県立と市立再編/日本海総合病院/統合モデル 全国から注目

2015.12.15

リポート2015/08年、県立と市立再編/日本海総合病院/統合モデル 全国から注目/7年連続黒字/医師不足解消/急性期と回復期を分担/酒田市の山形県立と市立病院が2008年に統合した日本海総合病院が、
2015.12.03 河北新報事



08年、県立と市立再編/日本海総合病院/統合モデル 全国から注目/7年連続黒字/医師不足解消/急性期と回復期を分担

 酒田市の山形県立と市立病院が2008年に統合した日本海総合病院が、収支を大きく改善するとともに医師不足を解消し、病院関係者らの注目を集めている。地方独立行政法人に移行した自治体病院の先駆けで、両施設で急性期と回復期を分担し、周辺医療機関との連携も進む。地域中核病院の統合、経営モデルとして全国から視察が絶えない。(酒田支局・亀山貴裕)

<診療科を整理>

 「急性期の患者を1カ所に集めたことで、施設と医療機器の稼働率が飛躍的に伸びた。医療スタッフの雇用増にもつなかった」

 島根県出雲市の市議ら8人を前に、栗谷義樹院長(69)が統合の効果を解説した。本年度は11月までに自治体や病院関係者ら62人、昨年度は96人が視察に訪れた。寄せられる関心は、競合していた県立、市立が統合したプロセスと病院経営のノウハウに集中する。

 酒田地区医師会の会長として統合を支えた本間清和医師(67)は「わずか2キロ圏内に診療科の重なる病院が並び、県立は赤字、市立は建物老朽化という壁にぶつかっていた。地域に共倒れさせてはいけないという意識が生まれ、国も統合を後押しした」と振り返る。

 弾力的な病院経営を図るため新設した法人の初代理事長には、市立病院長の栗谷氏が就任した。

 旧県立は高度専門医療を提供する本院、旧市立はリハビリなどを担当する酒田医療センターとして再編し、機能分担を明確にした。重複していた診療科を整理し、科ごとの医師数を増やすことで手術件数が増加。入院患者の平均在院日数の短縮と合わせて受け取る診療報酬の増加につなげた。<他機関と連携>

 機能強化とともに薬品、材料費の削減や委託契約の見直しなど経営の効率化も徹底。統合前の07年度は両病院合わせて5億円近い赤字だった単年度収支が、初年度に1億2233万円の黒字に転換、以後7年連続で黒字決算を続ける。

 経営体質の強化は、全身のがん細胞の状態を調べるPET-CTなど最新機器の導入・更新を可能にした。経費が掛かる救命救急センターを統合後に開設しながら、県と市からの負担金は減少させた。

 当初懸念された人材確保も経営改善とともに軌道に乗る。公務員の身分を失うことなどから、当初9割が病院を離れる意向を示していた旧県立の看護師は3分の2が残った。全体で病床を168減らす一方、医師は約30人、スタッフは200人余り増えた。

 総務省公立病院改革懇談会座長などを歴任した税理士の長隆・病院経営アドバイザーは「労働組合を恐れて非公務員型法人に移行できない自治体病院が多い中、日本海総合病院は大胆に挑戦し軌道に乗せた。経営状況は全国の独法病院でもトップクラスで、自治体病院統合のモデルになっている」と評価する。

 人口減と高齢化に対応するため、厚生労働省は病床数の削減や機能の分化、病診連携を促し、医療現場に変革を求める。来年度の診療報酬改定ではマイナス改定が想定されるなど、地域医療を取り巻く環境は日々厳しさを増している。

 日本海総合病院は地域の病院・診療所と患者情報の共有システムを構築するなど、連携を深めてきた。栗谷院長は「どの地域も病院単体で収支を考えられる時代ではなくなる。地域全体でさらに重複なく医療を提供できる体制を整えていく必要がある」と強調する。<日本海総合病院>1947年開院の酒田市立酒田病院と93年開院の山形県立日本海病院が経営統合し2008年4月開院。地方独立行政法人「山形県・酒田市病院機構」が運営する。本院は27診療科と救命救急センターで646床、分院の酒田医療センターは内科とリハビリテーション科で114床。【写真】自治体病院統合のモデルとして全国から注目を集める日本海総合病院

河北新報社