[すこやかカフェ]離島医師を育む

2016.02.16

 

[すこやかカフェ]離島医師を育む(上)「長崎方式」(連載)=福岡
2016.02.14読売新聞 



 ◇九州・山口発

 ◆「長崎方式」奨学金を貸与

 ■10歳代から100歳代まで

 長崎県・五島列島の北部に位置する新上五島町。医師になって3年目の平光寿(ひらみつひさ)さん(27)は、町で唯一の病院である県上五島病院に昨年春から勤務している。

 5人いる内科医の1人として、週4日の外来で100人前後の患者を診る。10歳代から100歳以上まで、訴えの内容や病気はまちまちだ。夫婦や親子など家族でかかっている患者も多い。「患者さんとの距離も近い気がする」と平さん。

 週末を含めた月4回程度は1人で当直勤務にあたる。救急患者の症状によっては、先輩医師に連絡を取ってアドバイスを得たり、他科の医師を呼び出したりして対処する時もある。「大きな病院なら他の診療科に相談して終わり、というケースでも、ここでは相談したうえで実際の処置も自分でやることが多い。大変だが、幅広い勉強にもなっている」と話す。

 ■奨学金期間の1・5倍

 平さんは、長崎県が実施している離島医師を養成するプログラムの医師の一人だ。医学部の奨学金と引き換えに、最大9年間(貸与期間の1・5倍)、同県内の医療機関で勤務する。うち半分以上の期間は離島勤務が義務づけられている。

 医学部生の頃から、毎年夏に離島などで開かれる地域医療のワークショップなどに参加していた。もともと五島列島・福江島出身の平さんにとって、島での暮らしに不安はなかった。

 国立病院機構長崎医療センター(長崎県大村市)で2年間の初期研修を終え、上五島病院に着任した。将来は消化器内科医を目指している平さん。4月からは再研修としていったん本土の病院に勤務する。内視鏡医療の腕を磨き、来年春には再び離島に戻る予定だ。

 ■常勤医師のあっせんも

 面積の約4割、人口の約1割が離島という長崎県は全国でもいち早く、へき地の医師確保に取り組んできた。1970年に開始した県独自の奨学金修学生と、自治医大卒業生を同じように養成するシステムは、「長崎方式」として知られる。

 県医療人材対策室課長補佐の中山一成さんによると、毎年5人程度が離島医師を養成するプログラムに入り、連携しながらチームで離島の地域医療をカバーしている。

 このほか長崎県では、▽へき地の診療所などで働く常勤医師のあっせん▽代診医の派遣▽離島医療の応援医を登録しておく「しますけっと団」▽離島への応援医師をヘリコプターで搬送するシステム--など、あの手この手の対策を展開している。

 ■キャリア支援の課題

 課題はなお多い。

 長崎県では現在、定員3人の奨学金制度と、自治医大派遣制度に加え、長崎大など3大学の医学部に計14人の「地域枠」を設けている。自治体が奨学金を出して地域医療の医師を養成する地域枠は、長崎方式が原型とされるが、医師不足に悩む全国の自治体に広まったこともあり、元からある長崎の奨学金制度の利用者は減少気味だ。

 また、大学病院などでの研修を軸とする新専門医制度が近く始まることで、離島で働く若手医師の確保への影響も懸念されている。

 中山さんは「離島勤務の義務年限を終えた医師の将来をどうサポートしていくかなど、キャリア支援が今後の重要な課題です」としている。(編集委員 田村良彦)