病院 乏しい公金意識 裏口座 「現場の常識」慣例化

2016.08.29

 

病院 乏しい公金意識 裏口座 「現場の常識」慣例化
2016.08.26 読売新聞



 大阪府内の医療機関で、救急医療体制の充実のために自治体から支払われた公金が、病院会計外の「裏口座」にプールされていた問題が今年3~8月に相次いで発覚している。内部調査では、これらの金を、医師らが懇親会費などに使っていたことが判明。こうした公金の扱い方は、「医療現場の常識」として慣例化していた面もあり、意識の改善が求められる。

 「脈々と受け継がれてきたもので、(裏口座ができた)経緯はわからない」

 大阪大医学部付属病院(大阪府吹田市)の高度救命救急センターで「裏口座」の名義人になっていたセンター長は、病院側の内部調査に、そう答えたという。

 内部調査では、診療科ごとに医師らの積立金などを診療科や医師個人名義の口座で管理し、「医局費」と呼んで、懇親会費や慶弔費に使われていたことがわかっている。

 内部調査にあたった担当者は「医局費は『医局のためのお金』という意識が強く、いったん公金を入れると使い道について問題意識を持ちにくい」と明かす。府内のある総合病院の幹部は、「診療科で自由に使えるお金が欲しいという事情に加え、製薬会社が支払う治験費のような診療科の努力で得た収入を一律に病院会計に入れてしまうと士気が下がりかねない」と説明する。

 今回、裏口座の存在が明らかになった大阪府立病院機構では、府が運営主体だった1993年、ヤミ研究費の問題が表面化している。製薬会社から診療科や医師個人の口座に入金された委託研究費が出張費や飲食費などに支出され、大阪国税局は「医師の個人所得にあたる」として約1800万円を追徴課税していた。しかし、今回の問題では、府立病院機構が運営する2病院の裏口座の多くは、10年以上前から存在していたことが明らかになっている。

 問題が発覚した医療機関はいずれも「不適切な会計処理」と結論づけたが、自治体側は指導には及び腰だ。

 ある自治体の担当者は「公金の取り扱いとして適切か不適切かの線引きは各病院が決めるべきだ」としたうえで、「(救急医療体制の充実のために)頑張ってくれている医師への謝礼のようなもの。今回の件で協力が得られなくなると困る」と打ち明ける。

 心臓外科医の南淵(なぶち)明宏・昭和大教授は「公金を病院内の懇親会費に使うなどということは、我々からすれば、あり得ないこと。特権意識を持ちがちな医師は、今回の問題を機に、襟を正すべきだ」と話している。

 ◆阪大副学長「深くおわび」

 大阪大医学部付属病院で、自治体が救急医療への協力費として支払った計約5000万円が医師個人名義の「裏口座」にプールされていた問題で、運営する国立大学法人・大阪大は26日、吹田市内で記者会見し、八木康史副学長が「誠に遺憾で、深くおわびする」と謝罪した。

 裏口座は、高度救命救急センターで1口座(約4340万円)、総合周産期母子医療センターで2口座(現在、計約600万円)で、大阪市や府が救急搬送の受け入れ実績に応じて支払った協力金などが入っていた。このうち、高度救命救急センターのセンター長名義の口座では「医局費」も一緒に管理されていた。

 鬼沢佳弘理事は会見で、「公的な金を受け入れることへの認識が希薄で、安易な経理が行われていた」と述べ、公金の取り扱い方法などに関する指針を作り、再発防止に取り組む考えを明らかにした。


 〈病院「裏口座」問題〉

 今年3月、大阪府立急性期・総合医療センター(大阪市)の救急診療科で、大阪市が支払った救急救命士への指導料が四つの個人口座にプールされていたことが発覚。運営する地方独立行政法人・府立病院機構の調査で、さらに同センターと府立母子保健総合医療センター(和泉市)の4診療科で、妊婦らの救急搬送の受け入れ実績に応じて府などが支払った「協力金」が同様に診療科内にプールされていた。近畿大医学部付属病院(大阪狭山市)や大阪大医学部付属病院でも「裏口座」が明らかになっている。