「医療構想」策定 本格化 療養病床数の削減焦点 介護受け皿整備急務=石川

2015.07.25


「医療構想」策定 本格化 療養病床数の削減焦点 介護受け皿整備急務=石川
2015.07.24 読売新聞



 県は地域医療の将来像を示す「地域医療構想」の策定に向け、本格的な検討に入った。政府が、2025年に必要となる病床(入院ベッド)数について、現在より最大3割弱を削減可能とする推計結果を示したことを受け、高齢者の長期入院が多い「療養病床」の削減が焦点になる。県は医療圏ごとの人口規模や患者の受診動向を踏まえて病床数を試算したうえで、県医師会など関係機関と協議を進める考えだ。

 政府が事実上の削減目標となる推計を公表した背景には、入院中心から在宅を基本とする医療体制への転換を図ることで、医療費を抑制する狙いがある。在宅医療につなげるリハビリや退院支援などを重視する方針だが、病床数の削減は医療機関の経営に直結するため、反発も出ている。

 政府推計をまとめたメンバーの土居丈朗・慶大教授は「(高度急性期など)看護師が手厚く配置されて単価が高い病床が非常に多い。症状が重くない高齢者も入院しており、病床数の削減や後発医薬品の普及などで医療の質を低下させずに医療費を抑制する道はある」と話す。これに対し、近藤邦夫・県医師会長は「地域の現状が十分加味されていない。無駄な医療を提供するつもりはなく、必要な病床は絶対に確保しないといけない」と述べ、地域医療構想の基本区域となる「2次医療圏」の実情に十分配慮する必要があると訴える。

 政府は、地方に病床削減を求めながら、地方創生戦略に高齢者の地方移住を盛り込んだ。政府推計に基づいて病床数を削減した場合、県内で在宅医療が必要となる人は25年に新たに最大5000人増えると試算され、厚生労働省も独自の推計で介護職員が2615人不足すると見込んでいる。こうした政府のちぐはぐな対応を疑問視する声も出ている。

 谷本知事は「在宅医療の受け皿を整えないといけない。医療と介護をセットで整備する必要がある」とし、病床数削減後の受け皿となる介護施設や介護人材の確保が重要との見方を示している。

 ◆在宅での対応難しく

 金沢市京町の城北病院の療養病棟ではスタッフ32人が24時間体制で、胃に穴をあけて栄養を補給する「胃ろう」やたんの吸引などにあたっている。療養病床「医療型」48床の2014年度の稼働率は96%でほぼ満床の状態が続く。

 下半身がまひして動けない男性患者は「トイレや風呂が一人ではできない」と話し、スタッフ2人がかりで支援にあたる。全身の筋肉が徐々に動かなくなる筋萎縮性側索硬化症(ALS)で人工呼吸器を手放せない患者や24時間点滴が必要な人もいる。

 大野健次院長は「手厚い看護が必要な患者しかおらず、在宅での対応が難しい人が大半」と話す。別の病院の医療従事者は、退院可能でも介護の受け皿がないために病院に居続ける社会的入院が多いという政府の指摘に対し、「在宅に移行できる人はとっくに退院している。一体どこに行けと言うのか」と訴えた。

 病床削減は、高齢化が進む地域でより深刻な影響をもたらす可能性がある。

 輪島市立輪島病院での勤務を経て、現在、輪島市で健康問題の相談などを受ける看護師中村悦子さん(55)は「病床数が削減されれば、ケアが中途半端な状態で退院せざるを得ない患者が増える可能性がある」と懸念する。輪島市は一般世帯に占める一人暮らし高齢者の割合が15・9%と県内で2番目に高く、退院してもケアをする家族がおらず、再入院する患者が多いのが実情だ。中村さんは「受け皿を充実させないままで病床を削減することには賛成できない」と強調した。

 医療・介護問題に詳しい金沢大人間社会環境研究科の森山治教授(社会福祉論)は「ベッド削減には受け皿整備が急務だが、後期高齢者の増加で症状の重度化と長期化が進んでいる」と指摘。その上で「認知症などの専門知識や技術、介護を受ける側との信頼関係を築く能力のある人材の育成が課題になる」と話している。