大江戸線の麻布十番駅と清澄白河駅には東京都の防災備蓄倉庫があり、災害時に地上交通が寸断された場合、地下鉄を使った輸送が行えるように備えていることが公表されている。

2017.02.10

大江戸線の麻布十番駅と清澄白河駅には東京都の防災備蓄倉庫があり、災害時に地上交通が寸断された場合、地下鉄を使った輸送が行えるように備えていることが公表されている。 また大江戸線では災害時を想定した自衛隊の輸送訓練を実施したことがある。

大江戸線は建設当初から災害時の活用が見込まれている。それは東京都防災会議が策定した「東京都地域防災計画」において確認できる。
「東京都地域防災計画」には、第5章の緊急輸送対策の第2節において「地下鉄大江戸線防災ネットワーク」という項目がある。「東京都地域防災計画」は東京都防災会議が作成し、毎年、最新情報を反映するため見直しが行われている。東京都防災会議は東京都知事の附属機関で、災害対策基本法第14条と東京都防災会議条例に基づいて設置されている。議長は東京都知事で、東京都の市区町村や公共機関の代表などで構成されているという。
「地下鉄大江戸線防災ネットワーク」の項目には、「都営地下鉄大江戸線の清澄白河駅及び麻布十番駅の2駅に設置している地下防災施設(備蓄倉庫等)に物資を備蓄し、地震に強い地下鉄の輸送力を活用した支援と輸送を行う」「今後は、都営地下鉄大江戸線に加え、他の地下鉄路線の輸送力の活用を検討し、支援と輸送の防災ネットワークの充実に努める。」と記載されている。文章としてはこれだけだ。しかし、具体的な路線名が項目としてあげられた路線は大江戸線だけである。東京都が災害時の地下鉄輸送の中心として捉えている様子が伺える。

さらに、同計画の他の項目にも大江戸線が記載されている。第3章の「減災目標」では、外出者の早期帰宅目標を「4日以内」と定めている。これは東京湾でM7.3の地震が18時に発生した場合を想定したシミュレーションで、「交通機関による帰宅の促進」として、「地震に強い大江戸線など地下鉄の復旧」と記載されている。ここも路線名として大江戸線を筆頭に挙げている。

また、前出の第5章「緊急輸送対策」では、「緊急輸送ネットワークにおける指定拠点」として、地下鉄大江戸線の清澄白河駅、麻布十番駅が記載されている。両駅は備蓄倉庫だけではなく、輸送拠点にもなっている。輸送拠点は両駅のほか、JR山手線の東京・秋葉原・上野・日暮里・田端・池袋・新宿・渋谷・品川の各駅、京浜東北線の赤羽・蒲田駅。中央線の吉祥寺・西国分寺・立川・八王子の各駅、青梅線青梅駅、常磐線北千住・亀有・金町駅、総武線亀戸・小岩駅、横浜線町田駅、京王・小田急線多摩センター駅、東武線浅草駅・臨海交通線テレコムセンター駅、JR貨物八王子、隅田川、東京貨物ターミナル駅が指定されている。これらの駅は、別途定めた陸上輸送基地、航空輸送基地、海上輸送基地、水上(河川)輸送機地とリンクして緊急輸送の拠点となる。これらの路線は災害復興のために比較的優先的な復旧が求められている。

大江戸線を重視する理由

地下鉄は新しくできるほど深い場所を走る。これは地上の立体交差が古い道路や線路を高架で跨ぐ理由と同じだ。地下鉄の場合は基本的には浅いところを走り、先に作られた線路を横切るときだけ深くなる。地下鉄大江戸線は比較的最近作られたため、都心部ほど深いところを走っている。東京都交通局のWebサイトによると、光が丘駅は深さ11.9mほどだが、飯田橋駅は深さ32.1m、六本木駅の内回りは42.3mの大深度である。ちなみに大江戸線の六本木駅は日本の都市でもっとも深い駅とのことだ。

この深さを走るために、大江戸線は特に耐震性、耐火性を高くしているという。また、地図を見ると、沿線には避難所として使える大公園が10以上、国立国際医療センターや東京女子医大病院、東京大学附属病院、国立がんセンター中央病院などの医療機関も多い。臨海部と内陸部を結ぶため、輸送船からの物資の輸送中継にも役立つと思われる。

救護救命活動に当たる自衛隊も市ヶ谷駐屯地が最寄りのほか、練馬、朝霞駐屯地からもアクセスしやすい。実際に2000年には災害演習の一環として、練馬駐屯地の200名の自衛隊員が大江戸線の移動訓練を実施した。また、2006年の演習では朝霞駐屯地を出発した自衛隊員が大江戸線3両を貸しきって訓練を実施したという。

大江戸線は計画段階で膨大な建設費が問題となり、トンネル断面を小さくできるリニアモーター式を採用した経緯がある。それでも当初は赤字で肩身の狭い思いをしたという。しかし全線開業後は順調に乗客を増やし、東京都交通局の収支を向上させている。そんな大江戸線は、東京の防災・救護面でも大いに期待されている。