小児集中治療でのプロポフォールの使用実態に関する厚労科研の結果から プロポフォールを3日以上使用した人工呼吸中の小児は0.19%

2015.08.10

小児集中治療でのプロポフォールの使用実態に関する厚労科研の結果から

プロポフォールを3日以上使用した人工呼吸中の小児は0.19%

使用時は4mg/kg/時間で、48時間以内を提案


2015/8/6

満武里奈=日経メディカル 

 

 日本では、人工呼吸中の小児に鎮静目的でプロポフォールが使用されていたケースは4~5%で、その多くが24時間以内の投与だったほか、3日以上使用されていたケースは0.19%だった。2014年厚生労働科学研究費補助金特別研究事業として行われた、小児集中治療施設へのアンケート結果で明らかになった。

 研究代表者の氏家良人氏(日本集中治療医学会理事長)は、「我々医療者はプロポフォールが小児の集中治療における人工呼吸中に鎮静目的で使用することが禁忌であると再認識しないとならない」と指摘。人工呼吸中の小児へのプロポフォール投与を検討する際は、説明と同意を大前提とし、投与せざるを得ないという判断は複数人で行うほか、投与時は4mg/kg/時間で48時間以内とすることなどを提案している。

 研究名は「プロポフォールの小児集中治療領域における使用の必要性、及び、適切な使用のための研究」。

 小児へのプロポフォール投与は、プロポフォール注入症候群(PRIS)が発生する危険性が高いことから、人工呼吸中の小児に使用することは禁忌とされている。しかし、昨年2月には東京女子医科大学病院(東京都新宿区)の集中治療室において、鎮静目的でプロポフォールを持続投与したことが原因で2歳男児が死亡する事故が発生した。

 この事故を受け、昨年7月には日本集中治療医学会が国内の集中治療室(ICU)での鎮静薬プロポフォールの使用実態調査を公表。およそ2割の施設が、禁忌である「小児の集中治療における人工呼吸中の鎮静」を行っている実態が明らかになった。小児ICU(PICU)に限ると、37%の施設が小児の禁忌例に投与していた(関連記事)。

 ただし、昨年の調査では、全入室患者のうちの使用頻度、投与量、投与期間、投与理由などは明らかではなかった。そのため、今回の厚労科研では(1)これまでの報告を基にPRISの症状、発生頻度、死亡率、プロポフォールの投与量、投与期間などを検討、(2)DPC/PDPSデータから小児集中治療領域におけるプロポフォールの使用状況、(3)PICUを対象にした、プロポフォール使用状況とその使用理由に関するアンケート調査研究、(4)小児集中治療におけるプロポフォール使用の原則と要件、モニタリング、必要な検査の指針作成――の4点を検討した。

 まず、2013年1月1日~12月31日の期間に集中治療室に入院した患者のDPCデータをもとに、小児集中治療領域におけるプロポフォールの使用状況を調べた。

 調査対象となった15歳以下の患者8970人中、人工呼吸管理を必要とした患者は4297人だった。また、鎮静薬を投与された患者は3401人で、使用薬剤はミダゾラムが最も多く、デックスメデトジン、プロポフォールの順だった。ICU入室1日目にプロポフォールを使用した症例は171人(人工呼吸患者の4%、鎮静薬投与患者の5.0%)で、ICU入室4日目以上で使用されている症例はなかった。


他剤と比べ「鎮静の調節性の良さ」が選択理由に
 さらに、同研究では日本における小児集中治療室(PICU)専門医のプロポフォールに対する考え方と診療行動を把握するため、看護単位が独立し特定集中治療加算を算定する全てのPICU(24施設)を対象に、アンケート調査を実施した。

 その結果、人工呼吸下の16歳未満の症例に対してプロポフォールを使用した施設数は単回鎮静、持続鎮静ともに3割(7施設)だった。持続鎮静のうち、手術室での投与を含め、48時間以上を越えて投与していたのは3施設(8例)で、そのうち72時間を越えて投与していたのは3施設(7例)だった。これは16歳未満のICU入室患者の1.10%、人工呼吸患者の0.16%に相当した。さらに、手術時間を含め、1週間を超えて投与したのは1施設(1例)だった。

 なお、プロポフォールの使用制限に関する方針がある施設は調査時点(2014年11月)で17施設で、これは前回調査時(2013年1~12月)の10施設よりも増加していた。

 小児の集中治療でプロポフォールを使用する際、プロポフォールが他剤に勝る理由として、ほぼ全ての医師が「作用効果発現と消失が速やかで、覚醒が良好」といった鎮静の調節性の良さを挙げていたという。

 また、人工呼吸下の16歳未満の患者にプロポフォールを使用した理由を尋ねたところ、最も多かったのが「術後患者に対し、術中使用していたものを継続使用した」が5施設、「他の薬剤の副作用のために使用した」が5施設、「他剤の効果が薄れてきたために使用」は2施設だった。

 氏家氏らは、集中治療における人工呼吸中の小児に鎮静目的で使用することは禁忌であるにもかかわらず説明と同意がなされていなかったことについては「たとえ適応があっても高い確率で危険な合併症が発生すると判明しているケースでは、書面での説明と同意が常識となっているのに、本剤についてはそれはなされていないことは大変奇異だ」と指摘。医療者がPRIS発症の危険性と重症性を認識していても、発生頻度が圧倒的に少ないため、説明と同意の必要性を感じていなかったものと推察している。
 
 また、人工呼吸下の小児に鎮静目的でプロポフォールを使用する際に必要な検査やモニタリングとしては、12誘導心電図、動脈血液ガス分析、血中乳酸値、中性脂肪値、クレアチニンホスホキナーゼ値、腎機能と肝機能、血中または尿中のミオグロビン値を定期的に測定して評価することを挙げている。