震災5年 石巻で訪問診療 三重大卒の西さん 「地域全体みる医師に」=三重

2016.03.13

震災5年 石巻で訪問診療 三重大卒の西さん 「地域全体みる医師に」=三重
2016.03.12 



 東日本大震災最大の被災地・宮城県石巻市で、三重大医学部卒の西俊祐さん(32)が奮闘している。西さんは市立病院開成仮診療所の研修医で、昨年4月、この街に移り住んだ。「何か被災者の役に立つことができないか」。そんな思いを胸に仮設住宅を回る日々が続く。(竹田章紘)

 「痛みはどうですか」。2月下旬、訪問診療先で関節リウマチなどを患う女性(80)に声をかけた。女性は起き上がるのもやっとの状態。西さんは「無理しなくていいからね」と語りかけ、女性が痛みを訴えた左腕を優しくさすり始めた。

 石巻市の死者・行方不明者は約4000人。診療所は、長野県の佐久総合病院で地域医療に取り組んできた医師・長純一さん(49)が市に掛け合い、被災者の健康を支える拠点として2012年5月に開設された。医師は所長の長さんら11人が在籍している。

 西さんは大阪市出身で、三重大在学中に1年休学。中国やインドなどアジアを放浪し、ネパールでは地域医療の普及に取り組む日本人医師と出会った。震災後は津駅前で募金活動をしたり支援物資を仕分けしたりするなどのボランティア活動に取り組んだ。

 卒業後は名古屋市内の病院で働いていたが、13年8月、長野県で開かれた医療セミナーで聞いた長さんの言葉が診療所に移るきっかけとなった。「医師は病気と向き合うだけでは駄目。住民同士で支え合う仕組み作りを呼びかけたり、病気にならないよう一人一人の日常生活を一緒に考えたりする必要がある」。その広い視点と医師の枠を超えた行動力に刺激を受けた。

 被災地が気になって翌14年、石巻市を訪れた。現地で働く医師からは「被災地をよくしたい」という強い思いを感じた。それは浪人時代、医師を目指す理由となった「本当に人に必要とされることをしたい」という気持ちと重なった。

 昨年4月、名古屋市から石巻市へ。週2日の外来診療を担うが、力を注いでいるのは訪問診療だ。患者だけではなく、「地域全体をみる医師」になりたいと週末には住民の集まりに積極的に参加し、高齢者たちと交流を図っている。

 被災者への遠慮もあり、震災当時の様子はあえて聞かないことにしているが、今では「津波にのまれ、車の窓を割って何とか助かった」などと患者から話してくれるようになった。地域に受け入れられたような気がしてうれしいと思う。

 震災から5年。西さんは11日も仮設住宅を回り、診療に追われた。医師としてはまだまだ力不足と感じるが、「ご縁があって移り住んだ石巻。しっかりと根付き、本当の意味で役に立つ医師になりたい」。決意を新たに、きょうも石巻を駆け回る。