国立・公的医療機関等の経営状況

2017.02.08

国立・公的医療機関等の経営状況
-地域医療構想との関係から-
No.373
2016 年11 月16 日
日本医師会総合政策研究機構
前田由美子
日医総研ワーキングペーパー

国立・公的医療機関等の経営状況-地域医療構想との関係から-
日本医師会総合政策研究機構(日医総研) 前田由美子
公益社団法人日本医師会 地域医療第1 課・総合医療政策課
キーワード
◆ 地域医療構想 ◆ 公的医療機関等 ◆ 国立病院 ◆ 労災病院
◆ 公立病院 ◆ 日赤 ◆ 済生会 ◆ 医業収益・医業利益
◆ 運営費交付金・補助金 ◆ 政府出資金


ポイント


◆ 2016 年11 月11 日現在、47 都道府県中31 都府県で地域医療構想を策定
済である。地域医療構想策定済の都府県では、今後、調整会議での協議
に入る。

◆ 地域医療構想は病床削減の仕組みではないが、病床過剰地域の公的医療
機関等に対しては、都道府県知事が非稼働病床の削減を命令することが
できるなど、地域医療構想の下で公的医療機関等の医療提供体制が大き
く動く可能性がある。

◆ 公立病院は、「新公立病院改革ガイドライン」にもとづき、各病院が改
革プランを策定している。同ガイドラインは、各病院の改革プランと地
域医療構想との整合性をとるべきとし、地域医療構想調整会議の合意事
項と齟齬が生じた場合には、当該公立病院改革プランを修正すべきとし
ている。公立病院には、一般病床または療養病床の病床利用率が3 年連
続70%未満の病院が約3 割ある。また公立病院には改革に向けて減反補
助金のような財政措置もある。仮に構想区域で病床削減を行う必要があ
る場合には、公立病院から検討を始めることとなろう。


◆ 国全体の歳出改革を考えると、地方交付税、運営費交付金、国庫負担金・
補助金、政府出資金のあるところから、必要な場合にはダウンサイジン
グを進めることが筋である。

◆ 国立病院は積極的な設備投資を行っており、組織力もある。地域医療構
想の下、各病院が地元構想区域で柔軟な対応がとれるかどうかが懸念さ
れる。国立病院について調整会議で先行して議論の俎上に上げたほうが
良いと考える。


◆ 労災病院の中には外科が休診といった病院があり、本来の役割である労
災疾病への対応も困難になっているのではないかと推察される。政府出
資金も食い潰されており、地域医療構想いかんにかかわらず民間譲渡も
含めた経営改革が必要である。


◆ 日赤、済生会、JCHO は地域包括ケア病棟や在宅医療に参入してきており、
中小民間病院と競合するおそれがある。2016 年度の診療報酬改定では、
大規模急性期病院の地域包括ケア病棟参入は制限されたが、さらに整理
が必要である。


◆ 地域医療構想においては、都道府県知事は公的医療機関等に対して、不
足している病床機能への転換を命令することができるが、民間医療機関
が不足機能を担おうとしている場合には、公的医療機関等を先んじて転
換させない措置も必要である。


◆ 年金保険料、健康保険料、労災保険料で整備されてきた病院は、病院譲
渡によって国の特別会計に譲渡益(益が出た場合に限るが)が納付され
るケースもないとはいえない。地域医療が引き続き確保されることは絶
対であるが、その上で、今後の選択肢として民間譲渡を排除すべきでも
ないだろう。


◆ なお、いずれのケースも地域(構想区域)の事情によるものであること
は言うまでもない。
http://www.jmari.med.or.jp/download/WP373.pdf