連載[かごしま再生-人口減を超えて]第4部[命を守る-医療・福祉の現場から]8(完)

2015.05.12

連載[かごしま再生-人口減を超えて]第4部[命を守る-医療・福祉の現場から]8(完)・「新時代」突入/従来の枠超え連携を
2015.05.10 南日本新聞 




 乳がん診療に力を入れる相良病院(鹿児島市)を運営する社会医療法人博愛会は4月末、海外からの患者受け入れなどを視野に新たな戦略を打ち出した。乳がん、甲状腺、婦人科などのがん診療を充実させた「女性医療センター」を建設するというものだ。

 さらに同月初めには、宮崎市の医療法人と業務提携し、2013年の乳がん手術数は全国2位となった。医療法では、県境を越えて社会医療法人と医療法人の合併はできないが実質上の「経営統合」。経営安定のほか法人価値を高め交渉力を持ち、人の交流で医療の質を高める。

 「医療も人口減少に向け、経営努力が必要。いい経営をしないと職員も集まらない」。昨夏、提携を申し出た相良吉昭理事長(45)は意気込む。鹿児島銀行と肥後銀行(熊本)の経営統合は衝撃的だったが、進む人口減と少子高齢化に向け、医療界も財政基盤強化が欠かせないという。生き残りへ“先手”を打った。

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 鹿児島県内の人口減と、医療・介護の需要に関する興味深い予測データがある。鹿児島医療センターの中村一彦名誉院長(71)がまとめた。

 医療圏ごとの65歳以上の人口のピークは南薩と川薩、出水、曽於、肝属、熊毛は2020年、姶良・伊佐と奄美が25年、鹿児島が35年。今後、医療・介護需要とも増えるのは鹿児島と姶良・伊佐、減少するのは南薩、医療需要は減り、介護需要は増えるのはその他、に分かれる。

 それらを踏まえ、高度・急性期病院の統廃合や機能再編が避けられないとみる。急性期医療は主に鹿児島医療圏が担っているが、いずれ「病床過剰になる」。また、鹿児島大学は医師不足が続いており、同じ圏域で複数の中核病院に医師を派遣するのは厳しく、かつ質も保てない。病院統合は一つの手段という。

 中村名誉院長は「今後の医療体制は医療圏ごとに行政、医師会、住民が一体となり計画すべきだ。地域医療の実情に基づき、急性期、療養型などすみ分けが必要」と語る。

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 団塊世代が75歳以上を迎える25年。国や県などは、医療や介護を一体的に提供する「地域包括ケアシステム」の構築を急ぐ。4月、県医師会は在宅など地域医療を推進する認定かかりつけ医制度をスタートさせた。県と鹿大は「地域枠」1期生医師をへき地、離島に配置。鹿児島市立病院をはじめ、病院の建て替えも目立つ。鹿児島の医療は「新時代」に突入した感がある。

 4月中旬の市立病院完成記念式典には、医療関係者ら総勢350人が参列した。県医師会の池田〓(琢の異体字)哉会長(68)は祝辞で「医療が充実したところには素晴らしい街がある。市立病院は医療の原点に立ち返り、人々の命を守ってほしい」と期待を寄せた。鹿大病院の熊本一朗院長(61)は「安心で安全な医療を守るため公的病院同士、これからも密な連携をとる」と約束した。

 少子高齢化が進む中、地域の医療を守り、発展させるには、多方面の連携が不可欠。従来の枠組みを超えた「オール鹿児島」の態勢で、人口減社会を乗り越える姿勢が求められている。=おわり=

 (清水裕貴、〓(浜の俗字、眉の目が貝の浜)田朋美、江口淳司)