参院選おおいた:問われる課題/4 地域医療 「無医」拡大に懸念 県内38地区、市街地で人材不足も /大分

2016.07.08

2016参院選おおいた:問われる課題/4 地域医療 「無医」拡大に懸念 県内38地区、市街地で人材不足も /大分
2016.07.06 毎日新聞



 「血圧が高いね。塩分は控えめにね」。優しい声に高齢の男性患者がうなずいた。3月末、津久見市の離島・保戸島の診療所で通算5年勤務した医師、内倉洋三さん(77)。診察の合間、待合室で名残惜しそうに患者と会話を楽しんだ。

 別府市の開業医だったが、2005年に保戸島の民間診療所が閉鎖されると、翌年から赴任した。島の人口821人で高齢化率は約63%。島民は内倉さんに信頼を寄せた。

 だが勤務は過酷だった。別府から津久見まで車で通い、船で島に渡る。当初は週4日勤務で1日50人診療し、往診もした。急斜面の階段で悪化した腰をかばい、膝にサポーターをして歩いた。

 3月末で内倉さんは退任し、佐伯市の内科医が4月に着任した。市は「今回は運良く後任が見つかったが、離島を希望する医師はほとんどいない。求人情報で募集することも考えた」と明かす。

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 県の人口10万人当たりの医師数は260人(14年末現在)で、全国平均の233人を上回るが、その半数は大分、別府両市に集中。他方、住民が50人以上いるのに半径4キロ以内に医療機関がない「無医地区」は、県内13市町村の38地区もある。

 このため県は大分大医学部で07年度から、「卒業後に離島を含むへき地で一定期間勤務する」ことを条件に、修学資金を貸与する地域枠制度(13人)を設けた。それでも医学生の都会志向は強く、津久見市の石田真一・健康推進課参事は「へき地医療には抜本策が必要」と願う。

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 人口約4万人の臼杵市。中核病院の医師会立コスモス病院は202床あるが、医師数は11人。10年後には市の高齢化率が40%を突破するが、市街地でも医療スタッフ不足への不安が尽きない。

 そこで舛友一洋副院長(53)は「情報を共有し、スマートな医療体制を築く」べきだと発案。08年に稼働した「うすき石仏ねっと」はICT(情報通信技術)を活用し、市内のほとんどの病院、歯科医、薬局、介護施設などを結び、患者の情報を共有して医療サービスを効率化している。

 診療情報の提供に同意した市民に「石仏カード」を交付。各施設が症状などの情報を共有し、検査や投薬のだぶりを防ぐ。それまで飲んでいた薬の情報などから、初めての医師でも病状を把握した上で治療できるという。

 6月末までに市民の2割超の約9500人が登録した。中野五郎市長は「数人しかいない集落が今後増えるはずで、地域は連携こそ必要な時代。行政は連携を支える人材の育成に努めるべきだ」と語る。【柳瀬成一郎】=つづく

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 ◇各党の公約は?

 地域医療について、自民は「医師の診療科目別、地域別の偏在是正で人材を確保し、適正配置を図る」。公明は「介護事業所などのICT化で業務の効率化、情報共有化を進める」とする。

 民進は「医療職間の連携を強化。看護師、薬剤師の処遇を改善」を挙げる。

 共産は「高すぎる医療費の窓口負担軽減を進める」、社民は「医療従事者増と、医療分野にかかる消費税率をゼロにする」。おおさか維新は「医療費の自己負担割合で年齢ではなく、所得に応じて差を設ける」とする。