずいしょう)を傷つけることにより、視力の低下やまひなどの神経症状が出るとされている。再発を繰り返しながら慢性的に経過する。全国の患者数は約1万3000人。