群馬県内の周産期医療 体制確保へ本格議論 派遣と当直医減将来性は不透明

2017.02.28

《焦点(focus)》群馬県内の周産期医療 体制確保へ本格議論 派遣と当直医減将来性は不透明
2017.02.27 上毛新聞



 群馬県内で出産前後の周産期医療の体制を現状のまま維持できるか、不透明になっている。子育て中の女性産婦人科医が増え、泊まり勤務を担える医師が減っていることが背景にある。医師の派遣拠点の群馬大から県内外の病院に派遣する産婦人科医は4月から3人(約7%)減り、41人となる。将来への懸念を共有する県や県医師会、病院などは今月7日に検討部会を立ち上げ、周産期医療の在り方の議論を本格化させた。


◎最後のとりで

 「産科はどこもぎりぎりの人数で回している。1人減れば、疲弊する可能性がある」。県立小児医療センター(渋川市)の高木剛産科部長は本音を漏らす。同センターは県内のお産の“最後のとりで”に当たる総合周産期母子医療センターだが、泊まり込みの当直に入る常勤の医師が4人から3人に減る。当直だけを担当する医師が追加派遣されるため、診療に影響はないものの、残る医師は夜中の呼び出しに応じる待機回数が増えるなど負担は増す。

 群馬大の産婦人科医は新年度、結婚に伴う退職などで4人減り64人。同センターのほか、桐生厚生総合病院(桐生市)、さいたま赤十字病院(さいたま市)への派遣を1人ずつ減らして対応する。各病院は診療体制を維持できるが、現場の医師の負担は大きい。

 厚生労働省によると、人口10万人当たりの医師数は全国的に増加傾向にある中で産婦人科医は横ばい。一方、産婦人科医に占める女性の割合は50代で16・2%、20代では68・6%と若年ほど高くなる。

 ただ、出産後に復職しても日中の診療や手術のみを担当する日勤を選ぶことが多く、当直までできる人はまれだという。群馬大も、所属する産婦人科医の1割強の7人が日勤だ。

 女性医師の完全復帰を思いとどまらせる要因の一つに、産科医の過酷な勤務体制がある。当直明けで外来診療に入る24時間以上の連続勤務が常態化し、2日続けて当直に入るケースもあるという。ある産科医は「やりがいはあるが、子育て中の女性が働き続けられる環境ではない」と指摘。「24時間保育の確立や、しっかり休める体制を整備しなければ、産科医を目指す人がいなくなる」と訴える。


◎「連携が不可欠」

 群馬大医学部附属病院の産婦人科長の峯岸敬教授は、県内各地の病院に2~5人ずつ派遣する現体制で勤務を改善するには限界があるとし、「リスクの高い分娩(ぶんべん)には麻酔科医や小児科医との連携が不可欠。医療の質を確保するためにも、基幹病院への医療資源の重点化が必要」と強調する。

 通常分娩を担う地域の診療所も後継者が不足する。県や県医師会、病院などは「周産期母子医療センター検討部会」を設置し、周産期医療の将来像の議論を始めた。県医務課は「厳しい現実を直視し、より安全安心にお産ができる体制にするため議論を深めたい」としている。


【ズーム(Zoom)】地域理解を得ながら

 医師の臨床研修制度の変更に伴って2004年度以降、大学病院から県内の病院に派遣されていた医師が大量に引き揚げられた。館林厚生病院(館林市)や原町赤十字病院(東吾妻町)が出産部門を休止するなど多くの病院が診療を縮小し、社会問題となった。

 一方、群馬大医学部附属病院で手術を受けた患者が相次ぎ死亡した問題の影響で、同病院での臨床研修に内定した医学生は15年度に前年度の28人から14人に半減。16年度も16人と回復していない。医師は研修を受けた地域に定着する傾向がある。今後、産科や小児科、外科など幅広い診療科で医師不足が加速する懸念があり、医療体制の再編が議論に上る可能性がある。

 地域医療は住民の命や生活に直接関わるため、地域の理解を得ながら議論を進めることが望ましい。医師や一部の専門家だけで全てを決めるのではなく、幅広い県民の声を反映させ、あるべき医療体制を検討することが必要ではないだろうか。(報道部 宮村恵介)