<そらねっと24>深川市立 小児・産婦人科、常勤医ゼロ*難局続く中核病院*入院や分娩中止...*患者減に直結

2015.06.24

<そらねっと24>深川市立 小児・産婦人科、常勤医ゼロ*難局続く中核病院*入院や分娩中止…*患者減に直結
2015.06.23 北海道新聞


 【深川】市立病院の小児科、産婦人科の常勤医が4月から不在になり、間もなく3カ月となる。小児の入院や分娩(ぶんべん)受け入れが中止され、市民の不安は募る。診療体制縮小などが影響し、4~5月の外来患者は昨年同期と比べ、全体で約1900人減少した。北空知の中核病院として、信頼回復の道のりは険しい。(喜代吉健介)

 4月上旬のある夜、深川市中心部に住む女性(38)の長男(7)が熱を出し、耳の痛みを訴えた。市立病院まで車で5分。しかし夜間、小児科医はいない。50分かけ旭川の病院へ走った。「中耳炎でした。発熱の原因が分かって、ほっとしたけど疲れました」。女性は「夜間はもちろん、日中も市立病院の外来には通っていません。子どもはいつ病気になるか分からないのに、週3日の診療だし、全員が出張医の先生なので信頼関係も築けない」とため息をつく。

 旭医大が医師不足を理由に常勤医を引き揚げた4月以降、小児科の患者は大きく落ち込んだ。週3日の外来診療は、4~5月で522人。昨年同期の1274人と比べ約6割減った。1日当たりの平均患者数も10人程度減少。小児の休日・夜間診療は当初「中止」としたが、来院した子どもには簡単な診療を行っている。4~5月の休日の患者数は36人で、昨年同期比で約100人減った。

 常勤医が病院を去り、整形外科、皮膚科、小児科、産婦人科、耳鼻いんこう科の5診療科が出張医体制に。週2、3日の診療では、患者が診療の待ち時間を避け、他の民間病院に移っていく。

 市立病院の医師確保は、大半の常勤医の派遣元である旭医大に依存しているのが実情だ。自前で医師を雇っても長く勤務する保証はないのに加え、旭医大との関係が崩れて出張医すら派遣してもらえなくなる事態を恐れるためだ。

 このため、市は本年度から旭医大生に、市立病院での研修などを条件に月5万円を貸し付ける修学資金の返済を免除する制度を創設。さらに4月から、旭医大出身としては初めて新院長に藤沢真氏を迎えた。

 藤沢院長は旭医大に常勤医の再派遣を要請する上で「患者数を増やすことがアピールになる」と強調する。しかし、診療体制縮小が患者減を招く悪循環が続く中、特効薬は見いだせない。

 市内の会社役員の男性(56)は「これからのまちづくりを担う若者にとって、現在の小児科の体制は大きな問題。医師を呼び込むために、お金の使い道など行政や議会がしっかり話し合ってほしい」と話す。

*周辺4町の支援模索

 こうした中、今年1月、深川市役所の市長室に北空知4町の町長が集まった。議題は市立病院の財政支援。1カ月前に、山下貴史市長が1町あたり3千万円程度の支援を要請していた。町長側は「現時点で支援はできない」と拒否した。

 市立病院は北空知の中核病院として期待されたが、患者数が伸びず経営が悪化。経営健全化計画を09年度から実行し、15億円超あった累積不良債務を13年度末までに約7億円まで減らした。この間、市の一般会計から毎年10億円前後の繰り入れを余儀なくされた。

 本年度は診療報酬改定で入院収益の減収が見込まれた。この見込み額と非常勤医師の人件費を合わせた約3億4千万円のうち、4割の約1億3千万円を、4町に負担してもらおうと助けを求めた。

 市の要請を断った理由について、町長の1人は「自分たちの町の診療所を経営するだけで手いっぱい。市立病院の経営にタッチしてないのに赤字が出たからお願いというのは厳しい」と話した。ただ、市立病院の患者の3割は4町の住民で、周辺町にとって「市立病院はなくなっては困る」のが共通認識。ある町の職員は「病院を利用する以上、財政支援は当然」とした。前述の町長は「金銭は厳しくても、医師確保に向け協力できることがあれば支援する。みんなで旭医大に要請に行く準備はできている」と言う。

 人口減が進むマチで地域医療の崩壊を避けるにはどうすればいいのか。この難局を乗り切るためには、北空知の首長だけでなく、議員や住民らも含め、議論を始めることが必要になる。

【写真説明】小児科外来の受け付け横に掲げられる案内板。以前は医師の名前で埋まっていたが、現在は「出張医」と「休診」の文字が並ぶだけだ

北海道新聞社