携帯電話大手3社、法人需要でタブレット端末の販売伸長

2015.09.24

携帯電話大手3社、法人需要でタブレット端末の販売伸長-ソフトバンクは商品戦略転換
2015.09.23 日刊工業新聞 



携帯電話大手3社がタブレット端末(携帯型情報端末)の販売を伸ばしている。1人のユーザーがスマートフォンとタブレットなど複数のデバイスを利用する傾向が強まっていることに加え、企業の業務効率化や高付加価値化など法人向け用途開発も進んでいることが背景にある。スマホが急速に浸透するなか、携帯電話各社は市場拡大が見込まれるタブレット需要を取り込み、通信料収入の拡大を狙う。(清水耕一郎、孝志勇輔)

【クラウド提供】

NTTドコモはタブレット販売を倍増ペースで伸ばしている。2014年度の販売台数は13年度比75%増の173万台と大幅な伸び。法人向けに業種・業態を問わず広がっているタブレット利用の需要を取り込んでいる。「タブレットに特化した提案は行っていない」(法人ビジネス戦略部の三堀弘二営業企画課長)ものの、結果として伸びている。

ドコモは米アップルの「iOS」、米グーグルの「アンドロイド」、米マイクロソフト(MS)の「ウィンドウズ」の各基本ソフト(OS)に対応するタブレットを用意している。特定のOSに偏らず、顧客のニーズにあったタブレットを提案。特に法人市場で影響力のあるMSと業務提携していることから、ウィンドウズ8対応タブレットは全17機種と品ぞろえが充実。すべてに高速無線通信「LTE」を内蔵している。

企業の業務効率化はタブレットの活用例の一つ。ドコモはクラウド型サービスを集めたパッケージ「ビジネスプラス」を提供している。顧客の企業はスマホやタブレットを通じてファイル共有や販売促進支援、端末のセキュリティーといった必要なサービスを三つ組み合わせて、月額500円(消費税抜き)から利用できる。

これにより、例えば社内に散在していたデータを横断管理して無駄をなくしたり、音声や画像など多様なファイルの部内共有や整理、加工といったデータ活用の自由度を高めることができる。

さらに、さまざまな分野へのソリューション提案も積極化。医療や教育、農業分野などで情報通信技術(ICT)の活用を推し進めるなかで、ツールとなるタブレットの利用が増えている。

例えば、徳島大学病院(徳島市)では週3回のカンファレンス(症例検討会)を実施。周辺地域から研修医が参加し、最先端の治療法や知識を学んでいる。だが、山間地域に1人で勤務する研修医は時間の制約から参加できないケースがある。そこで同病院はクラウドのウェブ会議サービスを導入し、タブレットで病院の外からでもカンファレンスに参加できるようにした。

手術の動画や磁気共鳴断層撮影装置(MRI)画像を見る医療の現場では、画面の大きいタブレットが有効。こうした取り組みで「地域医療の格差解消につなげる」(NTTドコモの三堀課長)という。

教育の現場でもタブレットが普及しつつある。ドコモは茨城県古河市の小学校や中学校を対象に、LTEに対応した学習用タブレットと電子教材を搭載したプラットフォームを組み合わせたシステムを導入した。

校内のみならず、校外や自宅でも学習しやすい環境づくりを推進。政府は20年までに小中学校の児童生徒「1人に1台」のタブレット導入を目標に掲げている。今後、教育の現場にタブレットが入ってくることで、学習のスタイルが大きく変わる可能性がある。

【2台持ち対応】

KDDI(au)もタブレットの6月時点の累計契約数は、前年同期比2・3倍と大幅な増加。「多様なデバイスの利用を推進する」(田中孝司社長)というマルチデバイス化戦略を打ち出しており、スマホとタブレットを両方使うニーズの取り込みに成功している。16年3月時点の契約者1人当たりが持つモバイルデバイス数は1・4台で、増加基調が続く見通し。タブレットの拡販が業績の伸びを支える。

スマホとの2台持ちへの対応はタブレットの品ぞろえにも表れている。auとして初めてのコンシューマー向け独自タブレット「キュアタブ」を7月から順次発売。スマホとの連動を重視したタブレットだ。

スマホに電話がかかってきたり電子メールが届いたりすると、キュアタブに通知するとともにスマホの画面やカメラも操作できるようにした。スマホで視聴していたコンテンツの続きを楽しむこともできる。アップルのタブレット「iPad(アイパッド)」のほかにも品ぞろえを増やして拡販を狙う。

KDDIはデータ容量の使い方にも工夫を凝らす。複数の端末を利用することを意識した仕組みを導入した。同一名義のスマホやタブレット、パソコンで容量を共有できるサービスを提供している。一つのIDに対してスマホや従来型携帯電話1台と、タブレットもしくは対応するパソコンが5台まで利用できる。端末の利便性の向上で差別化する。

【選択肢を拡大】

ソフトバンクはアップルと親密な関係を築いてきたが、タブレットの販売では日本MSとも連携している。LTEに対応する同社の「サーフェス3」を6月に発売した。

宮内謙社長は「(特定の製品)1点を担いで販売する時代ではない」と、MSやグーグルの製品の拡充に意欲を示している。アイパッドの投入で顧客をいち早く獲得してきたソフトバンクだが、商品戦略を転換した。

MSとの距離感が縮まることで得られるメリットは大きい。タブレットの浸透に伴って個人への販売が期待できるのに加え、法人向けにはMSの影響力がある。

オフィスではパソコン用OS「ウィンドウズ」をはじめMS製品の利用が多く、サーフェス3を拡販できる可能性は大きい。営業担当者の端末や店舗での接客用端末など、さまざまな業務への導入を見込める。企業向けに提供するデータ容量を共有するプランも活用でき無駄なく、データ通信を使える。

また、ソフトバンクはサーフェス3をてこにソリューションも仕掛ける。MSのオフィス業務向けクラウドサービス「オフィス365」と組み合わせて提供。業務の効率化や生産性の向上のニーズ取り込みを狙う。

同社はこれまでもタブレットとグーグルの業務支援サービスのセット販売など、法人分野のタブレット拡販には豊富なノウハウを持つ。サーフェス3を品ぞろえに加えて選択肢を増やし、顧客を拡大していく方針だ。

【アップル、iPad Pro発表-企業導入に弾みも】

米アップルが9日に発表した「iPad Pro(アイパッド・プロ)」は企業へのタブレットの導入に弾みをつける可能性がある。従来に比べて画面を大型化し二つの業務用ソフトウエアを同時に使えるようにした。専用のペンやキーボードも用意。これまで個人を意識してアイパッドを刷新してきたが、法人分野で競争力を高めたいという思惑がうかがえる。

今後、携帯電話大手がアイパッド・プロを取り扱うことになれば、顧客争奪戦が一層激しくなると見られる。合わせて利用できるアプリケーション(応用ソフト)やサービスの拡充がカギを握りそうだ。