あれから12年 上田県政検証:2)医師不足、解 消遠く

2015.07.02


(あれから12年 上田県政検証:2)医師不足、解 消遠く/埼玉県
2015.07.01 朝日新聞



 東京大医科学研究所(東京都港区)の特任教授、上昌広は2006年から週に1度、行田総合病院(行田市)を訪れ、医師として外来を担当する。「埼玉の医療は我々のようなアルバイト医師で成り立っていると言っても、言い過ぎではない」


 ■「数は増えている」

 上田清司は知事を3期12年務めた実績として、「医師の数は増えている」と強調する。たしかに、2012年までの10年間で2162人増。増加数は全国6位で、増加率は5位だ。

 それでも、人口10万人あたりの医師数(2012年)は148・2人で、埼玉は全国最下位。10年前の121・8人から増えてはいるが、慢性的な医師不足は解消にはほど遠い。

 大都市圏であるにもかかわらず、どうしてここまで医師が不足しているのか。

 上は、理由の一つに「国公立大の医学部がないこと」を挙げる。人口約720万人の県内には私立の埼玉医科大学があるのみ(防衛医科大学校を除く)。一方、人口が計約393万人の四国には四つの国立大に一つずつ医学部がある。

 医学部の学費は、国立は卒業までの6年間で350万円、私立は3500万円が相場だ。私立と国立で雲泥の差がある。「私立の医学部に行けるのは、親が医者など限られた人だけ。一般に門戸が開かれている国立大に医学部がないことが、医師不足に影響している」

 県にとって県立大学(越谷市)への医学部新設が悲願。上田は「可能性を検討していきたい」と言うものの、国から認可を得る見通しはたたない。文部科学省は13年、「東日本大震災からの復興」名目で東北に1校認めたが、これが36年ぶり。県庁内では「現実的ではない」との声が漏れる。

 県も手をこまねいているだけではない。県外の医学部に通う県出身者を対象に、県内の医療機関で一定期間働いた場合は返済を免除する奨学金を創設。何とか地元に根づいてもらおうと取り組むが、東京の「吸引力」には歯が立たない。

 上の調査によると、県には毎年200人程度の医師が県外から入ってきているが、その多くは東北や甲信越地方から来ているという。震災で大きな被害を受けた東北の医師不足は深刻化しており、上は「今後、十分な供給がなくなるおそれがある」と指摘する。


 ■迫る「2025年問題」

 これに対し、医療ニーズは高まるばかりだ。団塊の世代の退職に伴う地元回帰で、埼玉の75歳以上の高齢者は今後10年間で全国で最も増加する。上田が立候補会見で、この先の課題として真っ先に挙げた「2025年問題」だ。

 東京の医療機関に通えた人たちも、年をとれば動ける範囲も狭くなり、地域医療の受け皿がますます必要になってくる。

 県がさいたま市に誘致した順天堂大医学部付属の新病院(800床)は、20年度に完成する予定。大学院も併設される見通しで、医師の教育機能にも期待がかかる。それでも、根本的な解決にはほど遠い。

 ある県職員は言う。「なんとか自前で医師不足を解決しないといけない。時間は残されていない」=敬称略

 (有近隆史)