団塊の世代が75歳以上になる2025年には、どんな医療体制が求められるのか

2016.02.24

病床再編 地域医療は 2025年 「団塊」75歳以上に
2016.02.23 読売新聞

 ◆在宅へ 介護の体制課題

 団塊の世代が75歳以上になる2025年には、どんな医療体制が求められるのか--。医療需要の予測に基づいて、各県ごとに必要な病床数を定める地域医療構想の策定作業が山場を迎えている。全国平均に比べて1人当たりの入院ベッドが多い九州・山口の各県は、どんな変革を迫られるのだろうか。(編集委員 田村良彦)

 ■「削減ありき」否定

 「決して、病床の削減ありきではありません」

 先月下旬、大分市内で開かれた大分県中部地区の調整会議。地域の医師会や病院長ら出席者に対し、県側は構想の素案を説明するにあたってこう強調した。

 高齢化が進む中で、国は「病院から在宅へ」との方針の下、精神科などを除く国全体の病床数を、現在の約135万床から、25年には15万~20万床程度の減とする推計結果を打ち出している。大分県の場合、25年の必要病床数の推計値は、現在より約2割以上少ない計算だ。県内の会議では「どうしてこんなに減るのか」「現実とずれている」などの意見も出たという。

 推計方法は法令で定められており、ある程度の調整幅はあるものの、県が勝手に変えることはできない。県側は、構想の基本的考え方として「進むべき一定の方向性を示した指針であり、病床削減ありきではない。不足する医療機能をいかに充実させていくかが重要」と説明する。

 「削減ありきでは」との声に対し県側が説明に追われる状況は、他県でも同様にみられる。

 ■機能別に4区分

 精神科や感染症などを除いた一般的な入院ベッドは、手術などの治療を受ける患者のための「一般病床」と、状態が安定している患者が入る「療養病床」に区別されている。ところが一口に一般病床と言っても、大学病院や救命救急センターのような高度な治療を行っているものから、比較的落ち着いた患者が入院している場合まで、実態には大きな幅がある。

 そこで国は、病床の機能を「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」の四つの機能に分けて、それぞれ必要な数を整備する方針を決めた。構想策定に先立ち、病院や有床診療所に対し、各区分ごとの病床数がどれだけあるかを自己申告させる「病床機能報告」を14年度から始めた。

 25年時の必要数の推計値から見えてきたのが、「回復期」病床の不足だ。手術などの治療を終えた後のリハビリを行ったり、慢性期病床や在宅医療へとつなげたりする役割を果たす。

 ■「7割は移行可能」

 地域医療構想では、機能区分別の必要病床数とともに、在宅医療や介護施設などで診るべき患者の数を見積もることが求められている。現在の療養病床のうち、医療の必要が比較的少ない患者の7割は在宅医療への移行が可能と想定し、推計を行うとしている。

 これに対し、福岡県医師会が県内で療養病床を持つ病院に行ったアンケートでは、療養病床から在宅医療への移行が可能なのは、「条件が整えば」との前提付きも含め約5割との結果だった。同会常任理事の戸次鎮史(べっきしげふみ)さんは、「在宅への移行を進めるには、まず地域の介護体制を整えることが必要」と話す。

 また九州は全国に比べ、有床診療所が多いのも特徴だ。地域の会議では、有床診療所の将来的な位置付けを問う声も聞かれる。

 ◆構想策定 16年半ばめど

 策定作業は、各県が県内を10か所前後に分けた区域ごとに、地域の医師会や病院団体、市町村などの関係者でつくる会議で検討を重ねながら進められる。国はおおむね16年半ば頃までの策定をめどとし、3分の1程度の自治体は今年度中に策定見通しという。

 九州・山口・沖縄では、佐賀県が最も早く進んでおり、すでに素案を固めて今年度中に正式決定の見通し。大分県も6月頃の策定を予定している。

 山口県は24日の県の会議で素案が示される予定で、7月頃の策定予定という。福岡県は12月頃をめどとしている。

 宮崎県は、大病院が集まる県中心部と、病院の少ない他の地域間で、病院所在地をベースとするのか患者住所地をベースとするのかの推計方法をめぐって調整中という。

 熊本県は、500か所を超える県内の対象医療機関すべてに対しヒアリングを行う方針で、最も遅い16年度内での策定を予定している。

 一方、沖縄県は、首都圏などの自治体と並び、25年に現在よりも多い病床が必要とされる数少ない自治体のひとつとなっている。


 〈地域医療構想〉

 2014年に成立した医療介護総合確保推進法に基づき、都道府県に策定が義務づけられた。「2025年問題」に対応した医療体制整備の基本方針となる。診療報酬のデータなどに基づく国の定めた計算方式で将来の医療需要を推計し、県内の区域ごとの必要病床数のほか、在宅医療や介護施設で診る必要数を定め、実現に向けた方策を策定する。