いしゃ先生―町おこし映画顛末記(33) 県内中の銀幕に復活 2015.11.30

2015.12.01

いしゃ先生―町おこし映画顛末記(33) 県内中の銀幕に復活
2015.11.30
山形新聞社

西川町 「全国女医JOY!サミット」 地域医療テーマに講演や討論
2015.11.30山形新聞



 西川町大井沢で地域医療に生涯をささげた医師志田周子をモデルとした映画「いしゃ先生」の公開と連動し、女性医師や地域医療の未来を考える「全国女医JOY!サミット」の基調講演・パネルディスカッションが29日、同町の西川交流センターで行われた。

 人口約3千人の離島で17年前から地域医療を支えている島根県隠岐広域連合立隠岐島前病院・西ノ島町国保浦郷診療所の医師白石裕子さんが基調講演。医師を続けながら4人の子どもを育ててきた体験や、診療所が担う多様な仕事について紹介し、「適応力や母の愛を持つ女性医師は地域医療に適している。患者を家族と思って接することが大切」と持論を述べた。

 パネルディスカッションは、映画の脚本を担当したあべ美佳さんをコーディネーターに、白石さん、中山順子県健康福祉部長、医療情報誌「日経メディカル」の井田恭子副編集長、西川町立病院の渡辺舞医師がパネリストを務め、深刻な医師不足や医師国家試験の合格者の3割を女性が占めている日本の現状を踏まえて意見を交わした。

 宿直明け勤務の常態化や、産前・産後休暇の取得日数の短さなど、地域医療や女性医師の過酷な働き方が話題となり、「1人の医師に頼り過ぎ、医師を地域の犠牲にするような医療は変えなければならない」との声が聞かれた。住民との距離が近い地域が医師から人気を集めていることが紹介され、白石さんは「子どもが熱を出した時には親しい住民に面倒を見てもらっている」、渡辺さんは「白衣を脱いで町のイベントに行くと気分転換になる」と語った。

 山形女性医師ネットワーク(池田こずえ会長)などでつくる実行委員会が主催し、医療関係者や医学生など県内外から男女約230人が出席。28日は映画の観賞会や町内視察を行った。





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 この連載が始まってから3年…ようやく、ようやく、この日を迎えることができた。おかげさまで、西川町大井沢で地域医療に尽力した志田周子(ちかこ)の生涯が、山形県中の大きなスクリーン・銀幕によみがえったのだ!

 私がこのプロジェクトに参加してから5年、たくさんの方々に助けてもらいながら、仲間とともに土を耕すところからはじめ、タネをまき、根気強く水をやり、肥料を与え、時には引っこ抜かれそうになりながらも、「われわれの映画」はたくましく育ってくれた。すべては応援してくださった皆さんのおかげさま。今、喜びの収穫のときを迎え、あらためて感謝申し上げたい。ほんてん、ありがとさまです。

 5年前から苦楽を共にしてきた岡プロデューサーは、初日を迎えた朝、劇場の壁一面に張られた「いしゃ先生」のポスターを見てこう言った。「今までは自分の映画と思って頑張ってきたけど、今日からは皆さんの映画になるんだよなぁ」。作品が自分たちの手から離れた瞬間だと思った。さぁ、どんどん羽ばたいていけ、われらが子供(作品)よ! 楽しみに待ってくれている方々の元へ。

 2015年11月7日―。劇場公開初日は、わが作家人生において忘れられない1日となった。主演の平山あやさん、榎木孝明さん、永江二朗監督らとともに朝から4カ所の劇場を舞台あいさつで回らせていただいた。どこの劇場も超満員で、入れなくて泣く泣く帰った方もたくさんいらっしゃった。ありがたいやら、申し訳ないやら。あの日の感動をどうお伝えすればいいのか……作家のくせに言葉足らずでもどかしい。体中の細胞が、うきっ、うきっと跳ねるような、それでいて腹の奥の奥が、ずーんと深く沈んで熱く燃えているような不思議な感覚だった。

 舞台あいさつの壇上から客席を見渡すと、見事にじんちゃん・ばんちゃんが、びっちり(笑)。皆さん、その小さな体から発しているエネルギーたるや、ぴっちぴちで、皆が皆、目を輝かせていらっしゃる。圧巻だ。劇場関係者も驚いていたように、それは異様な光景だった。何十年ぶりに劇場に来てくれた方々と、今どきの若者が同じ空間で同じようにワクワクしてくれているのだ。気を抜くと涙が出そうになる。だって私たちは、この光景を目指して頑張ってきたんだもの。でも泣かない。ここは通過点、泣くのは本当の目的が達成されたときに残しておぐべね。

 3カ所目、天童での舞台あいさつを終えたときだった。一人のお嬢さんが私の所に走ってきた。「美佳さん、わたし、山形が嫌いでした。んでも、好きになりました。ありがとうございます」。目に涙をいっぱい浮かべて、お嬢さんは笑ってくれた。…あぁ、いがった、山形県人の誇りとなるような映画に成長できたんだ…そう思うと同時に、私は「あっ」となる。これ、このカンジ、どこかで聞いたことあるような…なんだっけ? そうだ、周子先生が、己が使命を受け入れた瞬間に似ているのだ。それまで苦労だと思っていたことが喜びに変わり、今まで出会ってくれたすべての人を好きになる瞬間…これ、これだよね、周子せんせ? おかげさまで私も体験できました。いいもんだなっす。

 お金を払ってわざわざ見に来てくれているお客さまから、「ありがとさま」と言われ続けた1日だった。いやいや、こっちこそ「ありがとう」を言わなければいけないのに。映画の仕事って、なんてステキな仕事なんだろう。故郷山形の人って、なんて温かいんだろう。そういえば神戸出身の永江監督が面白いことを言っていた。「あべさん、山形の人って、ありがとうに、様をつけるんですね。なんか、ありがとうの最上級の言葉みたいに聞こえて、僕は大好きになりました」

 なるほど、そうかも。良いごど教えでもらったちゃ。「おしょうしな」も「もっけだの」も、私は大好き。そういった温かい言葉も、柔らかくてたくましい人間性もふくめて、いよいよ来年、映画「いしゃ先生」にのせて山形を全国に発信していきます。さぁ、こっからだ! いぎますよ~。

(脚本家・作家 あべ美佳、尾花沢市出身)