医師確保、独自策光る 各地の自治体や公立病院 /島根県

2017.02.01

医師確保、独自策光る 各地の自治体や公立病院 /島根県
2017.01.31 朝日新聞


 地方の医師不足が深刻になる中、各地の自治体や公立病院が独自の方法で医師確保に乗り出している。「このままでは地域医療が崩壊する」。強い危機感をもとに、兵庫県香美町は医師を招くため特命課長を置いてリクルート活動を実施。県外では医師らを育成するセンターを設けた病院や、地域医療への関心を持ってもらうため啓発活動を始めた住民グループもいる。


 ■特命課長、説得に奔走 兵庫・香美町

 小児科医の隅達則医師(47)が香美町の公立香住病院に赴任したのは昨年10月。学会のホームページなどで町が小児科医を探していることを知り、埼玉県の小児医療センターから来た。「赴任前に会った町長の熱意に、地域で医師が必要とされていることを実感した」という。

 香住病院には16年前まで、常勤医師は14人いた。2004年に始まった新医師臨床研修制度=キーワード=を境に大きく減り始め、一時は5人まで落ち込んだ。危機感を抱いた町は10年度に地域医療対策室、14年度には医師を招くための特命課長(2年間)を相次いで設置した。町民のつてを頼り地元ゆかりの医師や、香住病院に勤務経験のある医師を訪ね、町の窮状を説明。海の幸、山の幸に恵まれた町の魅力をPRした。

 こうしたリクルート活動が奏功し、香住病院の医師数は常勤と嘱託を合わせて9人まで回復、診療所にも新たな医師が赴任した。


 ■自前の研修、若手育成 島根・雲南市

 雲南市立病院はここ数年、1カ月に1人のペースで研修医を受け入れている。研修医の受け入れ窓口となっているのは院内にある「地域医療人育成センター」。「地域に必要な医療人は地域で生み、育てる」を目的に8年前にできた。昨年12月に研修に来た地元出身の佐藤匡哉医師(26)は「この地域は畑仕事で足腰を痛める人が多い。将来は整形外科医として戻って来たい」と話す。

 研修医の受け入れだけではなく、大学医学部生の実習、中高生の医療体験、地元小学校での出前授業なども続けている。大谷順院長(55)はセンター開設当時を振り返り、「かつて34人いた常勤医師は17人に半減。当直医も2人から1人体制にせざるを得なくなった。もはや大学の医局だけに頼らず、自分たちで医療の種をまくしかないと考えた」と話す。その芽は徐々に実を結びつつある。病院で研修を受けた2人の医師が既に外科医として勤務。今年春には更に数人が勤務予定という。(藤本久格)


 ■支援へ住民、啓発活動 福井・高浜町

 福井県高浜町は09年に福井大医学部と協定を結び、町の総合病院と診療所に大学の寄付講座「地域プライマリケア講座」の拠点をつくった。拠点には大学の助教や講師を兼務する医師計2人が常駐。研修医たちは医師の指導を受けながら、1カ月~1年半の単位で外来診療などにあたる。昨年度は医学部生を含めると123人が診療所などで実習や研修をした。

 研修医らを支えているのが、寄付講座と同じ年に発足した町民による「たかはま地域医療サポーターの会」。約40人のメンバーが月1回集う談話会に研修医を招いて交流するとともに、「地域医療を守り育てる五か条」を作り、「気持ちよく診察を受け、励ましの言葉をかけましょう」などと呼びかけている。サポーターの会代表の今井宗雄さん(65)は「活動を通じて医師も働きやすい環境をつくりたい。地域で育てた若い医師が将来、町に残ってくれたらうれしい」と話す。


 ■待つだけでなく、働く環境整備を

 自治医科大の梶井英治・地域医療学センター長の話 地方の町や病院が知恵を絞って医師獲得を目指すのは、待っていては地域医療が守れないという厳しい現状があるからだ。地域に医師が定着するためには、行政と病院、住民がタッグを組んで医療従事者が働きやすい、働きたくなるような環境を築いていくことが必要だ。


 ◆キーワード

 <新医師臨床研修制度> 専門の診療科に偏りがちだった出身大学の医局中心の研修方法を改め、新たに導入された。研修医が自由に研修先を選べるようになったため、症例数が多く、設備が充実した都市部の病院に研修希望者が集中。研修医を確保できなくなり、人手不足になった大学が病院へ派遣していた医師を引き揚げるなど、地方の医師不足を招いたとの指摘がある。