~内閣府「公立病院改革の経済・財政効果」分析・批判~2016・9・23

2016.09.24

~内閣府「公立病院改革の経済・財政効果」分析・批判~2016・9・23
(ワタキューメディカルニュース<9月号>に寄稿)

 

監査法人長隆事務所

代表社員 長 隆

 

 内閣府は2016年8月16日、近年の公立病院改革による経営改善効果を個別病院の経営データによって検証するため、政策課題分析の第10回「公立病院改革の経済・財政効果について」を公表した。

総務省の「公立病院経営改革プラン」の取り組みがあった期間(2007~2013年度)を中心に、有識者の研究会(座長=池上直己・慶大名誉教授)が構成された。 

株式会社三菱総合研究所に分析作業を委託し 有識者研究会が 意見を述べた。
研究会事務局は 三菱総合研究所であった。
 

 最新のビッグデータを入手できる内閣府(事務局・三菱総研)にも拘らず、分析データは古い。

2017年度からの改革に適切、有用な検証であったとはいえない。

2014年度から公立病院の会計について新会計基準に移行していることから、民間病院との比較が容易にできたはずである。
計算上の利益が多額に計上されることになった事を
ふまえての 分析こそ不可欠であった。



 民間病院の経営状況に係る統計も参考にしながら、できる限り類似の機能を果たしている民間病院との経営比較を行い、当該公立病院の果たす役割を分析し、民間病院並みの効率化を目指した取り組みを勧告すべきであった。

 地方公営企業会計制度について、1966年以来、約40年ぶりに大幅な改正が行われ、2014年度の予算および実績から適用されることになった結果について、十分な検証がなされていない。

 

 今回の会計制度改正は、地方独立行政法人の会計制度の導入及び地方公会計改革の推進、地域主権改革の推進、公営企業の抜本改革の推進が行われていることを背景とし、地方公営企業会計制度は地方公営企業会計についても企業会計基準との適合性を図るという点が特徴となっている点に注目すべきであった。


企業会計基準が頻繁に見直され進展していく中で、地方公営企業会計制度は1966年以来大きな改正がなされておらず、両者の乖離が大きくなり、相互比較可能性が損なわれていたことを踏まえた分析になっていない。新地方公営企業会計制度は改正がなされたことの認識が全くないといわざるを得ない。

 

 

分析結果が誤解を与える箇所

 

「地方公営企業法の全部適用で経営改善を検討することも有用である。」

⇒(正の効果をもたらすと断定すべきではなかった)

 新公立病院改革ガイドラインでは次の通り示されている。

 地方公営企業法(1952年法律第292号)の全部適用は、同法第2条第3項の規定により、病院事業に対し、財務適用のみならず、同法の規定の全部を適用するものである。これにより、事業管理者に対し、人事・予算等に係る権限が付与され、より自律的な経営が可能となることが期待されるものである。

 ただし、地方公営企業法の全部適用については、比較的取り組みやすい反面、経営の自由度拡大の範囲は、地方独立行政法人化に比べて限定的であり、また、制度運用上、事業管理者の実質的な権限と責任の明確化を図らなければ、民間的経営手法の導入が不徹底に終わる可能性がある。

 

 同法の全部適用によって所期の効果が達成されない場合には、地方独立行政法人化など、更なる経営形態の見直しに向け直ちに取り組むことが適当である。

 

 

<結論>

①資金繰り状況を明確にし、経営分析すべきである。キャッシュ・フロー計算書の作成が義務化されたことを重視すべきである。
会計操作のできない数値で 比較しなければ 努力している病院は 報われない。

 今回の地方公営企業会計制度の改正による財務諸表への影響は非常に多岐に渡る。改正基準に基づき作成された財務諸表は概して負債が増加し、資産が減少する傾向がある。財政健全化法や地方財政法に定められる資金不足比率を悪化させることになる。

 

②日本海総合病院(山形県)の分析ケースを参考までに提示する

 損益計算書に対する影響を見る。27年度の医業収益は181億818万円、医業費用は171億9,845万円であり、医業収支は9億973万円であった。新会計基準では、引当金繰り入れ(約9億円)が計上されることになる。そして、みなし償却制度の廃止により減価償却費が数億円増加する。

 貸借対照表について、資産356億2,867万円、負債198億2,639万円、純資産158億228万円である。新会計基準が適用されると、(1)償却資産の取得に伴い交付された補助金・一般会計負担金等(11億6,823万円)が「長期前受金」として、純資産から負債に振り替えられ、(2)退職給付引当等の引当て義務化により、約50億円が負債計上されることになる(ただし、日本海病院ではすでに負債計上済み)。なお、退職給付引当金は、特に小規模団体では一般会計等が全額負担する傾向が見られるが、その場合は、引当不要である。

 この結果として、資本が減り、負債が大幅に増えて内容が悪化することになる。さらに、自治体病院の場合、このほかに借入資本金が負債計上されることになる(地方自治体の一般会計からの「資本提供」とみなされてきたが、経費のどの部分が税金で負担されているのかを明らかにする必要があるため負債計上されることになる)。

一部の自治体病院のバランスシートは、民間であれば経営破綻しかねない債務超過に陥ることが想定される。
という厳しい状況を 指摘しない 分析となっており
改革推進を妨げる報告と言わざるを得ない。
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公立病院改革ガイドライン(総務省)が 期待していた
民間病院と比較した財務情報の入手と比較分析がまったく研究されていない。
経営形態の見直しについては 全部適用が民間的経営手法の導入が不徹底になるとの警告と真逆の報告となっている。