特報インサイドみやざき/地域医療計画/病床再編 道険しく/25年度推計/地域医療構想/病院間の調整不可欠

2016.04.21

 

 特報インサイドみやざき/地域医療計画/病床再編 道険しく/25年度推計/地域医療構想/病院間の調整不可欠/機能別に過不足混在 2016.04.18 宮崎日日新聞  

  団塊の世代が後期高齢者となる2025年を見据え、医療提供体制を見直すために都道府県がまとめる「地域医療構想」。高齢化や人口減少に伴い変化する将来の医療需要を示し、病床機能の転換などを促すもので、県は本年度半ばの策定を目指す。ただ、構想に反映させる厚生労働省の推計で、本県の25年度の必要病床数と、県が現状で把握している直近の14年度の報告数を機能別に比べると「不足」と「過剰」が混在しており、医療機関の判断に委ねられる病床再編は難航しそうだ。  厚労省の推計は、病床機能を救命救急や集中治療に対応する「高度急性期」、それに次いで緊急性の高い「急性期」、リハビリや在宅復帰に向けた「回復期」、長期療養向けの「慢性期」の四つに分類。13年度の性・年齢階級別の入院受療率に、将来の予想人口を掛けて算出している。  本県は、宮崎東諸県や延岡西臼杵など2次医療圏(7地域)ごとに必要病床数が提示されている。慢性期のみ算定方法が異なる3パターンあるが、いずれも推計値は大きく変わらない。このうち「パターンB」では、医療機関の患者数を基に算出した場合、県全体の25年度の必要病床数は1万888・8床なのに対し、14年度の報告数は1万5163床と、病床が過剰になる見通しだ。  必要病床数と報告数をそれぞれ機能別に見ると、高度急性期は998・7床と788床、回復期は4016・4床と1504床で、現状のままだと不足することになる。一方、急性期は3355・4床と8534床、慢性期は2518・4床と3911床で、こちらは過剰になる。報告数のうち426床は機能別について無回答だった。「2次医療圏別に見ても回復期の不足、急性期の過剰は県全体と同じ傾向。過剰な急性期から回復期への機能転換など、およそ10年後の医療需要を見込んで調整しないといけない」。構想をまとめる県医療薬務課の上田浩司主幹は指摘する。  構想は策定後、2次医療圏別に医療関係者らでつくる「構想調整会議」で議論する。上田主幹は「構想は将来の医療提供体制の在り方を地域で考えるためのもの。さまざまな議論があっても最終的にまとまると考えている」と話す。  宮崎市、国富、綾町の宮崎東諸県。地域医療構想に反映させる厚生労働省の推計(慢性期はパターンBで算定)によると、医療機関の患者数をベースに算出した2025年度の必要病床数はリハビリや在宅復帰に向けた「回復期」が1615・8床で、14年度の604床では約千床が不足する。逆に14年度に3131床の「急性期」は25年度に1601・9床が必要とされ、このままでは余剰が生まれかねない。  16年度の診療報酬改定では、急性期病棟の認定基準について重症患者の割合を「15%以上」から「25%以上」と厳しくする一方、急性期を経た患者に在宅復帰に向けた医療を提供する地域包括ケア病棟の充実に診療報酬が厚く配分されている。「急性期が減り、回復期が増える流れになる」。宮崎市郡医師会の川名隆司会長は見通す。  ただ、各病院が一斉に回復期に移行すれば、急性期が足りなくなる恐れも。「ばらばらな動きでは、将来の医療需要に的確に対応できない」と川名会長。「(県内の2次医療圏ごとにつくる)構想調整会議で各医療機関の将来のビジョンを把握し、調整する必要がある」と指摘する。    □    

 ■  民間病院からは構想への不安の声も上がる。宮崎東諸県と同様、25年度の必要病床数と現状を比べると、回復期が不足、急性期が過剰となっている都城北諸県(都城市、三股町)。急性期病床243床を含む全343床がある同市早鈴町の藤元総合病院では、患者が同市、三股、高原町など県内のみならず、鹿児島県の曽於市や志布志市といった大隅半島に及ぶ。  木原浩一院長は「(同病院の)医療需要は県境をまたいでおり、行政区ではくくれない。構想で示す将来の医療機能が現実と懸け離れないようにしてほしい」と、地域の実情を色濃く反映した策定を望む。  仮に実態に合わない構想に沿って計画が進めば、医療機能の変更を余儀なくされ、入院を制限するといった問題が出てくることが懸念される。そうなると、従来の高度医療を提供できなくなる可能性があるほか、医師確保につながる研修医の受け入れも困難になる。木原院長は「地域医療を守れるかどうかに関わる問題。医療機能の再編は容易ではない」と話す。        

 ■  9日、宮崎市の県医師会館であった在宅医療研修会。「ベッド数が減れば在宅医療や訪問看護が重要になる」。主催した県医師会在宅医療協議会の相澤潔会長は地域医療構想に触れ、参加した看護師や医師約50人に呼び掛けた。  県内の在宅医療は「医師や看護師の数も含めて充実しているとはいえない状況」(相澤会長)。そんな中、研修会では人工呼吸器の使用法や口腔(こうくう)ケアなどについて実践的に学んだ。  相澤会長は「患者が病院ではなく家で過ごしたいのは当たり前。24時間の訪問看護のほか、容体が急変したら医師が駆け付けるなど、自宅で入院しているような体制を整えないといけない」と話す。さらに「いざというときに患者を受け入れられる病院が近くにあることや、家族の理解も求められる」と力を込める。  本年度半ばまでにまとめる構想の策定委員を務める県医師会の富田雄二副会長は「治す医療から高齢者をケアする医療へと変化していく。構想は病床の削減方針ではなく、将来の医療需要を示し、過不足なく医療を提供する体制を地域別に構築するためにある」と強調。「(7地域の)構想調整会議には全ての病院、住民代表も参加し、推計を冷静に見て、地域の実情に応じた医療体制の在り方を考えることが大切」と提言する。