(阿南市長選を前に 市政の課題:下)病院統合、示さぬ財政負担 /徳島県

2015.11.17

 

(阿南市長選を前に 市政の課題:下)病院統合、示さぬ財政負担 /徳島県
2015.11.13 朝日新聞



 阿南市で患者数1、2位の民間病院が統合し、2018年に新しい病院を設立する。JA徳島厚生連の阿南共栄病院(羽ノ浦町)と、市医師会の阿南医師会中央病院(宝田町)。医師の不足で将来が危ぶまれる救急医療を立て直そうと、市が仲介して実現することになった。

 市内では、入院や手術が必要な「2次救急」の患者を、この2病院が主に受け入れてきた。しかし、常勤医の数が足りず、夜間や休日にどちらも受け入れられない「空白」が週1日程度あり、救急患者の約4割が小松島市の徳島赤十字病院など阿南市外に搬送されている。

 市の人口は約7万5千人と県内では徳島市に次いで多い。だが、人口10万人当たりの医師数は12年に177・9人と、県全体の296・3人を下回る。

 背景に、04年度に始まった新臨床研修制度がある。医学部卒業後に必修とされる研修で、病院を選べるようになったため、医師が大都市圏に偏りやすくなった。徳島大学病院でも研修医が少ない年がある。

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 共栄病院の場合、徳大病院から派遣された研修医が05年は4人、06年は1人、07年からは5年連続ゼロ。一方、09年に1247人だった救急患者の受け入れは、5年後に1460人まで増えた。医師不足から、中央病院が夜間に救急を受け入れる日を減らした影響だ。さらに、共栄病院は一部の病棟が築40年以上で耐震性の問題も抱えていた。

 これらの課題を解決しようと、救急搬送を担う市と厚生連、医師会は09年に「市の地域医療を考える会」を設け、話し合いの結果、2病院の統合が最善と判断した。

 経営権は医師会が厚生連に無償で譲渡する。3者は13年に「阿南中央医療センター(仮称)」を設立する覚書を交わし、市は「支援」を約束した。

 センターは中央病院の現在の施設と敷地を利用し、新病棟も建設。小児科や産婦人科など29の診療科を用意し、県南部初のがんの緩和ケア病棟も設ける。

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 統合の利点について、厚生連の担当者は「共栄は糖尿病、中央は乳がんといった互いの強みを生かせ、医師の数も増える。施設も新しくなり、研修医に来てもらいやすくなる」と説明する。だが「施設を充実させるだけでなく、症例数を増やしたり研修制度を充実させたりして、来てくれる医師の数を増やさなければ根本的な問題は解決しない」と話す市の関係者もいる。

 センター設立の事業費は98億円。その分担は、はっきり決まっていない。

 県は今年度から3年間で3分の1を目安に補助する方針で、厚生連は20億円を支出する。残りの40億円以上について、県は先月の県議会の委員会で「阿南市側が負担するものと考えている」との見解を示したが、市は財政支援の額について明示していない。

 市長選で4選を目指す予定の岩浅嘉仁氏(61)は、支持者を集めた先月の市政報告会で、こう述べた。「いっぺんにお金を出さず、何回かに分けて補助を出していく。人口減少が進む中、市は四国東南部の住民の命を守る使命がある。センターは、必ず造らなければならない」

 もう一人の立候補予定者、前市議で新顔の福島民雄氏(65)は、市の財政支援に批判的だ。厚生連が吉野川医療センターを建設した際、吉野川市が多額の補助金は出していないと指摘し「巨額の財政負担を背負うことになる。結論ありきで統合を進めず、市民参加の議論が必要だ」と主張する。(八角健太)


 ■統合前・後の各病院の概要

 【阿南共栄病院】

 開設者     JA徳島厚生連

 開設年     1937年

 病床数     343

 常勤医師数   36

 救急搬送患者数 1460


 【阿南医師会中央病院】

 開設者     阿南市医師会

 開設年     1963年

 病床数     229

 常勤医師数   18

 救急搬送患者数 395


 【阿南中央医療センター(仮称)】

 開設者     JA徳島厚生連

 開設年     2018年

 病床数     398

 常勤医師数   ―

 救急搬送患者数 ―

 (※常勤医師数は2013年4月時点、救急搬送患者数は14年)