全日病西澤氏による厚労科研の最終報告書公開へ

2015.05.22

全日病西澤氏による厚労科研の最終報告書公開へ

第三者機関に報告すべき医療事故の判断基準示す

医療事故の原因分析手法としてRCA方式を推奨


2015/5/21

満武里奈=日経メディカル 

 
 厚生労働科学研究として医療事故調査制度の手法を検討していた全日本病院協会会長の西澤寛俊氏はこのほど報告書を公開した。報告対象となる医療事故の判断基準についてより具体的に解説したほか、医療事故の原因分析を行う際の手法を紹介したことなどが特徴だ。

 西澤氏が責任者を務めた厚生労働科学研究班「診療行為に関連した死亡の調査の手法に関する研究」は2014年7月から議論を開始。28人の研究協力者と共に議論を行い、2014年10月には中間とりまとめ案を示していた(参考記事)。その後、厚生労働省が設置した「医療事故調査制度の施行に係る検討会」に西澤氏はメンバーの1人として参加。研究班での議論をまとめたものを検討会に提出しており、省令・通知案を検討する際の資料の1つとして取り扱われていた。

 今回の最終報告書では、検討会で議論がなされた部分については「検討会で議論が行われた内容」、同研究班で議論を深めた部分を「研究班で議論を行った内容」と明記している。
 
 民間の第三者期間に報告すべき「医療事故」については、より具体的な判断基準を示した。例えば「提供した医療か」の判断については医療法第1条の2に基づき、「単に治療のみならず、疾病の予防のための措置およびリハビリテーションを含む、良質かつ適切なものでなくてはならない」を踏まえることが妥当という見解を記載。看護師の業務である「療養上の世話」や「診療の補助」も「医療」に含まれると整理するのが適当と結論付けられたとしている。

 医療に起因する死亡の具体的事例、医療に起因しない死亡の具体的事例も9例ずつ示した。例えば、医療に起因しない死亡ケースとして、「院内散歩中の患者が階段で見舞客の児童と接触、頭部強打の結果、脳挫傷を起こし死亡した場合」「腰椎圧迫骨折のため保存治療で入院中の患者が突然胸痛を訴え、意識不明になったケースで、急性心筋梗塞が疑われ緊急カテーテル冠動脈治療の準備中に死亡した場合」などを挙げている。

 一方、報告する医療事故のもう1つの要件、「予期せぬ死亡」の判断については、「施設や領域ごとに異なり、具体的は例示は難しく、現時点での明記を控えた」(西澤氏)という。

 
研究班責任者の全日本病院協会会長の西澤寛俊氏。

ヒューマンエラーは「その他の原因に起因する結果」
 報告書では、死亡事故の発生から第三者機関に報告するまでの期間は7日程度が妥当であるとの考え方を示したほか、院内事故調査時に関係者間で発言内容が異なる場合は、不一致を修正せずにそのまま記載するようアドバイスしている。また、今後指定される民間の第三者機関の事故受付体制は24時間体制が望ましいとの見解を示した。
 
 データ分析結果をプロセス改善、医療の質向上、そして医療事故防止につなげるための手法として、日本品質管理学会医療経営の総合的質研究会で開発した「医療のTQM七つ道具」を紹介している。また、事後の原因分析手法として知られるRCA方式については、特に他の手法と比べて、業務フローに沿って原因を分析できる点が優れていると説明。一方で、RCA方式の分析結果として抽出されることがあるヒューマンエラーについては、「必ずしも根本原因ではなく、その他の原因に起因する結果で、複数の背後要因があるので、さらになぜなぜと諸要因との関連をよく検討しなければ根本原因に至らない」と注意を呼び掛けるている。

 西澤氏は「医療界・患者団体・法曹界から広く研究協力者に集まっていただき、互いの知見を踏まえ、議論を行ってきた。時間が限られており、意見が取りまとめられるか不安だったが、こうして無事に報告書を作成でき、研究協力者に感謝したい」と話している。

 医療事故調制度をめぐっては、厚労省検討会での議論を踏まえ、省令・通知案が今年3月に示された。パブリック・コメント募集を経て、5月8日には省令が公布されたばかり。併せて、都道府県知事宛ての通知も発出されたほか、第三者機関となる「医療事故調査・支援センター」も募集されている(参考記事)。ただし、省令・通知には具体的な院内事故調査手法などは記載されていないため、院内事故調査手法などの具体的な手順については、病院団体などが示すガイドラインやマニュアルに委ねられている。


■関連サイト(全日本病院協会)
診療行為に関連した死亡の調査の手法に関する研究