委員からの照会や朝日新聞の指摘契機に精査

2015.06.11


委員からの照会や朝日新聞の指摘契機に精査

厚労省、薬事分科会の委員8人が辞任へ

厚労省の担当者は「説明が足りず、申し訳ない」


2015/6/9

久保田文=日経バイオテク 
 



 薬事分科会の委員8人が一斉に辞任するという前代未聞の事態に…

 厚生労働省は2015年6月5日、薬事・食品衛生審議会薬事分科会に属する部会や調査会の委員について、薬事関連企業の役員や顧問に就任していた事実などが判明し、規定に沿った対応が行われていなかったとして、8人の委員が辞任するなどと発表した。

 辞任するのは、医薬品第一部会の委員を務める小川聡病院長(国際医療福祉大学三田病院)、再生医療等製品・生物由来技術部会の委員の谷憲三朗特任教授(東京大学医科学研究所ALA先端医療学社会連携研究部門)と中村利孝病院長(国立国際医療研究センター)、水口裕之教授(大阪大学大学院薬学研究科分子生物学分野)、医療機器・体外診断薬部会の委員である西田幸二教授(大阪大学大学院医学系研究科脳神経感覚器外科学)、化学物質調査会の委員を務める田中明人教授(兵庫医療大学薬学部)、取扱技術基準等調査会の委員の三宅淳巳教授(横浜国立大学大学院環境情報研究員教授)、動物用医薬品等部会などの委員である佐々木一昭准教授(東京農工大学農学部獣医学科)の合計8人。

 合せて厚労省は、現在の委員が昨年度に薬事関連企業から受領した寄付金や契約金を確認したところ、医薬品第一部会や医薬品第二部会、再生医療等製品・生物由来技術部会、安全対策調査会、医療機器・体外診断薬部会などの委員を務める別の8人について、「受領なし」または「50万円以下の受領」と自己申告されていたものが、正しくは「50万円超500万円以下の受領」であったことが、また、16人の委員については、「受領なし」と自己申告されていたものが、正しくは「50万円以下」の受領であると判明したと発表した。

委員の照会や朝日新聞の指摘を契機に続々判明
 薬事・食品衛生審議会薬事分科会には、医薬品や再生医療等製品、医療機器の承認に関わる医薬品第一部会、医薬品第二部会、再生医療等製品・生物由来技術部会、医療機器・体外診断薬部会など、複数の部会や調査会が下部組織として存在する。それらの部会や調査会を含め、薬事分科会の委員は、2年の任期ごとに改選され、その都度、委員の自己申告をベースとして、厚労省が薬事分科会の規程や薬事分科会審議参加規程に抵触していないかを確認している。

 薬事分科会の規程や審議参加規程とは以下のようなものだ。薬事分科会の規程では、薬事分科会の委員、臨時委員、専門委員は、薬事関連企業の役員や職員、または企業から定期的に報酬を得る顧問などに就任した場合に辞任しなければならないことになっており、「厚生省の時代から、いつからか分からないぐらい前から運用されている」(医薬食品局総務課)。また、2008年3月からは、審議対象の企業や市場で競合する最大3社の企業からの寄付金や契約金の受領について、薬事分科会の審議参加規程が設けられた。具体的には、過去3年間、それらの企業から受領した最多の寄付金や契約金が、500万円を超える場合には審議にも議決にも加わらない、50万円を超える場合には議決には加わらない、50万円以下の場合には審議にも議決にも加わることができる――というものだ。





 特に最近では、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会において、「遵守事項が厳しく規定されたことを受け、薬事分科会でも規程の遵守を徹底する流れになり」(医薬食品局総務課)、2015年4月からは、薬事分科会の委員からの申告内容と、日本製薬工業協会に加盟する企業が公表した寄付金や謝礼の内容を突き合わせて企業側に事実確認したり、企業に委員への就任に問題がないかを直接打診したりする取り組みを試行的に導入。また、過去3年間で最多額を誤りなく申告できるよう、申告様式の変更を行ったところだった。

 しかし厚労省は、「改選の都度の確認が、書類のみの形式的なものに留まっており、個々の委員に口頭で丁寧に説明するなどしていないのが実態だった」(医薬食品局総務課)。そうした中、2015年1月に薬事分科会や下部組織の委員が改選された際、ある委員から自らの委員就任に問題がないかどうか照会を受けたことがきっかけとなり、「全ての委員について、徹底して薬事関連企業の役員や顧問への就任がないかを調べることになった」(医薬食品局総務課)。また、日本製薬工業協会に加盟する企業が公表した寄付金や謝礼の内容を詳細に報道した朝日新聞から指摘を受け、寄付金や契約金の金額に誤りがないかを精査した。

 その結果、8人の委員が薬事関連企業の役員や顧問に就任していることや、一部の委員が自己申告を上回る寄付金や契約金を得ている実態が明らかになったという。ただ中には、動物薬の審査に関わっている委員が、全く分野の異なる医療機器を扱う企業の顧問になっていることが原因で、委員を辞任することになったケースもあるという。医薬食品局総務課の担当者は「いずれも故意に隠していたのではなく、我々の説明が足りない部分があった。申し訳ないと考えている」と話す。

 8人の委員は、既に全員委員の辞任届を提出しており、今後、厚労省の発令に基づき辞任が決定する。「現在は、各部会や調査会の担当部局が新任の委員を至急探しているところだ」(医薬食品局総務課)。また、寄付金や契約金の金額に誤りがあると判明した8人については、議決に加わらないよう徹底する方針。