社説/病床の削減/受け皿整備と併せた計画を/人口に対する病院のベッド(病床)数の割合は、地域でばらつきがある。病床が過剰だと不必要な入院や長期療養の増加につながり、医療費がかさむ要因になっている。/医

2015.08.05

社説/病床の削減/受け皿整備と併せた計画を/人口に対する病院のベッド(病床)数の割合は、地域でばらつきがある。病床が過剰だと不必要な入院や長期療養の増加につながり、医療費がかさむ要因になっている。/医
2015.08.03 河北新報



病床の削減/受け皿整備と併せた計画を

 人口に対する病院のベッド(病床)数の割合は、地域でばらつきがある。病床が過剰だと不必要な入院や長期療養の増加につながり、医療費がかさむ要因になっている。

 医療費の適正化を議論している政府の専門調査会が、2025年時点の全国の病床数について、1割以上の削減を求める報告書を公表した。

 25年は団塊の世代全員が75歳以上の後期高齢者になる年で、医療や介護需要が今以上に高まると予想される。医療費の担い手である現役世代の減少に歯止めはかかっておらず、このままでは社会保障財政が行き詰まるのは確実。早めの準備が必要だ。

 全国には13年現在、約135万床ある。報告書はこれを15万床減らし、119万程度にするとした。41道府県で病床が過剰になるとし、そのうち27県に2割以上の削減を求めた。東北では宮城こそ1割台の削減だが、他の5県は2割超。山形以外はほぼ3割減という高い目標が示された。

 日本の病院の4割は、看護体制が最も手厚い救急医療対応の病床だ。看護師を多く配置する必要があり、その分、人件費は掛かるが、高い診療報酬が魅力となり、政府の予想を上回るペースで一気に増えた。病状が回復し手厚い看護が不要になった患者でも、そのまま留め置くことで収入増に結び付けられる。

 報告書の削減目標を機能別でみると、救命救急や集中治療、緊急性を要する処置を施す「高度急性期」「一般急性期」の両病床を3割、長期治療が必要な「慢性期」病床を2割それぞれ削減する一方、リハビリや在宅復帰に向けた「回復期」病床は3倍に増やす。

 超高齢社会では、病気を完全に治す医療に加え、日常生活に困らないよう、かかりつけ医が支援する「地域完結型」医療が求められている。報告書には、患者ニーズに応じた医療提供体制へと転換を図る狙いもあり、方向性としては理解できよう。

 ただ、地域ごとの病床数は、都道府県が高齢化率や地理的条件、公共交通網など地域事情を考慮し作成する。各都道府県は現在、昨年成立した地域医療・介護総合確保推進法に基づいて25年の病床数を含めた地域医療構想の策定を進めている。国の目標値に縛られ都道府県の主体性が失われてはならない。

 報告書に沿えば、症状が軽い患者30万人は入院する代わりに自宅や介護施設で暮らすことになる。家庭の介護力が弱いために退院できない「社会的入院」が減らない現実もあり、介護施設の整備や在宅医療の充実など、十分な受け皿がなければ、患者だけでなく家族にも大きなしわ寄せがいくことになる。

 そもそも国内の病院は8割が民間経営であり、都道府県が削減を強制することはできない。国は診療報酬や補助金を利用し、病院に対し病床削減や介護施設への転換を促す方針だが、退院後の安心度は地域によって異なり、関係者の合意形成が何より大事だ。

 医療体制の見直しが、住民の暮らしを無視した「医療費削減ありき」の改革にならないよう求めたい。(2015・8・3)