社説 米沢市「精神科」再編統合 官民連携で新たな道筋

2016.05.31

社説 米沢市「精神科」再編統合 官民連携で新たな道筋
2016.05.30 山形新聞



 米沢市立病院神経・精神科の閉鎖問題の着地点が見えてきた。市の協力要請に応え、社会医療法人公徳会(南陽市)が米沢市内への新病院開設方針を表明し、手続きを開始した。5カ月余り前に明るみに出た同問題は、医師確保という重い課題を改めて行政側に突きつけた。同時に、地域医療体制の維持に向けた官民連携の新たな道筋が示されたと言える。

 問題は昨年12月、病院側が市議会で説明して表面化した。山形大医学部から派遣されていた常勤医師3人のうち、2人が翌年3月末での退職を申し出たことが理由だった。市は代替医師の派遣を大学に要請したものの、医師不足のため困難とされた。中川勝市長は県などと対応を模索。3月に国の特例制度を活用した民間との病床の再編統合を打ち出した。

 県内初の事例となる今回の再編統合は、市立病院の病床を民間に移し、病院を新設する枠組みだ。県内の精神病床数は医療法に基づく県の医療計画上の基準を超え、病院開設は原則できない。国は公立と民間病院の再編の場合、統合後の減床を条件に開設を認める特例を設けており、市などが目指すのはこの適用だ。

 計画では、新病院は、廃止となる市立病院の70床と公徳会が経営する佐藤病院(南陽市)の38床を移して108床とする。佐藤病院の病棟廃止などで統合後の病床数を全体で16減らし、特例の要件をクリアする考え。市と公徳会の整備計画は県医療審議会で妥当とされ、県は国に特例承認を申請した。7月までには同意が得られる見込みで、公徳会は県の許可を経て来春の開院を予定する。

 今回、露呈した公立病院の医師確保の難しさは県全体の課題だ。厚生労働省の統計によると、県内の人口10万人当たりの医師数は2014年末時点で230・4人。2年前より4・9人増加したものの、全国平均の244・9を下回る。地域別では村山と庄内が増えた一方で、置賜、最上は減少した。都市部への集中に伴う医師の偏在は深刻な状況が続く。

 県内の公立病院の多くは山形大からの医師供給に頼っている。診療科を維持するには、複数の常勤医の安定的な確保が不可欠だからだ。その意味で同大の役割と責任は大きい。県は昨年、医師確保対策に総合的に取り組むため県地域医療支援センターを設置した。山形大や関係機関との連携の成果が求められる。

 新病院整備で公徳会は、グループ内で医師を融通するほか、新たな医師の確保に見通しが付いたとする。一般に勤務医の収入は公立より民間の方が高いとされる。ただ、公徳会の佐藤忠宏理事長は単に収入の問題ではなく、スキルアップできる環境が重要とする。若い医師が多くの症例を経験し、より高度な資格を得る機会があるか、ということだ。この点で公立病院では限界があり、医師確保に向け、官民連携の必要性が浮かび上がる。

 昨年12月に就任し、半年足らずで精神科問題にめどを付けた中川市長だが、市立病院は一部が築50年を経過し、建て替えという課題に直面している。市長は精神科以外でも、市内の民間病院との連携や機能分担を模索する方針だ。県内の先行例となるよう、その実現と実効性ある中身に期待したい。