【第1特集 クスリ最前線】--PART2 岐路に立つ医薬業界--Xデーまであと10年 止まらない医療費抑制の圧力

2015.07.15

【第1特集 クスリ最前線】--PART2 岐路に立つ医薬業界--Xデーまであと10年 止まらない医療費抑制の圧力
2015.07.18 週刊東洋経済



Xデーまであと10年 止まらない医療費抑制の圧力

 6月末に閣議決定された骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)。消費税率10%超えが封じられる中で、焦点となったのは歳出改革だった。

 今後の名目経済成長率を3%以上と高く見積もっても、2020年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)は9・4兆円赤字の見込み。それを歳出削減で埋めるのが大枠だ。「20年度のPB黒字化に向けて最低限の道筋はつけられた」。慶応義塾大学の土居丈朗経済学部教授はそう評価する。

 歳出改革の一つの柱が医療分野。ただし具体的な削減目標はほとんど書かれていない。小泉純一郎元首相時代の06年、骨太の方針に5年間で社会保障分野1・6兆円削減が明記され、数字だけが独り歩きした。自民党には今でもそれが政権を失う原因になったとの思いがある。今回は06年のような過激な内容にはならなかった。

 それでも「総論は極めて緩いが、各論はけっこうビシバシと入っている」(土居教授)。金額ありきの削減ではないとしながらも、できる改革は前倒しでやる、これが今回の基本スタンスだ。確かに社会保障分野の各政策には、末尾に「検討する」という文言が入っていないものが多い。

 代表例がジェネリック医薬品(後発薬)の利用促進策だろう(下図)。骨太の方針では「18~20年度のなるべく早い時期に80%以上にする」と“断言”されている。後発薬の利用促進による医療費削減効果は最大1・3兆円程度だが、実は医薬品業界にさまざまな影響を及ぼす(80ページ以降参照)。

 12年度から検討されていた、診療報酬における費用対効果評価も盛り込まれた。一時議論は停滞していたが、当初の計画どおり16年度から試験導入されることになった。生存年数だけでなくその間の生活の質も考慮して薬の効果を評価する。つまりこれからは、費用対効果が低ければ薬価を下げるということだ。ほかにもかかりつけ薬局の導入推進など、業界にも利用者にも影響の大きい政策が入っている。

都道府県ごとに医療費適正化を推進

 医療分野の歳出抑制がそれなりにまとまったのは、14年に医療・介護総合推進法が成立していたことが大きい。今後、都道府県は25年の医療需要予測を基に、病床再編や在宅医療の充実など、地域医療構想を策定する。さらに都道府県は医療費適正化計画の見直しも行う。この中には後発品の利用割合目標も入る見込みだ。人口動態など地域の実情に合った医療体制を作るとともに、過剰ベッド、過剰投薬などの医療のムダを抑制する。

 「医療分野にはできることがたくさんある」(土居教授)。25年には団塊の世代が75歳以上になる。それまでに医療制度の持続可能性を高める改革をしなければならない。今回医療費抑制が盛り込まれながら大きな論争にならなかったのは、その共通認識ゆえといえるだろう。