■早稲田の堕落 官僚が年収1400万円の教授になれたワケ

2017.02.06

■早稲田の堕落 官僚が年収1400万円の教授になれたワケ

<あらゆる制約から解放され、本質を見据えた自由な批判精神が学問の独立の礎である>。建学の精神はかなぐり捨ててしまったのか──。早稲田大学が今、文部科学省の天下りあっせん問題で揺れている。違法な再就職を受け入れたばかりか、文科省の隠蔽工作にまで加担した。

「知らなかったでは済まされない。どうやったら伝統ある大学の教授に突然なれるんですか。やっていいことと悪いことがある」

 今回の問題を受けて、早稲田大名誉教授の大槻義彦氏は怒りが収まらない。文科省OBが大学に再就職する場合、事務職に就くことが多い。しかし、天下りのあっせんを受けていた吉田大輔・元高等教育局長(61)が得たポストは「教授」。年収1400万円という厚遇で迎え入れられていた。しかも、一連の過程で文科省と吉田氏と大学が口裏合わせをするという事態まで起きていた。

 大学内部からも批判の声が出ている。

「ここまで露骨な違法行為をしているとは思わなかった。まさか想定問答まで用意しているなんて……」(早大幹部)

 文科省の現役職員の一人は慌てふためいて言う。

「大変だよ。やりすぎだよね。あそこまでやるかっていう声が内部にはある。内閣官房から全省庁を調査しろ、と指示が下りている。事情聴取されちゃうよ」

 改めて、今回の文科省の天下りあっせん問題の経過をたどろう。

 国家公務員法は再就職について在職中の求職活動や省庁のあっせんを禁じているが、内閣府の再就職等監視委員会によれば、文科省が天下りをあっせんした疑いがあると指摘した事例は4年間で計38件。うち10件を違法と見なしている。

 早大のケースでは、人事課の現職職員が関与。同省人事課の職員は早大側に「まもなく退職する人がいる」と伝え、吉田氏の履歴書を送付した。吉田氏は2015年8月4日に文科省を退職。採用面接はそのわずか2日後だった。退職から2カ月後の10月1日に、早大教授に就任した。

局長に自ら履歴書を書かせて就職活動させるのはしのびない、というのがあっせんの理由らしい。その発想自体がおごりであり、あまりにも世間の感覚から離れている」(同省OB)

 実は、吉田氏は著作権法のエキスパートで、在職中も横浜国大へ教員として出向したこともある。

 元審議官の寺脇研・京都造形芸術大学教授はいぶかしがる。

「知的財産権はTPPでも重要になる。著作権の分野では引く手あまただっただろうに。なぜ、焦って早大に天下りしたのか」

 吉田氏が教授として就いたのは大学総合研究センター。早大のホームページには吉田氏の業務は「政策の動向の調査研究」「文科省の事業に関する大学への助言」と紹介されていた。

 教育ジャーナリストの後藤健夫氏は、そこに文科省の思惑を読み取ったという。

「(吉田氏の業務紹介は)文科省と大学のパイプ役に来たと書いているも同然。文科省はいま大学教育や高校教育など制度改革の転換期にある。文科省の政策意図に誘導するため、そのコミュニケーションのツールとして吉田氏を送り込んだと見るべきです。大学をコントロールするために、文科省は私学助成などカネをちらつかせるやり方です」

 そんな意図があったかどうかは不明だが、「学問の独立」や「在野精神」を謳う早大でも、抗しがたい「うまみ」があるという。

 文科省から早大に支出した私学助成金の額は、15年度が90億2179万9千円。前年の14年度が86億1118万7千円に上った。全国でも一、二を争う助成額だ。

「受け取っている補助金の額からしたら、早稲田は天下りを一人雇うことくらい、痛くもかゆくもないんじゃないでしょうか」(別の私立大学教員)

