2016参院選 焦点:6)地域医療 産科休止、広がる道内 /北海道

2016.07.11

2016参院選 焦点:6)地域医療 産科休止、広がる道内 /北海道
2016.07.08 北海道新聞



 積丹町の主婦松尾桃子さん(24)は、いま妊娠4カ月。毎月1回、車を運転して約50キロ離れた小樽市内の産科診療所に通っている。お産が近くなる冬には、毎週通わなければいけない。「1歳7カ月の長男を車に乗せて雪道を走るのはゆるくない。何かあれば札幌の病院に回されることになり、早く小樽協会病院のお産を再開してほしい」と願っている。

 小樽協会病院は、高度な医療が提供できると道が認定した後志地方で唯一の「地域周産期母子医療センター」。だが産婦人科医4人のうち1人が昨年6月に退職し、「安全な分娩(ぶんべん)体制が確保できない」として翌月からお産の取り扱いを休止した。残る3人の産婦人科医も今年9月までに全員退職する見通しだ。小樽市など6市町村と医師会などは6月に「北後志周産期医療協議会」を設立。年間約1億円にのぼる周産期部門の赤字補填(ほてん)も検討しながら、小樽協会病院での分娩(ぶんべん)再開を目指している。

 道内で、出産が可能な医療機関が減っている。道地域医療課によると、2005年の119カ所(39市町)が、昨年10月は95カ所(30市町)になった。

 道内で30施設が指定されている「地域周産期母子医療センター」では、小樽協会と遠軽厚生の両病院のほか、深川市立病院が昨年4月から出産の取り扱いを休止。滝川市立病院も02年からやめている。道立江差病院と広域紋別病院は、出産の取り扱いを第2子からにしている。いずれも医師不足が原因だ。

 04年、新卒医師に2年間の臨床研修が必修化され、自由に病院を選べることになった。大学病院に残る医師が減り、地域の病院に派遣していた医師を引き揚げざるを得なくなっていることが拍車をかけている。

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 オホーツク地方北部の紋別市など8市町村にまたがる「遠紋2次医療圏」でも昨年10月以来、初産に対応してくれる病院がない。遠軽厚生病院(遠軽町)で、産婦人科の常勤医師3人が相次いで退職したためだ。

 紋別市で14年度に生まれた158人の子どものうち、3分の2超の108人が遠軽厚生病院で産声を上げた。地元の広域紋別病院は産婦人科の常勤医師が1人だけで、初産などには対応していない。遠軽厚生病院の受け入れ停止により、紋別から約1時間半かかる北見市や名寄市、さらに約3時間かかる旭川市まで出かける妊婦もいるという。

 紋別市や周辺自治体は、出産間近の妊婦が病院の近くに宿泊できるよう、5万~10万円の出産支援金などを新設した。遠軽町は旭川医大生を対象に、遠軽厚生病院で臨床研修を行うことを条件に奨学金制度を始めたほか、佐呂間町や湧別町とともに中京圏に医師募集広告を出すなど、医師確保に懸命だ。紋別市の大野貴光・保健福祉部参事は「人口減少対策を語る上で、周産期医療の充実は外せない。国には医師の偏在をただす方策を求めたい」と訴える。(佐久間泰雄、宮永敏明)=おわり