<414日ぶりの産声 遠軽厚生病院分娩再開>下*医師確保*多様な策 都会にPR

2016.12.06

<414日ぶりの産声 遠軽厚生病院分娩再開>下*医師確保*多様な策 都会にPR
2016.12.03 北海道新聞


 「安心して出産できる地域にするにはあと2人が必要。少しでも興味を持った先生は、ぜひ連絡してほしい」

*週刊文春に広告

 11月16日、遠軽町の佐々木修一町長は東京都内の文芸春秋本社で熱弁を振るっていた。記者を前に、産婦人科医が不足している窮状について1時間にわたり訴え、医師の募集を呼び掛けた。22日発売の週刊文春にインタビュー形式の見開き広告を出すためだ。

 遠紋地域の基幹病院である遠軽厚生病院は昨年10月、産婦人科医の不在により出産の受け入れを休止。常勤医1人を確保して今年11月に分娩(ぶんべん)を再開したが、以前の常勤医3人体制と比べ、厳しい状況は続く。

 昨年10月まで、遠軽厚生病院に産婦人科医2人を派遣していた旭川医大も、産婦人科医が不足したままで、再び遠軽に医師を送る見通しは立っていない。

 旭医大の産婦人科医は産休中の医師などを含め17人。このほか、稚内や名寄など道内の関連病院に計23人を派遣している。だが、大学病院と関連病院を合わせた医師数は10年余り前に比べ15人ほど少ない。

 原因は2004年に始まった臨床研修制度だ。新人医師が研修先の病院を自由に選べるようになり、大学に残る医師が減少。旭医大産婦人科学講座の千石一雄教授(62)は「地域医療を守るのは大きな使命。遠軽に常勤医を送りたいが、大学病院の医師が増えない限り難しい」と話す。

 道は「北海道周産期医療体制整備計画」で遠軽厚生病院を「優先的に産婦人科医師の確保を図る」病院と位置付けるが、動きは鈍い。

 遠紋8市町村を管轄する紋別保健所は遠軽厚生病院の分娩休止を受け、今年5月に関係する自治体や消防、病院に呼びかけて会議を開いた。だが、各機関が現状を報告しただけで、対策にまで議論は及ばなかったという。ある自治体の医療担当者は「本来は道が体制整備に向け主導的な役割を果たすべきだ」と指摘する。

*国の制度化期待

 一方、遠軽町は湧別町、佐呂間町、遠軽厚生病院と連携し、多様な策を講じる。遠軽厚生病院産婦人科の石川雅嗣医師(59)が常勤医として着任するきっかけになったのが、全国の産婦人科医に送った手紙だ。同様の手紙を今年9月末にも、道外の大学病院や公立病院など計252医療施設の医師約2千人に送った。ただ、医師1人から問い合わせがあったのみで状況は厳しい。このほか、東京都内の総合病院にも医師派遣を要請している。

 12月21日から1週間、首都圏のJR京浜東北線の列車(10両編成)の中刷り広告などを医師募集のPRで埋める。21日には都内で在京の報道機関を対象に記者会見を開く。週刊文春の広告も、こうした対策の一環だ。

 「地方自治体のみでは地域の医師確保に限界がある」と考える佐々木町長は、首都圏での活動の狙いをこう語る。「地方の医師不足の現状を都会の人にアピールする。遠紋地域の思いを伝え、周産期医療の安定に向けた国の制度づくりにつながるよう世論を盛り上げたい」