【主張】医学部新設 地域定着の使命を果たせ

2015.09.07

 

【主張】医学部新設 地域定着の使命を果たせ
2015.09.06産経新聞



 育てた医師が、地域に定着しないのでは意味がない。

 文部科学省が東北薬科大学(仙台市)に医学部新設を認めた。東日本大震災の復興支援としての特例である。

 東北は人口あたりの医師数が少なかったが、震災が不足に拍車をかけた。地域医療に情熱を持つ人材の輩出を使命とし、地元に信頼される医学部として発展してもらいたい。

 総合医の育成や被災地ならではの災害医療といった特色ある教育を目指す。卒業後の勤務地を東北地方に限定し、10年ほど勤務すれば返済免除となる奨学金制度も導入する。

 制度を利用すれば、6年間の学費は400万円ほどに済ますことも可能だ。地域定着を促す有力な方策といえよう。学費が高額なために医学を断念する受験生も少なくない。有為な人材に道を開くという意味でも評価できる。

 だが、同制度の利用枠の大半は資金拠出額が多い宮城県の出身者で占められるという。これでは、東北地方の中で新たな偏在が起きるのではないか。医師不足がより深刻な県にこそ、医学部進学の環境を整えるべきだ。さらなる工夫がほしい。

 また、採用予定の教員174人のうち134人が東北地方から採用される。医師を引き抜かれる病院で診療態勢に影響が出ることが心配される。医師不足解消のための医学部新設が、新たな医師不足を招いたのでは本末転倒である。文科省と厚生労働省の連携は十分なのか。

 医学部新設をめぐっては、将来医師過剰となったとき、定員を削減しづらいなどの理由で、申請すらできない状況が続いてきた。

 東北薬科大は昭和54年の琉球大学以来の新設である。政府は国家戦略特区でも医学部新設を認める予定だ。岩盤規制に穴が開くことの意義は大きい。

 とはいえ、医師不足は医学部の新設によってすべて解決する問題ではない。人口激減時代に地域医療を維持しようと思えば、医師が勤務地や診療科を自由に選ぶことができる現行制度を改め、既存の医学教育の在り方全体を見直すことが不可欠だ。

 地域や診療科のバランスを考慮した医師養成をどう実現するか。医学部新設を契機に、政府全体で検討を急ぐべき課題である。