 ある大学関係者は話す。

「一般に、大学側としては補助金を申請する際、文科省OBがいれば審査がスムーズにいくのではないかという期待がある。資料から文科省の政策の方向性を読み取ってもらい、方向性に沿った研究をすれば資金が得られやすいという考えも働く。元キャリア官僚がいるほうが圧倒的に有利でしょう。自分で資料を作っていたんですから」

ポスト。吉田氏にとっても悪い話ではなかったのだろう。

「やはり名誉。名も知れぬ大学よりは、早稲田大学教授というネームバリューは使い勝手がいい。本を出しませんか、テレビに出ませんかといった引きがあるでしょう。黙っていても学生が集まる大学だから、雑務もそれほど多くはないと思います」(大学関係者)

 冒頭の大槻氏の怒りは、こうした背景を踏まえてのこと。いくら大学に予算がほしいからといって、教授として採用していいのか、早大も足元を見られたものだと言いたいのだ。

 情けないのは、監視委のヒアリング調査に対し、早大側は文科省の人事課の書いたシナリオに沿ってウソの回答をしたこと。本当は、文科省側から早大へ吉田氏の再就職を要求したにもかかわらず、逆に早大側が求めたように説明するよう指示されていた。

「人事戦略上、高等教育行政に詳しい人材を求めたいと考えた」として、以前、早大に在籍した文科省OBに仲介を依頼。吉田氏を紹介され、退職翌日に連絡を取ったという虚偽のシナリオが「想定問答」に書かれていた。もちろん、この文科省OBはまったく関わっていない。

 1月20日、早大の鎌田薫総長は記者会見で釈明した。

「形式的な調査なので内容に沿った供述をしてほしいと文科省から依頼があったので、(早大の人事担当者は)最初は意向に沿った回答をした。文科省が違法な指導をすることはあり得ないと思っていた」

 まるで被害者のようなふるまいで、「不適切な利益供与・便宜供与を求めたこともなければ、受けたこともない」と強調した。だが、早大の関係者の目は厳しい。

「行政手腕のある人に来てもらうメリットは実際あるのでしょう。でも、ルール違反を犯しては、文科省と癒着して受け入れたと勘繰られても仕方ない」





■文科省 大学天下り133人/09年から 支配の実態 浮き彫り


 第1次安倍政権下の国家公務員法改悪(2007年)による官僚の天下り(再就職)原則自由化を受け、文部科学省から大学に天下りした官僚の総数が、のべ133人に上ることが31日までに分かりました。同改悪法施行(08年12月)直後の09年1月から16年9月末までの総計で、日本共産党の宮本岳志衆院議員の要求に応じて同省が資料を提出しました。

 内訳は国公立大19人、私立大114人で、天下り先は計102大学に上ります。天下り後の役職は、学長と副学長が8人、事務局長などが42人、理事、参与、顧問などが24人、教授、特任教授、講師などが42人でした。大学への補助金などを配分する権限を持つ同省からは、現役の官僚が241人も国公立大に出向しており、要職への天下りも含め、人的にも同省が大学を半ば支配する実態が浮き彫りになりました。

 あっせんが疑われる離職後2カ月以内の再就職者は89人です。うち40人は離職翌日に再就職しており、離職当日の再就職も1人います。今回、違法な天下りが発覚して早稲田大を辞職した吉田大輔元高等教育局長は、同局長在職中の15年8月、文科省の人事課を通じて自身の履歴書を同大に送り、離職2日後に面接を受け、2カ月後に天下りしました。

 宮本岳志議員の話 天下り官僚は副学長や事務局長など重要ポストを占めている。天下りは再就職先の確保とともに、文科省いいなりの大学づくりを狙うものだ。文科省はグローバル競争に打ち勝つ人材育成を掲げて、大学の機能強化の名で国策に沿う大学づくりを進めてきた。その方針を大学に持ち込んでいるのが天下り官僚であり、実態の徹底究明が必要だ。