福岡県/公立八女総合病院 筑後市立病院 久留米大が統合提案 「400床超 10年内に新設を」/筑後

2017.02.03

福岡県/公立八女総合病院 筑後市立病院 久留米大が統合提案 「400床超 10年内に新設を」/筑後
2017.02.02 


 ●関係3市町 明確な姿勢示さず

 地域の中心的医療機関である公立八女総合病院(八女市、300病床)と筑後市立病院(筑後市、233病床)に対し、医師を派遣している久留米大(久留米市)が統合を提案していることが1日、分かった。大学は400病床以上の新病院開設を想定し、昨年10月に関係する八女、筑後両市、広川町の首長と議会議長宛てに提案書を送っている。地域の医療体制に関わる問題だが、各首長は統合の是非や協議開始について明確な姿勢を示していない。


 関係者によると、提案書は同大学長と医学部長名で出された。医師不足などを挙げ「近い将来、両病院での診療の継続が困難になる」と指摘し、同様の医療機能を持つ両病院の統合を提案。その効果として「地域の中核となる基幹病院となり、優秀なスタッフの派遣が可能になる」ことなどを挙げている。

 同大は両病院に医師を派遣。現在、公立八女総合病院で常勤医師47人中45人、筑後市立病院で同35人中30人が同大の医師で占められており、協力がなければ運営が成り立たない。

 久留米大の内村直尚・医学部長は1日、取材に対し「距離的に近い二つの病院双方に十分な医師を派遣する余裕はなく、今のままでは厳しい。深刻になる前に全ての診療科を備えた核となる病院に統合することが医療の質の維持につながる」と説明。10年以内に新病院開設を希望するが「あくまで提案。関係自治体、両病院はまずは検討する場を設けてほしい」と語った。

 統合を提案された両病院だが運営環境は異なる。公立八女総合病院は八女市と広川町でつくる企業団が運営。2011年度から赤字経営が続き、企業団内では民間委譲も含めた経営健全化策や老朽化した病院の建て替えも議論されていた。

 提案書について、八女市の三田村統之市長は「住民に不安を感じさせないことが一番大切。現時点で具体的な検討はしていないが、状況に応じ協議したい」と述べた。広川町の渡辺元喜町長は「現段階で話すことはない」とコメントした。

 筑後市立病院は、同市唯一の総合病院。1999年に建物の建て替えを終え、2011年に地方独立行政法人の運営となってからは黒字経営が続いている。

 筑後市の中村征一市長は「長期的な観点から医師不足について協議する場は必要だが、今すぐに統合の話につながることはない」と話している。

 (泉修平、山口新太郎、床波昌雄)


 ●医師供給源の地方大学苦境 議論促す「強い要請」

 久留米大が公立八女総合病院と筑後市立病院の統合を提案した背景には、地方大学が医師供給源として役割を担うことが年々難しくなっている現実がある。「提案」の形を取っているが、両病院は医師の確保を大学に依存しており、地域医療を維持するための「強い要請」と言える。

 昨年3月、八女総合病院の産科診療が突然休止した。久留米大の産科医が足りなくなり、派遣することができなくなったからだ。一部再開した現在も分娩(ぶんべん)は予定日が明確な帝王切開に限られている。

 内村直尚・医学部長は「産科を含め余裕がある診療科は一つもない」と説明。「大学は高度救命救急や専門性の高い医療を提供し、教育、研究の役割も担う。目いっぱい医師を地域の病院に送り出しているが、大学の医師の数が足りなくなっている」と現状を語る。

 同大の医師は、国が臨床研修制度を導入した2004年度以降、減少傾向を強めている。新卒医師が研修先を自由に選ぶことができるようになり、最新の医療設備を持ち、生活も便利な都心部の大学や大手病院に研修医が集中するようになったからだ。

 さらに、国の方針で同大は新卒の研修医の定員を削減され、04~06年度の108人から徐々に減り15年度以降は42人に。新年度、確保しているのは、ここ10年で最も少ない36人だという。大学は八女総合、筑後市立両病院の統合で規模と医療体制が整い、「第一の教育関連病院」(提案書)として若い医師も引きつける病院に生まれ変わることを期待している。

 地域医療に詳しい城西大の伊関友伸教授は「研修態勢が充実し、ある程度規模のある病院でなければ、医師は集まらないし、勤務したがらない。地域医療の維持を考えれば提案は理解できる」とした上で「自治体と住民も今後の医療体制のあり方について、ともに議論すべき時期が来ているのではないか」と指摘した。

 (山口新太郎)

西日本新聞社