25年推計 病床削減率最大の北渡島檜山*不要ベッドはや現実*稼働5割 医師や看護師不足*熊石国保病院

2015.08.28

25年推計 病床削減率最大の北渡島檜山*不要ベッドはや現実*稼働5割 医師や看護師不足*熊石国保病院
2015.08.27 北海道新聞 


 道内の病院ベッド(病床)は10年後、1万床以上が不要になる-。
道が7月下旬に示した推計値は衝撃的な数字だった。

しかし削減率が45・9%と、圏域別で最大だった北渡島檜山(八雲、長万部、せたな、今金の4町)にある八雲町熊石国保病院を訪ねると、看護師や医師の確保が難しく、既に半分の病床しか稼働していなかった。

圏域内の自治体病院は同様の状況だけに、地元では諦めと病院廃止への不安が交錯していた。(報道センター 坂本有香)

 熊石国保病院は、旧熊石町地区で唯一の病院。診察を待つ患者であふれるロビーとは対照的に、入院病棟のある2階は空きベッドが目立つ。99床あるが8月半ばに訪ねた際は、入院患者が47人しかいなかった。

 院長の藤戸(ふじと)収作さん(54)は「医師2人、看護師24人の現体制では精いっぱい」と説明した。特に看護師の確保が難しいため病床を空けざるを得ず、病床稼働率は年間を通じて50%前後にとどまっている。

 4町全体の病床数は現在、8病院・診療所の計989床。道の推計ではこのうち446床が余剰になる。筋ジストロフィーなどを専門とする国立病院機構八雲病院は数年以内に廃止予定で、その240床がなくなるとしても、さらに約200床の削減が必要だ。

*薄れる利点

 4町に5カ所ある町立病院や国保病院は、病床稼働率が3~8割。10年後に向けた病床削減を「先取り」した格好の現場からは、「病床数を維持するというわけにはいかないのでは」と諦めにも似た声が漏れる。

 病院を経営する自治体が、既に稼働できなくなっている「休眠病床」を減らさなかったのは、病床数に応じて地方交付税が入るためだ。しかし、国は段階的に改める方針。財政面で病床を維持するメリットは薄れていく。

 4町とも一般会計から病院会計に、赤字の穴埋めで多額の繰り入れをしている。ある病院では「交付税が減れば、病床数だけの問題ではなく、病院の存続自体に影響が出かねない」と危惧する。

*「最後の砦」

 しかし自治体病院は地域医療の「最後の砦(とりで)」。熊石地区から八雲総合病院や道立江差病院までは、車で1時間近くかかる。バスも1日数本しかない。熊石国保病院に神経痛の治療で月に何度も通う浜野ヨシ子さん(79)は昨年6月、自宅で転び、足を痛めて2週間入院しただけに、「近くの病院がなくなったら困る」と切実な思いを訴えた。

 藤戸院長は「大きな流れにはあらがえない」と漏らし、こう続けた。「熊石には独り暮らしの高齢者も多い。何かあった時、体を張って守るのがわれわれの役目。『最後まで熊石に』という住民の居場所は、なくしたくない」

◇2025年の病床推計◇

 道が人口推計やレセプト(診療報酬明細書)から算出した25年に必要とされる病床数。13年の8万3千床から1万500~1万5千床が余剰になると推計した。

 国は10年後には50兆円超に上るとされる医療費を抑制するため、各都道府県に一般的な手術や高度医療が完結する2次医療圏ごとの必要な病床数を盛り込んだ「地域医療構想」の策定を求めている。

 削減幅が最も小さい数値で比較した削減率は北渡島檜山が最大で、南檜山45.6%、遠紋35.8%、北空知30.2%と続く。

 病床削減とともに、高度医療を担う「急性期」に偏り、リハビリなどを担う「回復期」が不足する病床構成の是正も目指す。道は推計を基に来年夏まで構想を策定する。