「依存症治療拠点機関」に指定されている肥前精神医療センター 〈武藤 岳夫さん(41)〉 精神科医長 本人含め家族も支援

2015.05.25


「依存症治療拠点機関」に指定されている肥前精神医療センター 〈武藤 岳夫さん(41)〉 精神科医長 本人含め家族も支援
2015.05.24 佐賀新聞 

 ―肥前精神医療センター(神埼郡吉野ケ里町)は、早くから依存症治療に力を入れてきた。どんな依存症に対応しているのか。


 アルコール依存症に対しては、1983年に専門病棟を開設した。治療プログラムを作り、治療や家族への支援に取り組んでいる。薬物は、95年から治療プログラムをスタート。薬物依存には覚せい剤など違法な薬物や危険ドラッグのほかにも、一般的な薬を用法以上に飲んでしまうなどの依存がある。ギャンブル依存については年間10人ほどの受診で、専門のプログラムはないが、アルコール依存に準じる形で対応している。プログラムの期間は10週間。まずは、病気だという認識を持ってもらうことから始まる。


 ―依存症は「本人の意思の問題」と捉えられがち。病気との“境界”は、どう考えればいいのか。


 基本的には、自分でコントロールできるか、できないか。アルコール依存症で言えば、酒量の多寡ではなく、大事な仕事や約束があるのに飲んでしまうなど、TPO(時間、場所、場合)を踏まえることができなければ依存症。病気だと認識しにくく、認めたくないと思うのが特徴の一つで、治療につなげるまでに時間がかかるケースが多い。家族もどこに相談していいのか分からずに悩み、時間が経過して病気が進行してしまう。病気と認識して、早期に対処することが大切になる。


 ―昨年4月、厚生労働省のモデル事業で「依存症治療拠点機関」に指定された。どんな取り組みを進めているのか。


 当センターと神奈川、岐阜、大阪、岡山の全国5施設が3年間の指定を受けている。治療プログラムの開発、家族の相談・支援、地域医療機関との連携、普及・啓発などに取り組んでいるが、中でも家族への支援強化を柱にしている。昨年10月から始めた「家族教室」では本人への接し方やコミュニケーションの取り方を学んでもらい、受診につながるように努めている。今年4月からは毎週火曜日午後に、家族向けの相談窓口を開設した。これまでも本人を含めた窓口で対応してきたが、本人に受診の意思がない段階でも家族が相談しやすいように設けた。各治療拠点機関が得た知見は集約、共有して、回復プログラムの開発などに役立てていく。


 ―精神科の受診に抵抗感を抱く人もいる。ハードルを下げるためにも、普及・啓発活動が重要になる。


 本人、家族は何が起こっているのか分からないまま、誰にも相談できずにいる。当センターではアルコール依存で年間200人ほどの受診者がいるが、このうち治療によって1年間、断酒できる割合は3割程度。それでも、依存症という病気だと分かるだけで気持ちは楽になり、病気の進行を防げる。悪化すれば、本人の体や家庭内だけでなく、暴力や飲酒事故など社会的な問題につながる恐れもある。気軽に相談してもらえるように、センターの情報を伝えていきたい。


(聞き手 報道部長・大隈知彦)




 ■むとう・たけお 熊本市出身。2000年、佐賀医科大を卒業。熊本大医学部付属病院、国立病院機構琉球病院を経て、05年から肥前精神医療センターに勤務。13年から精神科医長。薬物依存症の回復を支える「佐賀ダルク」を支援する会会長も務める。