佐賀県/病院存続 伊万里市迷走 移転打診から1年 長崎・松浦市と競合

2016.03.22

佐賀県/病院存続 伊万里市迷走 移転打診から1年 長崎・松浦市と競合 市民病院跡要望 現地建て替えに 住民困惑、近く結論
2016.03.20 西日本新聞


 地域医療機能推進機構(東京)が長崎県松浦市との県境近くで運営する「伊万里松浦病院」の移転問題は、機構が伊万里市中心部の市民病院跡地への移転を市に打診して1年が過ぎた。だが、跡地移転は医師会が猛反発して壁となり、この間、松浦市も誘致に参戦。引き留めたい伊万里市の塚部芳和市長は今月になって「現地建て替え」を要望したが、機構は当初から否定している。市の迷走に、市内存続を求めてきた市議会や住民には戸惑いも広がる。 (杉野斗志彦)


 「市長の言葉には失望した。努力が全く見えない」。9日の市議会一般質問で副島明市議は塚部市長にこうかみついた。機構側が市民病院跡地移転で示した条件の「医師会の説得」について、市長が記者会見で「今後、交渉しない」と発言。事実上の誘致断念とも受け取れたからだ。

 さらに市長は「現地建て替えを要望する」と表明。議会には寝耳に水だった。副島市議は「(機構が望まない)現地建て替えの可能性はない。市長は間違っている」と訴えた。

 本会議後、市長は「現地建て替えは地元も望んでいる。1、2%でも可能性があれば要望する」と強調。要望書は市民の署名を添えて10日、機構に届けた。

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 伊万里松浦病院は1946年開設で病床数112、12診療科目。機構は老朽化などを理由に「人口減が進む現地建て替えは赤字が見込まれる」として市民病院跡地への移転を望んだ。

 しかし、跡地は、市民病院と有田町の有田共立病院との統廃合で両市町の中間に2012年に新設した「伊万里有田共立病院」から約3キロしか離れていない。

 共立病院を地域医療の中核と位置付ける医師会は「何のための統廃合だったのか。行政の道理に合わないばかりか、競合すれば経営悪化を招き、つけは住民に回る」と反対を貫く。

 一方の松浦市は、かつての松浦市民病院が医師不足で診療所に縮小。救急救命の医療体制への不安から誘致に本腰を入れる。

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 今年2月には「このままでは松浦市に転出か」という事態となり、伊万里市は市民病院跡地の無償貸与を申し出たが、松浦市も土地の無償貸与で対抗。土壇場になって、伊万里市が実現可能性が低い「現地建て替え」を求めたのは、それだけ追い詰められたからに他ならない。

 住民や市議からは「松浦市が誘致の検討を始めた昨年秋までに、市はもっと有効な手を打てなかったのか」との声が聞かれる。

 市内存続の署名を集めた区長会長の一人は「移転先は市民病院跡地だと思って署名した人も多いのに」と釈然としない様子だ。

 伊万里か、松浦か-。機構側は近く結論を出すとみられる。