ニュースがわかるAtoZ 介護現場の人材不足

2015.06.10

ニュースがわかるAtoZ 介護現場の人材不足
2015.06.08 中日新聞
 


 低い賃金、キツい仕事-。介護職員のイメージが低下し、人材確保の難しさが指摘されて久しい。その一方で、高齢化に歯止めはなく、増え続ける介護が必要な人への公的サービスを、どう支えるのかが、大問題になっている。政府も対策に本腰を入れ始めたが、まだまだ十分とはいえない状況だ。(編集委員・白鳥龍也)

 深刻度は?

 10年後33万人足りず

 厚生労働省の統計によると、ホームヘルパーら訪問介護を担う職員と通所や入所施設で働く職員は、介護保険制度開始の二〇〇〇年度に約五十五万人だったが、一三年度には百七十一万人と三倍以上に増えた。これは、要支援・要介護の認定者数の増加にほぼ連動した数字だ。

 さらに、昨年十二月の有効求人倍率でみると、介護職員は全職業平均の二倍を上回る約二・七倍で、さらに高まる傾向。同省は、団塊の世代が全員七十五歳以上の後期高齢者になる二五年度に必要な介護職員を二百四十八万人と推定。都道府県を通して、同時点で確保可能な介護職員数を予想したところ、総数二百十五万人となり、三十三万人が不足するとはじいた。

 年間にその職種の全労働者数に対して、何人が就職し、何人が離職したかを示す「採用率」「離職率」では、常勤の介護職員の場合、22%が採用され、17%が辞めている(一三年度)。全産業の平均は採用率、離職率ともに16%前後で、介護は、採用も多いが離職も多い、入れ替わりの激しい職種といえる。

 原因とされるのが、不安定な身分や待遇の悪さ。施設では約四割、訪問介護では八割を非正規が占め、年齢層は施設で三十~四十代、訪問介護では五十~六十代が主と、高齢職場のイメージも強い。また施設で七割、訪問介護では九割が女性。月給は、常勤の場合で全産業平均の三十二万四千円に対し、施設職員、ホームヘルパーとも二十二万円弱と、十万円もの開きがある(同)。平均勤続年数が五~六年と短いのも特徴だ。

 介護職の国家資格である介護福祉士対象の意識調査では、介護職場への就職の際には「やりたい仕事」「勤務体制が希望に沿う」など期待を持っているものの、実際には「事業所の運営法に不満」「心身の不調」「収入が少ない」「能力を発揮できない」などの理由で辞めるケースが多いことが分かる。

 対策は?

 待遇改善 厳しい現実

 介護職員の現状について、厚労省は、資格があっても専門性や役割が不明確で、昇進の道も見えにくいことが早期離職につながり、人手不足が過酷な労働環境も招いていると分析。対策を検討してきた社会保障審議会の専門委員会はこの二月、二五年に向けた介護人材確保の基本戦略をまとめた。(1)若者から中高年まで他業種も含めて就業を促し、人材の裾野を広げる(2)職員の質向上とともに能力に応じた待遇や昇進の道を明らかにし、長く働き続けられる環境を整える-などが柱だ。

 目玉施策として一五年度の介護報酬改定に合わせ打ち出したのが、職員処遇改善加算の拡充。本年度は七百八十四億円を投入、人材育成や離職防止に積極的に取り組むなど、要件を満たす事業所の報酬に賃金分を上乗せし、一人当たり月額一万二千円相当の賃上げを図る考え。

 しかし、四月から実際に賃上げが行われているかというと、必ずしもそうではない。今回の報酬改定では、事業所収益の柱となる基本報酬を特別養護老人ホームの場合で約6%引き下げるなど、大幅な減額に踏み切った。全国老人福祉施設協議会によると、これは一施設当たり年間約千五百万円の減収になる計算。「経営者は慎重に今後の損益を見極めた上でなければ、具体的な賃上げに動けない。処遇改善の実態がつかめるのは夏以降」(事務局)との見方だ。中小を中心に三割前後の事業所は「職員の処遇は現状維持が精いっぱい」と、加算の適用を見送る姿勢も見せているという。

 多様な人材の参入や職員の質向上では、消費税増税分で都道府県に設けた地域医療介護総合確保基金を活用し、本年度から介護事業所などが行う職員研修、若者や高齢者の職場体験、就職説明会などを後押しする。ただ、これも「キャッチフレーズばかりで(人材確保できるという)根拠がよく分からない」(市民福祉情報オフィス・ハスカップの小竹雅子代表)と、成果を疑問視する声が出ている。

 外国人採用?

 技能実習は苦肉の策

 担い手確保が厳しい介護の仕事を、外国人に補ってもらえないか、との論議がある。

 枠組み作りが進んでいるのは、技能実習生としての受け入れだ。技能実習は、開発途上国などの外国人に働きながら日本の技術を身につけ、帰国後に生かしてもらう制度。職種は農漁業、建設、食品製造など七十一職種に限られ、三年の期限付きで約十七万人が在留している。

 政府は、昨年六月に決定した新成長戦略で介護を加える方向性を表明。有識者検討会が二月、介護のイメージ低下防止▽日本人と同様の処遇の確保▽サービスの質の担保-を要件に職種追加を提言した。早ければ本年度中の正式追加に向け、厚労省などが制度設計をしている。

 これに対し、関係者の間では、高度な対人サービスで命も預かる介護が「安直な単純労働力の確保策」と批判も多い技能実習になじむのか、との懸念が強い。同省は「人材確保が目的ではない。他の業種と一緒にせず、きちんと対応する」(福祉人材確保対策室)と強調する。しかし、有識者検討会では、実習生の入国要件とする日本語能力について、最終場面で「日常語」から「基本語」の理解程度に緩めた経過があり「受け入れありきでは」と不信を呼んだ。

 外国人介護職員に関しては、経済連携協定(EPA)に基づき、インドネシア、フィリピン、ベトナムから千五百人余を受け入れ、千人が国内の施設で働いている実態もあるが、介護福祉士試験の受験を課して日本定着を目指すEPAと、技能実習では理念が異なる。介護業界の労組「日本介護クラフトユニオン」の染川朗(あきら)事務局長は「介護職場では、技能実習レベルの外国人が来ても育てる余裕がない。結局は、単純労働ばかりとなる恐れがある」と指摘する。